女王国の城 下 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 1689
感想 : 120
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  • Amazon.co.jp ・本 (438ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488414061

感想・レビュー・書評

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  • この作品の好きなところは、EMCメンバーたちが理不尽な状況に対して立ち向かい行動を起こす場面。人為的なクローズド・サークルに閉じ込められたEMCメンバーたち。上巻では、謎が膨らむばかりで悶々としてた彼らが憂さを晴らすかのように走る走る!(江神部長を除く……)
    突破口目指して吠えて、タックルして、暴走して、逃避行!(もちろんマリアも含む)
    この負けん気と行動力、そしてチームプレーがあってこそ彼らなのだ。もちろん、ミステリの側面も大満足。

    それにしても犯人が判ったとアリスとマリアに告げる江神さんの「判った」
    そのひと言が持つ破壊力。マリアでなくても震えるわ。痺れるわ。

    江神さんの推理ショーで事件の全貌が明るみになりはじめると、盲点をつかれた感が半端なくて、悔しいやら、テンション上がるやら、うーん、今回も唸るしかない。だけどその舞台は、江神さん自身にとっても無傷でいられるものではなかったはず。彼は自分であったかもしれないのだから。

    淋しい。振り返ってみると、その言葉がそこはかとなく生まれては消えていく、そんな雰囲気を醸し出す作品でもあったように思う。

    「人は善でも悪でもなく、ただ淋しさの中に生まれ落ちた存在。」
    みんなそうなのだ。
    江神さんもそうなのだ。

  • 大満足の読書時間だった。
    やっぱり英都大学推理小説研究会の面々が好きだ。

    特に<城>から脱走を試みる場面が好き。
    信長さん!カッコイイ!!
    マリア!勇ましい!
    モチさん!ナイス!
    アリス!ドンマイ!

    そして謎の答えはめちゃくちゃ複雑で、いつもならこの人が怪しいだろうとかいろいろ考えるのだけど(そして大外れするのだけど)、今回はそんな予想をすることも出来なかった。
    江神さんの推理も半分までは何だかよく分からず、大丈夫なのか?と残りのページ数を確かめてしまったくらい。
    でも心配は要りませんでした。
    いつも同様に鮮やかで、でも辛い答え。
    関係者全員を集めて、これから犯人について話しますと宣言するという江神さんらしからぬ手法を取った心中はどんなだっただろう。
    そして、江神さんが神倉に来た理由もなんだかとても悲しい。
    戻ってきてくれたことが嬉しいけど、江神さんの心はまだ晴れていないんだろうな。

    このシリーズは長編は五部作ということで、次で終わりの予定とのこと。
    正直もっとたくさん書いてほしいけど、とりあえず次が早く読みたい。
    執筆はいつ頃になるのでしょうか?
    3冊目から4冊目の間は15年空いたと知って、今とても不安。
    1日も早い執筆を心待ちにしています。
    何卒よろしくお願い致します。

    それまでは短編集と、これまでの4冊を読んで次の戦いに備えていよう。

    • takanatsuさん
      九月猫さん、コメントありがとうございます!
      「学生アリス、追い越されちゃいました(笑)」
      九月猫さんにオススメして頂いた学生アリスシリーズ...
      九月猫さん、コメントありがとうございます!
      「学生アリス、追い越されちゃいました(笑)」
      九月猫さんにオススメして頂いた学生アリスシリーズ大好きになってしまい、なんだか勢いついてしまって、読めるとこまで読んでしまえ!ということになりました(笑)
      ストックしておこうかなとも思ったのですが、既に短編集も読み始めてしまったので、後はひたすら5巻目を待つのみです。
      でも次で終わってしまうと思うと寂しいのですが…。
      「「アリス!ドンマイ!」ってところがモーレツに気になります(笑)」
      (笑)
      アリスとっても頑張っています。でも不運で(笑)

      「せめて、有栖センセイの1日も早い執筆をわたしもいっしょに願うことにします♪」
      わあい!是非♪
      短編集も読み終えたらモチさんの愛するクイーンをちょっと読んで、作家アリスシリーズに挑戦するつもりです♪
      『双頭の悪魔』のあとがきに、志度晶が火村英生のモデルとあったので火村さんがとっても気になっています。
      志度さんが探偵になったらどんな風に事件を解決するのでしょうか。ドキドキ…。
      2013/07/28
    • 九月猫さん
      takanatsuさん、こんばんは♪

      そうそう、聞き忘れてました!
      江神さんカバーは今回も大活躍でしたでしょうか(*´∀`)ノ

      ...
      takanatsuさん、こんばんは♪

      そうそう、聞き忘れてました!
      江神さんカバーは今回も大活躍でしたでしょうか(*´∀`)ノ

      短編集って「江神二郎の洞察」ですか?ワタシは文庫待ちです(^-^;)
      他のアンソロジーなどで収録されていて、読んでいるものもあるのですが、
      なかでも「開かずの間の怪」は・・・怖くて忘れられない作品です!
      takanatsuさんのレビュー、すごく楽しみです♪

