五声のリチェルカーレ (創元推理文庫) (創元推理文庫 M ふ 3-1)
- 東京創元社 (2010年1月30日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488404116
感想・レビュー・書評
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マジでやられたミステリ リスト作品
著者がメフィスト賞を取った「ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ ! (講談社ノベルス版)」は読んだが、他の代表作のいくつかは積読状態
10年以上前から知っていて読みたかったが、ついに出番が来た。とはいえ積読消化に選ばれる本はある程度ランダムなんですけどね
期待度MAX!なんせ10年温めたし!
〜ざっくりあらすじ〜
重大事件を起こした少年の対応にあたる家庭裁判所の調査員のパート、いじめられる少年のパート
の2つが交互に展開
叙述系の前情報があり、それなりに読んできたジャンルなので序盤から違和感ありあり
家裁の人パートでは少年の名前は出さないし、少年パートでは掴みどころのない何かをバレないよう隠そうとしている感じ
突然出てくる音楽の講釈は何だろうか
全く興味がないので理解しようとしても厳しいものがあるが、タイトルの伏線かな
細胞性粘菌と大腸菌の講釈はおもろ
相対する両方をシャーレに入れるとたまに共存・変化するらしい
ホームレスを「ケラチョ」と呼ぶのは初耳だった
調べても出てこないけど
そして突然のエンド
まだページが残っていたけど短編もついていたのを忘れてたわ
2時間くらいで読了
うーんと。珍しく完全に予想通りの結末でした
最後の1行系に近いけど、あえてそれは外したように思えた
いまや誰も使わない「厨二病」がテーマとはね
作品自体は約15年前だからそのワードの全盛期か
昆虫×音楽×厨二
読み手の問題だけど音楽が効いてなかったなー
タイトルもなんだかなー
総評としては悪くないけど…温めた10年…
星3つです
併録されていた短編も読んでみた
望外の楽しさだったので星1つプラスで詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
深水黎一郎による、学芸タッチの中編ミステリ。
デビュー作から考えると、特異な起承転結はないが、代わりに文体や表現、セリフ等で所々個性を滲ませている感じがした。
様々な学術的知識やエピソードをはさみつつ、話の構成は緻密で、上手くまとまった作品だと思う。
ただし、少し文章は硬質すぎるか。自分の好みの問題ではあるが。
3 -
音楽薀蓄にのめり込んでたら、足元すくわれた。
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いじめの描写きつい。
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この本の中における本当の“擬態”を、私は最後まで気づかなかった。
三声でも四声でもなく、まさしく五声であった。 -
昆虫好きのおとなしい少年が殺人を犯し、家裁調査官の森本が
動機を語らない少年に四苦八苦する様を、少年は昆虫の世界を
背景に過去を回想し、音楽マニアの森本は、事件の構図を
リチェルカーレという音楽形式に当てはめて解こうとする。
最後は読者だけが「五声のリチェルカーレ」を認識しているという
にくらしい演出になっているのだが、完全に騙されました。
おかしいと思ったことをスルーすると誘導されちゃいます。
短編の『シンリガクの実験』は狡賢い少年心理が
うまく描かれて面白かったです。