掌の中の小鳥 (創元推理文庫) (創元推理文庫 M か 3-3)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488426033

感想・レビュー・書評

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  • 「重い気分を変えてくれ~」

    <マイ五ツ星>
    「偶然」:★★★★★

    <あらすじ>-前書きより
    たぶん僕は変わったのだ。四年前にはとてもできなかったことが今の僕にはできる。
    -本書全体のプロローグといえる第一話「掌の中の小鳥」で真っ赤なワンピースの天使に出逢った主人公は、一緒に退屈なパーティを抜け出した。狂言誘拐の回想「桜月夜」で名前を教わり、御難続きのエピソード「自転車泥棒」や不思議な消失譚「できない相談」を通じて小さな事件に満ちた彼女の日常を知るにつれ、退屈と無縁になっていく自分に気づく。小粋なカクテルの店<エッグ・スタンド>を背景に描かれる、謎を湛えた物語の数々。巧みな伏線と登場人物の魅力に溢れたキュートなミステリ連作集。

    <お気に入り>
    「考えてもごらんよ、君をそれほどに大切に思っているおばあさんが、確率五十パーセントなんていう、危ない賭をすると思うかい?確率は百パーセントだったんだよ」
     (中略)
     つまらない偶然なんかでは、決してなかったのだ。祖母の人生で培われた知恵と、機転と、そして溢れるような私への愛情。

    <寸評>
    「きっかけなんて、大抵はつまらない偶然なのよ」
     本書のヒロインの言葉であるが、俺が本書を手に取ったのも全くの偶然であった。
     前回読んだ『新世界より』の重~い世界に、感動しつつも疲労感たっぷりだった中、“人が死なないミステリー”を読書コミュにて探していたところ、加納朋子さんの名前が挙がっていた。『ささらさや』で、その透明感ある美しい描写には魅かれていたので、さっそく本屋でシリーズ物ではない本書を選んできたわけだ。

     冒頭、期待とは裏腹に重苦しい三角関係から始まり、「ん……」となっていたところに、主人公と共に読者(というより重苦しさから逃れたかった俺)に救いの手を差し延べるかのごとく、先の台詞とともにヒロインが登場する。
     不登校の孫娘を救うおばあちゃんの仕掛け、父親の不倫相手のお姉さんと企てる狂言誘拐とそれに絡むヒロインの名前当て、傘を盗まれる主人公と自転車を盗まれるヒロインを繋ぐ秘密、「幽霊の声がする電話」「10分で部屋をまるごと消失」といった「できないこと」をやってのけるヒロインの幼友達、茶会の席で突然消えた婚約指輪……。
     もちろんフィクションであるから、有り得ない不思議な出来事なのだが、あくまで日常の延長上にちりばめられたミステリーは、心地良い空気に満ちている。

     無駄に長い比喩や、暗澹としたストーリーもなく、今後も爽快感を味わいたいときはお世話になりそうな作家さんである。
    『ななつのこ』『魔法旅行』『スペース』と続くシリーズにも手をのばしてみたい。

  • なによりもラストの4、5ページがいいですね。第一話で出会った二人の関係が、回を追うごとに煮詰まって煮詰まって、そしてささやかながらもパーッと盛り上がる感じです。

    少し気になったのは、「こなれていない」印象があること。主人公の二人の気持ちのやり取りや登場人物の心理描写、人間描写はとてもよく描けています。そしてミステリの部分も文句なしなのですが、うまく溶け合っていない印象を受けました。

    些細なことかも知れませんが、回想シーンを通して謎解きがなされる際、謎を解く聴き手側が不自然なくらいに当時の状況を知っていたり、とか。「えっ話し手はそこまで細かく話したの?」と思います。

    もっともそれは、作者のその後の作品が、どんどんこなれて練りに練られていくからこそそう見えるのかも知れませんね。

    ゆったりと静かな気持ちで、味わって頂きたい小説です。

  • 一 掌の中の小鳥
    二 桜月夜
    三 自転車泥棒
    四 できない相談
    五 エッグ・スタンド

  • カクテルバー「エッグ・スタンド」を舞台に冬城圭介と穂村紗枝のカップルのどちらかに纏わる日常ミステリの短編集。バーテンダーの泉さんと常連客の先生を脇役に添えて、ほんわかとしつつも爽やかな読後感です。
    主役二人のキャラクターが対照的でいて、どちらも人間くさくて憎めない。
    二つ目の短編が一つ目の続きなのに気付くのには時間がかかりました。

    鮮やかな手並みで日常の謎を紐解いていく冬城だが、謎に関わる人間の心情は上手く汲み取れずバーテンダーや先生にからかわれる場面ではにやりとさせられます。

    収録作品
    掌の中の小鳥/桜月夜/自転車泥棒/できない相談/エッグ・スタンド

    『手の中の小鳥は生きているか、死んでいるか?』
    『幼き者よ。答えは汝の手の中にある』

  • 連作短編集。
    日常の謎系。内容が暗いわけではないのですが、作品全体のイメージはどこか物悲しい感じ。多少文が鼻につく感じがしたのですが、単に古さを感じたからかも。

  • [2011.12.30]

  • 連作ミステリー。思わぬところでつながってたりして面白かった。

  • 連続短編集、になっていました。
    ある意味、カップルが知り合って、友人からそれ以上になるまで?w

    言われてみれば、な推理があったり、そういう事ですか、と思うものあったり。
    日常ミステリーかと言われれば…そんな気もします。
    しかし、そんな事よりも気になるのは2人の仲。
    そして明かされてくる彼の親類縁者?w
    この従姉妹さまは…と、ちょっぴりわくわくしてしまいました。

    それよりも小さく気になったのは、従姉妹の兄。
    結局、結婚は出来たのか、それとも勘当されたのか。
    ふたつの婚約指輪はどうするのか。
    …親への借金返済、にあてないと、どうもならない気もしますが。

  • お客様に借りて読んだ本*

    加納朋子さんの本を読むのは4冊目ですが
    表現というかなんか綺麗です。
    紗英みたいなひとになりたいと強くおもった。

    とても読みやすい。
    なおかつ綺麗な本です。

  • 買ってからずいぶん放置しておいたが、もっと早く読めばよかったかな。恋愛要素とミステリーが絡み合った暖かく素敵なお話でした。そのうち再読しようかな。

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著者プロフィール

1966年福岡県生まれ。’92年『ななつのこ』で第3回鮎川哲也賞を受賞して作家デビュー。’95年に『ガラスの麒麟』で第48回日本推理作家協会賞(短編および連作短編集部門)、2008年『レインレイン・ボウ』で第1回京都水無月大賞を受賞。著書に『掌の中の小鳥』『ささら さや』『モノレールねこ』『ぐるぐる猿と歌う鳥』『少年少女飛行倶楽部』『七人の敵がいる』『トオリヌケ キンシ』『カーテンコール!』『いつかの岸辺に跳ねていく』『二百十番館にようこそ』などがある。

「2021年 『ガラスの麒麟 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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