- Amazon.co.jp ・本 (481ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488439118
作品紹介・あらすじ
異色の名探偵・幽霊紳士が謎を解く『幽霊紳士』。ホームズ・パスティーシュなどを含む『異常物語』。時代小説の大家による,本格ミステリと奇想に満ちた幻の短篇集の合本版。
感想・レビュー・書評
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柴田さんといえば剣豪娯楽小説シリーズしか思い浮かばなかったわたし
「へえ~~」と本屋で衝動買い
創元社文庫で復刻版の由、書かれた時代は1960年
ストーリーの時代背景も同じく50年末から60年の昭和レトロ
というかわたしの若いころのなつかしき風景・風物が多々の
古風に言えば、探偵もの、ミステリー物語で
前に「笑うセールスマン」なんてコントドラマがあったが
その「セールスマン」が「灰色の幽霊」になった感じで
謎解きをしてくれる『幽霊紳士』シリーズと
異国情緒趣味豊かな異常事件収録の『異常物語』
『幽霊紳士』のほうの背景、古き昭和が懐かしい
自動車がまだ高根の花だったころの後楽園スタジアムでの自動車ショー
数寄屋橋の川が埋め立てらればかりのころの有楽町や日比谷公園あたり
今のように整然としていなくて、殺風景ともいえる皇居堀端の風景
丸の内せいぜい7階建ビル街の古さ、いまは高層ビル群、見違えるもの
などなどリアルで蘇るからおもしろい
ストーリーは素朴かつ単純だけどね
これぞ娯楽というのだろうよ
『異常物語』の異国情景の描写もおもしろい
ロンドンやパリが出てくるのだけれど
1ドル360円の時代、ほんとに見た人は少ないから
言えば、どんな描写でもOK(笑
柴田錬三郎さんは実際渡欧なさっていたのかどうか
1ドル360円といえば、いま118円になったが
一時95~8円になって、昔を思うと日本の状態が変わった
当時立派な装丁本全集の1冊が350円くらい
いまやその手の単行本は2500円はする
これってどういうこと
わかるような、わからないような -
大坪砂男がプロット提供してんだろうなあと想像しながら読んだ「幽霊紳士」、面白かった。登場人物をそれぞれ短編の中で出入りさせることで連作風の雰囲気作りとか好み。
結局最後までこの「幽霊紳士」の出自が判らない辺りも幽霊っぽくて。
『異常物語』の方はミステリというより、奇譚モノに近い感じで。ホームズのパスティーシュと、ヒッチコックの奴がお気に入りです。 -
初読の柴田錬三郎。
読点の打ち方に癖があって、読み始めはかなり抵抗が…。
それでも慣れてくるもので、「幽霊紳士」は戦後の影が残る風俗やこの時代の多くの男性に共通していたであろう女性観、お色気描写などを今の小説と重ね合わせて隔世の感がある。
唸らせられるところは特別には無かったけれど『カナリヤが~』に出てくる目白の譲というキャラクターは飛びぬけて良かった。
ある意味異常な時代を生きた若者の凄味をさらりと託してある。
後半の「異常物語」は実在の人物を登場させ、嘘か真かのあわいを読み手にうろうろさせる巧みさが良かった。 -
灰色ずくめの紳士、読み進める内にだんだん夢幻魔実也のイメージになってきてしまって、一人で楽しくなってました(笑)。
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時代小説の大家、柴田錬三郎による現代探偵小説『幽霊紳士』と、幻想短篇集『異常物語』の合本文庫版。
まず驚いたのは柴田錬三郎に現代もの……というよりは、江戸時代を舞台としていない著作があったことだろうか。やっぱり時代ものの作家だという先入観があったんだろうなぁ(何故か「岡っ引どぶ」だけは読んだことがある。自分でも何で買ったのか覚えていないが)。
『幽霊紳士』は様々な事件が起こり、最後に登場人物が幻視した『幽霊紳士』が謎を解いて事件の様相が逆転する、という趣向の短篇集。登場人物は緩やかに繋がっている。
『異常物語』は久生十蘭を思わせるミステリタッチの幻想短篇集で、柴田錬三郎のイメージががらりと変わった。
どちらの短篇集も、大衆娯楽小説、しかもチャンバラものの大家だっただけあって、文体もテンポが良く読者の興味を引きつけるテクニックは巧い。トリック的には首を傾げるものも混じってはいるが、それでも読ませてしまうのは流石。