      「五十円玉二十枚の謎」に編まれている作品は収録されていないようなので、
      よろしければこちらもどうぞ~!
      若竹七海さん出題の「五十円玉二十枚の謎」をテーマにした競作で、
      ミステリアンソロジーとしてもおもしろかったので、おススメです♪

      >アリスとっても頑張っています。でも不運で(笑)
      そうですか、やはり学生アリスはそういう子なのね(笑)

      火村英生センセイは、カッコいいですよー。
      江神さんとはまた違う暗いものを心の奥に抱えていて。
      その抱えたもののせいで、犯罪には容赦ないところがあって、
      本気で怒ったときは冷たい炎みたいですごく怖いですけれど(≧д≦)
      2013/07/29
    • takanatsuさん
      九月猫さん、こんばんは♪
      「江神さんカバーは今回も大活躍でしたでしょうか(*´∀`)ノ」
      はい!大活躍してくれました♪
      今回は上巻も下巻も余...
      九月猫さん、こんばんは♪
      「江神さんカバーは今回も大活躍でしたでしょうか(*´∀`)ノ」
      はい!大活躍してくれました♪
      今回は上巻も下巻も余裕があったので窮屈な思いさせずに済んで良かったです。
      「短編集って「江神二郎の洞察」ですか?ワタシは文庫待ちです(^-^;)」
      そうです!
      私も文庫で揃えようと思っているので文庫待ちなのですが、どうしてもすぐ読みたくて図書館で借りてきてしまいました…(>_<)
      ハードカバーなので、江神さんカバーはお休みです(笑)
      アリスが「有栖川くん」って呼ばれてたり、大事件に遭遇していない(閉じ込められていない(笑))彼らの日常が読めてすごく嬉しいです♪
      「「五十円玉二十枚の謎」に編まれている作品は収録されていないようなので、」
      え!!私そのアンソロジー読んだかもしれません。けっこう前に!
      江神さん達が登場するのですか?うわ~覚えてないです!読んでみます!ありがとうございます!
      「火村英生センセイは、カッコいいですよー。」
      わぁ♪それは楽しみです♪
      冷たい炎…。好きかもしれません(笑)
      いろいろ教えて頂きありがとうございます!
      2013/07/29
  • あとがきの通り、『上巻は〈静の巻〉、下巻は〈動の巻〉』で、うねるように解決していった。なんでだ…?と思っていたものの、読んでいくと納得。頑なな理由もなるほどなー、と思えた。完全に非日常な状況と謎めいた事件がうまく利いていて、一貫して楽しかった。
    時折出てくる他作品も興味深い。
    普段作家アリスシリーズを読むことが多いが、学生アリスシリーズの若さもいいな…と感じた。

  • 長かったーーー。けど気になる伏線が多くて最後まで読み切った。ちょっと強引じゃないかと思うトリックも、まぁなるほどーと思わせられる。読み続けたいシリーズ。

  • 「丸ごと新興宗教の街」(バチカン市国みたいな?)にそびえ立つ城に江神を救い出すつもりで乗り込んだアリスたち英都大学推理小説研究会のメンバーは、ミイラ取りがミイラになった状態。
    謎を解かないと解放してもらえないゲーム?

    ミステリのネタバレほど語ってはいけないものは無いので、多くは語れませんが・・・
    (上)のレビューで、次に殺される人が分かったとか書いたのがお恥ずかし過ぎでした。

    時事問題的に、新興宗教についてはあまり触れたくないのですが、この「人類協会」は宇宙人ペリパリの再臨を待ち焦がれる、というある意味SFサークル活動的なノリであると、何度も強調されている。
    物語の設定は1990年で、その後に起きるサリン事件を引き起こしたような危険な教団では無いということの説明なのだろう。

    殺人事件を警察に通報しない、アリスたち「ゲスト」を監禁して外に出さないなど、非常識な手段を取ってくるが、協会上層部の者たちや会務員の会話や感情表現は普通に人間的であり、なかなか謎が解けなくて焦れてくるところを、彼らと江神、アリスたちの丁々発止のやりとりが飽きさせない。
    マリアの大立ち回りや、織田との逃避行、アクションシーンもあってサービス満点!
    なんだかジブリ的なチーちゃんの存在も物語に彩りを添え、かつ重要なカギを握っている。

