芝浜謎噺 (神田紅梅亭寄席物帳) (創元推理文庫)

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  • 東京創元社
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (445ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488410131

感想・レビュー・書評

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  • とても面白かったです。落語×ミステリ。
    同僚からお借りして、多分シリーズの2作目なのですが、1作目も読みたくなりました。
    古典落語を改作して、登場人物が演じるのですが、これも面白いですし元の噺もまた聞きたくなるし…でエンドレスになりそうです。
    噺家さんたちの会話って、こんなにするすると度々落語を語り出したり、ぽんぽんと連想出来るものなんだ…すごい!となりました。会話も、落語も生き生きとしていて良かったです。
    それにしても馬春師匠が凄すぎです。馬春師匠からのヒントとかにすぐピンとくる福の助の頭の回転も凄いです。
    落語ファン歴がまだまだ浅いので、奥深い世界だなぁと思いました、落語。
    一話目の「夜鷹の野ざらし」は実際に高座にかけられたと解説にありました。聞きたいです。

  •  落語家の福の助が主人公の日常の謎系ミステリの2作目。3作品からなるが,特に表題作の「芝浜謎噺」は短めの長編といってもいいくらいの力作。基本的には,二つのエピソードを関係づけて解決するという形になっているが,三作目の「試酒試」だけは一つのエピソードの作品になっており,完全な短編という程度の長さになっている。
    どの作品も,噺としての完成度は高め。また,落語に関するウンチクも分かりやすく,面白い。★3で。

    ○ 野ざらし死体遺棄事件
     師匠の新世紀から,「野ざらし」という落語の登場人物の気持ちが描かれていないと指摘され,どのように解釈をするかという問題と,亮子の叔父が,若い娘が家に訪れてきたのを隣の怪しげな女性に見つけられ,ごまかしたことが発端となり,死体を発見してしまった事件の二つがテーマ。
     「天一坊」,「夜鷹」,「はんかい」という3つのヒントから,隠し子,娼婦,中国版野ざらしというキーワードを見つけ出し,新たな解釈で「野ざらし」を演じることで,叔父を訪れていたのが隠し子であることまで見抜き,解決をするという事件

    ○ 芝浜謎噺
     実は複雑な家庭出身だった亀吉が,「芝浜」を演じる必要が生じたので,亀吉でも演じれるように「芝浜」を改作するという話と,紅梅亭の美樹に高価な指輪を押し付け,それを盗み出すことで落とそうとした男の話。
     指輪を盗み出そうとした常八師匠の扇子にカルピスがついていたことから策略を見破り,芝浜は,煙管で財布を引き寄せたというエピソードを入れ,男が夢だと信じる理由を入れるという形に改作した。

    ○ 試酒試
     亀吉が故郷で独演会をする。独演会を成功させるために,人気の小福遊師匠も参加してもらう形にしたが,事故で講座の時間に間に合わない。このピンチをしのぐために,馬春が,福の助とリレーの形で「試し酒」を成功させる。
     これらは,馬春を復帰させるために福の助らが図っていたのだが,馬春は全てを見抜いていたというオチ。
     
     

  • 馬春師匠の粋に泣けて
    読み終わった後で、youtubeで談志師匠の「芝浜」を聴いたら
    また泣ける泣ける。
    落語っていいなあ。もっといろんな噺を聴きたくなる。

  • 落語の芝浜は好きな落語の一つですので、興味深く読み始めましたが、好きな落語への興味から、あっという間に本作の魅力にひき込まれました。
    芝浜から試酒へと続いていく流れがとても素敵です。そして、作中での登場人物の成長がとても嬉しい気持ちにさせてくれます。
    前作を読んだ段階では、私の中では北村薫円紫師匠が最高だと思っていましたが、徐々に円紫師匠の魅力に近づいてきています。
    そこにあるものがそこにあるというだけで魅力になる。古典落語の魅力が生き生きと伝わります。
    ほんわか嬉しい物語でした。

  • シリーズ第2弾です。
    この本を読むと、寄席に行ってみたくなりますね。

  • 落語の筋に関する疑問と、落語家たちの周りで起きるトラブル。病で言葉の不自由な馬春師匠がくれるヒントで、弟子の福の助が頭をひねって古典落語を改変し、どちらもいっぺんに解決する落語ミステリ。
    江戸落語の軽快な語り口や、芸事の世界の粋な人たちが見ていて気持ちいい。

    前作は未読。

  • 落語家の、落語家による、落語好きの為のミステリ、第二弾!

    お題目は、野ざらし、芝浜、試酒(ためしざけ)。

    試酒の段が秀逸です。
    大酒飲みの下男が大杯を重ねるうち酔いが増す姿を演じる様子、その様に酔う観客、、落語好きにはたまらないあの瞬間が文字で読めるとは!
    涙が止まりませんでした。
    鮮やかなラストは、まさしくミステリの手法!

    ミステリ好きな落語好きさんには是非とも読んで欲しい一冊です。

  • 第二弾になって、俄然面白くなり、一気に読み終わりました。ちょっとジーンときたところもあり、今後が楽しみ

  • 前作に引き続き、読了。
    二つ目の落語家。噺を改作しなければならなくなり、身体が不自由になったかつての師匠に相談する。師匠から筆談で3つのヒントが示され、落語の成功と現実のミステリーの解決に至るというシリーズ。
    この3つのヒントで答えが分かるってのが、ちょっと無理がある様な気がする。面白いから良いんだけど。

    本作のメインは、弟弟子の故郷での独演会をめぐる芝浜の改作と試し酒の高座。
    試し酒、そんなたいした噺だとは思っていなかったが、この描写は惹きこまれた。凄い、の一言。所作の一つひとつが目に見えるようだった。

    二つ目の奥さんが引き廻し役。この二つ目、福の助がホントに真面目に落語に取り組んでいる。実際に噺家さん達もそうだろうし、作者の落語に対する気持ちもそうなんだろうけれど、もう一寸くだけないかなあ。莫迦笑いもしてみたい。

    でも、前作と比べても、読み応えが上がったと思う。勿論、この後も期待大。

  • 神田紅梅亭寄席物帳シリーズ第2作目。
    今作も面白かった。落語をちゃんと聴いたことがない私でも、この本を読むと目の前で聴いた気になるくらい臨場感がある。ミステリと絡めているところも面白い。全体的にほのぼのとしていて、落語同様、人情味にも溢れており、読んでいて心地良い。このシリーズ、大好きです。

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著者プロフィール

愛川晶
一九五七年福島市生まれ。九四年『化身』で第五回鮎川哲也賞を受賞。トリッキーな本格ミステリーを基調としながら、サイコサスペンス、ユーモアミステリー、人情ミステリーと幅広く活躍。主な作品に『六月六日生まれの天使』『ヘルたん』『再雇用されたら一カ月で地獄に堕とされました』。落語ミステリーでは、『道具屋殺人事件』『芝浜謎噺』など「神田紅梅亭寄席物帳」シリーズ、『神楽坂謎ばなし』など「神楽坂倶楽部」シリーズ、『高座のホームズ』など「昭和稲荷町らくご探偵」シリーズがある。『太神楽 寄席とともに歩む日本の芸能の原点』(鏡味仙三郎著)では編者を務めた。

「2023年 『落語刑事サダキチ 泥棒と所帯をもった女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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