蝉かえる (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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感想 : 44
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488424220

感想・レビュー・書評

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  • 最初の数編を読んだ段階では、探偵役の男性が主人公の役割を担うにはおとなしすぎで、やや魅力に欠けるかなと感じていたのだけど、連作を読み進めるうちに徐々にこの人物の人となりが浮かび上がってきて、当初抱いていた印象が一面的であったことに気付かされた。
    連作の手法としては多用されるパターンではあるものの、主人公を前面に出しすぎない形にすることで読者の想像力を上手く引き出すことに成功していると思う。
    この探偵役が語り手となる作品も読んでみたいところではあるのだけど難しそうだな。
    シリーズ前作は未読だけど、解説によると本作の5編とそれぞれ対応しているということらしいので、いつか読んでみたい。

  • 友達の少ない昆虫好き青年魞沢泉、ぼけっとしていそうだが、ときに鋭く、人を想いながらも絶妙な距離感で真相を紐解いていく。
    普段読むミステリと違い、推理というよりは人と人の関わりや偶然の重なり、不思議な縁、そこから何が起きたのかという面白さ。
    アイ・ベッグ・ユア・パードン?
    素敵やん

  • 出てくる地名とか建物とか名前とかやや難しかったけど、話しは凄く良かった。凄い!とか共感する!とか悲しい、とかそうゆうのでは無く、ただただそうだったのか、と思わされる話しだった。読後感が良かったと思えた作品だった。

  • シリーズ② 今作も謎解き、物語ともに素晴らしかった。3話目で『今作のベストはこれか!?』と思ったら、5話目でさらに泣かされた。前作よりさらに魞沢の人物像に肉付けされており、あとがきを読んで納得。4話目で魞沢のルーツに触れていて、もっとこのシリーズを読みたくなった。昆虫の不思議ももっと知りたい。

  • 昆虫好きの青年・魞沢泉(エリサワセン)を探偵役にした連作ミステリの第2弾は、「蝉かえる」「コマチグモ」「彼方の甲虫」「ホタル計画」「サブサハラの蝿」の5篇。

    ふたつの賞を受賞したのも頷ける出色の出来栄え。前作で気になったつまらない親父ギャグのようなくだりは鳴りを顰め、単なる虫に絡んだ謎解きだけじゃない、作者が意図した主人公・魞沢の人物像が少しずつ明らかになっていく物語に仕上がっている。

    魞沢は探偵としてしゃしゃり出るのではなく、大好きな虫の蘊蓄を述べたり、鋭い観察眼に基づくひとことでさらりと事件の本質を捉えてみたりして、それが結果的に解決に結びつくのが絶妙な塩梅。

    どこかのほほんとした物語運びながら、地方の因習、母子家庭、ゼノフォビア、遺伝子組み換え、医療格差など、現代社会の問題をテーマとして据えることで、そこに人間の悲しみも同時に描き出すという深みすら感じる内容。

    「きれいごとのひとつも口にしなければ、こんな世界、生きていけないじゃないですか」
    と漏らす魞沢の胸の内が切ないな〜。

    正直、一作目でもういいかなと思っていたところもあったけど、読んでよかった。
    第3弾が出たら必ず読みます!

  • 昆虫食からスタートするのすっごいな…

  • 5話の連作短編集で読みやすかったです。
    虫にまつわる事件を冷静に解いていく主人公。
    それほど「虫」は強調されておらず、さりげなく登場します。
    各話は1話完結となっていますが、ほんのり繋がっています。
    優しい物語でした。

  • 最後の一言が胸を打つ。生きていくのは誰にとっても大変だ、でもだからこそ。

  • これ、2作目だったとは…
    昆虫好きの主人公が謎解きするミステリー短編集。どれも少しゾワっとする感じのソフトなミステリーで、表紙のイラストの世界観なので、ミステリーの割にほんわかします。
    1作目も読まなくちゃ。

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著者プロフィール

1977年北海道生まれ。埼玉大学大学院修士課程修了。2013年「サーチライトと誘蛾灯」で第10回ミステリーズ!新人賞を受賞。17年、受賞作を表題作にした連作短編集でデビュー。18年、同書収録の「火事と標本」が第71回日本推理作家協会賞候補になった。21年、『蝉かえる』で第74回日本推理作家協会賞と第21回本格ミステリ大賞を受賞。

「2023年 『蝉かえる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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