    そして、十一年前の不思議な事件ももちろん絡んでいて、江神が皆を集めての謎解きが始まるのですが、名探偵が全て物語って終わり、というのではなく、集められた容疑者たちがそれぞれ考察し、意見を述べ、まるで捜査会議のようになっているので、『読者への挑戦状』で玉砕した読者(私です)も、段々と考察が進んでいくのだ。

    犯人が誰、というところより、別の件で「やられたー!」と思った。
    警察への通報を頑なに拒む理由というのは、少し考えれば分かることなのに、胡散臭い、何か企んでいるのでは?国家に対するテロとか?・・・とついそちらに目が向いてしまったために、全然気づかなかった。
    宗教に「立ち入ってはいけない聖域」が存在する事で事件は複雑になり、また逆にトリックが成立する。

    そして・・・江神さんが人類教会を訪れたことにはやはり隠された理由があった・・・

    アリスとマリアの会話に出てくる「さびしさ」についての考察。
    ストレートにこういう談義ができるのが、この時代の若者らしいと思う。
    彼らの語る「さびしさ」に耳を傾けながら、目の前に浮かんでくるのは江神の横顔だ。

    これは、学生アリスシリーズの長編5作を予定しているうちの4作目ということ。
    あと一作、書かれるんですね?
    待ち遠しすぎます。
    必ず書いて下さい!なむなむ。

  • その出来事まで伏線にする⁉と少し笑えるくらいの繋ぎ方。その意味でも面白かったです。純粋に本格ミステリを楽しめました。学生アリス最後の次の話が江神さんの心に踏み込んだ話になるのか楽しみです。

  • 江神と再会できたものの、人類協会本部で発生した殺人事件に巻き込まれた推理研メンバー。協会は警察の介入を拒否。城は封鎖され、その中でも殺人が発生し、状況は混沌へとなだれ込む。謎の霧を晴らし、秩序を取り戻すことはできるのか?!

    上巻が静なら下巻は動。前作の木更村でもあった大立ち回りがスケールアップ。警察へ通報し自由を取り戻すため、推理研メンバーがアクションを魅せる。冒険活劇的なハラハラ感。それが分断されていた謎と謎を繋ぐ風穴となったところが印象的。アリスとマリアの視点切り替え演出はやっぱり面白いね。

    オカルトめいた宗教団体の特殊なルール下で、論理という糸を紡いで核心を引き寄せる江神の思考はさすが。彼の解く答えはたゆたえども沈まず。人と思考を戦わせることでより洗練されていくよう。そして、その推理で誰よりも血を流していたのは江神自身。暴いた罪はもしかしたら自分の半身だったのかもしれないのだから。

    「騙されてる、操られてる、と考えることは甘美やからな。わが身の至らなさも『世界がアンフェアだからだ』と自己弁護できる人任せの社会は、責任も人に投げ返す」
    この言葉も好き。まさしく陰謀論や社会的な不安が広がる今の時代こそ、この言葉を噛みしめる必要があるんじゃないかなと感じた。

    終盤の謎解きは納得の面白さ。ただ、女王国の城という響きやこのページ量ほどの、舞台設定の必然性や魅力を強く感じなかった。怪しすぎるんだからもう早くそこ入ってくれ(笑)と思ったり、協会側との押し問答がさすがに食傷気味になってしまった。

  • 下巻最高でした。バイクの驀進もマリアの消化器もユーモアがあって笑えたし、ミステリー要素もしっかり練られていて、面白かった。こんなに気持ちよく読めるミステリーもあるんだなと。
    文章が読みやすいからしっかり掴めるのが切実にに有り難い。
    長編はこれでおしまいかと思うと5人が見れなくて寂しい。今後5作目は出るのでしょうか。。?

  • とってもおもしろかった〜!
    作家アリスも好きだけど、学生アリスも大好き。
    前作はマリア、今作は、江神さんなの?江神さんずっと登場しなかったら嫌だなぁと思ったけど、それは杞憂でした。
    アリスとマリアのやりとり、信長のバイク、モチさんの変装も良い。
    でもやっぱり江神さんの謎解き、痺れました。
    哀しさもあってたまらない。
    すごく良かった。

  • 上巻ではわりと平和な感じだったけど下巻は凄い。

    就職活動中なのに行動力がヤバい。普通なら躊躇ってしまうだろうに…

    最後に全部謎が解けた時にはなるほどそういえば…みたいに思ったりして。
    ただ犯人は全然的外れな予想だった

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著者プロフィール

1959年大阪生まれ。同志社大学法学部卒業。89年「月光ゲーム」でデビュー。「マレー鉄道の謎」で日本推理作家協会賞を受賞。「本格ミステリ作家クラブ」初代会長。著書に「暗い宿」「ジュリエットの悲鳴」「朱色の研究」「絶叫城殺人事件」など多数。

「2023年 『濱地健三郎の幽たる事件簿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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