笑ってジグソー、殺してパズル (創元推理文庫 M ひ 2-2)

著者 :
  • 東京創元社
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (355ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488420024

感想・レビュー・書評

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  • 「笑ってジグソー,殺してパズル」が発売されたのは1984年。綾辻行人が「十角館の殺人」でデビューしたのが1987年なので,それより前の,いわゆる新本格ブームが始まる前の作品である。
    すこぶるオーソドックスなミステリで,トリッキーな叙述トリックなどはない。「動機ばかり探してちゃダメですよ」という探偵役の更科ニッキのセリフが象徴するように,人間関係や心理状態にタッチせずに,犯行の後に残された手掛かりだけで犯人を突き止めようとする純粋な,古典的な本格ミステリである。華子夫人,栄太郎氏,麗子嬢と3人の人間が死亡する。
    真相は,3つの死亡事件は,連続殺人事件ではなかったというもの。華子は病死だった。栄太郎,麗子殺しの真犯人である壮一が,華子も殺人と偽装し,同人の死亡推定時刻のアリバイを得ておくことで,3つの事件が連続殺人事件だとして捜査する警察の目を欺こうとしたのだ。
    さらに,麗子殺しにおいて,ジグソーパズルと振り子のトリックを利用し,密室を作ることで,麗子が真犯人で,自殺を図ったという真相に警察を誘導する。
    ニッキは,麗子の部屋から見つかった注射器や,犯行現場にちらばったジグソーパズルなどから,真相を暴く。
    綾辻行人後の,新本格ブーム後に多数現れた本格ミステリの傑作群と比べて,それらより優れた作品とまでは言い難い。しかし,探偵役,ニッキの魅力的なキャラクターや,シンプルかつオーソドックスな謎は,それらと比較しても遜色ないものといえる。驚きをメインとした作品ではなく,よくできた作品の見本のような作品。このような作風が好きな人にとっては,たまらない傑作だろう。個人的には,よくできた作品より,多少アンフェアでの驚ける作品が好み。よって,その点から評価は割引となってしまうが,ニッキのキャラクターは好みである。トータルでは★3。

  • 最初のページからかなり期待をさせられるニッキのセリフがあるのですが、見事に本格として出来あがっている作品です。
    読者への挑戦状も間に入っていて、本格好きとしては嬉しいことです。
    ちょくちょく散りばめられているお茶目な仕掛けも憎いです。
    「だれもがポオを愛していた」でも思ったのですが、登場人物達の名前がユーモア溢れる名前ですね。

  • 一番の欠点は謎解きが作者の好きなようにかかれててすべて蓋然性と探偵だけが証拠を掴んでいることで裏打ちされている点。次に致命的なまでに探偵が語る解決篇がダラダラ説明してるだけで面白くもなんともないこと。それなのに最後謎解きを聞いた人がみんな涙流して拍手喝采。本を投げた。個人の内面などを徹底的に排除し、警察、被害者の夫などというようにきめられた以上の個性を与えないようにしてあるやり方やト書きみたいな書き方は面白いけど、話が下らない。また探偵が無意味に影薄い。謎に関しての姿勢が島田荘二っぽい。

  • ー動機ばかり捜してちゃ、ダメですよ、部長さん。


    主人公にしてこの作品の探偵役である更科ニッキの一言から始まるこの物語は珠玉の作品である。


    日本ジグソーパズル協会の会長が当のパズルのピースに彩られ、殺害されるのを皮切りに、作者が示す102の手掛りを元にニッキと読者の知恵比べが開始される。


    進まぬ捜査と深まる謎、次々と起こる事件に翻弄されながらも集まるピースを元に総ての謎に挑む楽しみ。


    自分なりの推理と解けぬ謎を抱きながら解決編を読む緊張感。


    (ちなみに私は犯人は正解も、トリックは解けませんでした。)


    解決編にまで凝った趣向があり、堪りません。


    ぜひ、ご観覧を。

  • これはすごい!ユーモアたっぷりの文体とその文章の巧さは格別。さらにその殺人事件も突飛なわけではないのにかなり惹きつけられる。最後の解決なんて最高!徹頭徹尾論理と証拠によって建てられた推理はただただ嘆息もの。

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著者プロフィール

平石貴樹(ひらいし・たかき)
1948年函館生まれ。作家、東京大学名誉教授。1983年、「虹のカマクーラ」で第七回すばる文学賞受賞。
著書に『松谷警部と目黒の雨』『松谷警部と三鷹の石』『松谷警部と三ノ輪の鏡』『松谷警部と向島の血』(創元推理文庫)、『アメリカ文学史』(松柏社)、
翻訳にオーエン・ウィスター『ヴァージニアン』(松柏社)、ウィリアム・フォークナー『響きと怒り』(共訳、岩波文庫)などがある。

「2019年 『一丁目一番地の謎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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