- Amazon.co.jp ・本 (515ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488407216
作品紹介・あらすじ
神田明神下に住む、凄腕の岡っ引・銭形平次。投げ銭と卓越した推理力を武器にして、子分のガラッ八と共に、江戸で起こる様々な事件に立ち向かっていく! 見せ物小屋にて、水槽で泳ぐ美女ふたりのうちひとりが殺された謎を解く「人魚の死」。暗号が彫られた櫛をきっかけに殺人が起こる「櫛の文字」。世間を騒がす怪盗の意外な正体を暴く「鼬小僧の正体」。383編にも及ぶ捕物帖のスーパーヒーローの活躍譚から、ミステリに特化した傑作17編を収録した決定版。
感想・レビュー・書評
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銭形平次といえば、投げ銭である。
逃げる犯人にぴうっと投げる。
ぱしっと当たって転ぶ犯人。
飛びかかって組み付いて、
「ご用だ!」
ドラマとちがって原作では言うほど投げ銭をしないらしいが、いや、この選書ではいきなり投げているではないか。
さすがわかっていらっしゃる。
やはり、こうでないと!
『親分の手から投銭が五六十も飛ぶような、胸のすく捕物がないと、こう世の中がつまらなくなるんで――』(184頁)
1931年か1957年まで、26年間書かれた作品である。
長短あわせて383編。
人気のほどがうかがえる数である。
その中からミステリ特化の17編が1冊になっている。
正直に言おう。
はじめの数編を読んで、私はしまったかなと思った。
こいつ殺してやると思ったのはわかった。
それを実行したのもわかった。
しかし、平次さん、それをそんなに見逃しちゃあいけないんじゃないの?
そう思ってしまったのだ。
この調子で1冊読むのは辛いぞと。
私が笑い出したのは『平次女難』からだ。
女房のお静が出てきてからである。
岡っ引きの女房と聞いて想像するのは、勝ち気できれいでピンシャンした女性だが、お静は違う。
『大丸髷の赤い手柄がおかしい位なお静が、平常可愛がられ過ぎて来たにしても、これでは又あまりに他愛ありません。』(105頁)
『少し下膨れの可愛らしい顔』(106頁)
きれいというより、かわいい女性である。
このお静のモデルは作者野村胡堂の妻だそうだ。
そして作者はこういう女性がずいぶん好みだったんだろうなあと思う。
こういうタイプの女性が、その話のヒロインとして出てくることがままあるのだ。
残念ながら、お静の出番は少ない。
しかし、そういうタイプの女性を探していく楽しみがある。
ミステリに理屈を求める人には向かないだろう。
(穴があったりする。)
人情たっぷりを求める人にも足りないだろう。
(ちゃんと捕まえてもいるから。)
これはカレーでいうと・・・・・・「中辛」ではないか。
しかし、断言しよう。
カレーで大事なのは辛さではなく、美味しさである。
ミステリで大事なのは、面白さだ。
銭形平次は面白い。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「野村胡堂」の連作時代小説『櫛の文字 銭形平次ミステリ傑作選(英題:Letters On a Comb)』を読みました。
ここのところ、時代小説が続いています。
-----story-------------
捕物帳のスーパーヒーロー、謎に立ち向かう!
なぜ、犯人はわざわざ櫛に暗号を彫ったのか?
神田明神下に住む、凄腕の岡っ引「銭形平次」。
投げ銭と卓越した推理力を武器にして、子分の「ガラッ八」と共に、江戸で起こる様々な事件に立ち向かっていく!
暗号が彫られた櫛をきっかけに殺人が起こる『櫛の文字』。
世間を騒がす怪盗・鼬小僧の意外な正体を暴く『鼬小僧の正体』。
383編にも及ぶ捕物帳のスーパーヒーローの活躍譚から、ミステリに特化した傑作17編を収録した決定版。
解説=「末國善己」
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捕物帳のヒーロー「銭形平次捕物控」シリーズ全383篇から書評家「末國善己」を編者として、ミステリに特化した傑作17篇を厳選した決定版です。
■振袖源太
■人肌地蔵
■人魚の死
■平次女難
■花見の仇討
■がらッ八手柄話
■女の足跡
■雪の夜
■槍の折れ
■生き葬い
■櫛の文字
■小便組貞女
■罠に落ちた女
■風呂場の秘密
■鼬小僧の正体
■三つの菓子
■猫の首環
■編者解説 末國善己
「銭形平次捕物控」シリーズは初めて読みました… ミステリとして読み応えがあったし、「平次」と子分の「ガラッ八」の掛け合いのテンポの良さ等も魅力的でしたね、、、
「平次」が人情派なので、哀しい事件でも後味が良いものが多かった印象です… そんな中でも、特に印象に残ったのは以下の3篇ですね。
身投げした盗賊の妹「お楽」を助けた「平次」だったが、「平次」が「お楽」を家に連れ帰ったのを機に女房の「お静」が出ていき、その留守中に二人の美女が押しかけてくる等、「平次」が女難に見舞われるという展開が一転… 「お楽」が殺され「お静」が疑われるシリアスな展開への発展や、「お楽」の身体にあった傷の状態から「お静」の無罪を証明する等のミステリ趣向が盛りだくさんの『平次女難』、
呉服屋「四方屋次郎右衛門」の家で後妻の連れ子「お宮」が殺され、「三輪の万七」から犯人の疑惑をかけられた先妻の娘「お秀」を救うため、「平次」が乗り出すが、主人の「次郎右衛門」、手代の「喜三郎」、当の「お秀」、さらに「平次」に捜査を依頼した奉公人の「お谷婆さん」までが、自分が犯人だと主張するという不可解な展開となり、「平次」は鋭い観察眼をもつ「四方屋」の食客「寺本山平」と推理合戦を行い、「平次」が「寺本」の推理の矛盾をつき鮮やかに謎を解く『女の足跡』、
「ガラッ八」が叔母の知り合いから櫛に刻まれた暗号の解読を頼まれ、「平次」が見事に暗号を解読するとともに、暗号を作った動機を探ることで真相にたどり着く『櫛の文字』、
この3篇はミステリ要素が強く、謎解きを一緒に愉しめたので印象強かったんでしょうね… 機会があれば、「銭形平次捕物控」シリーズの別な作品も読んでみたいですね。 -
2019/06/16読了
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この時代小説からミステリーを取り出すシリーズ、面白いです。欠点は値段。文庫なのに高い。でも、面白い。
平次と八の会話が軽妙、トリックもあり、人情もある。