キャッツアイころがった (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488442118

作品紹介・あらすじ

滋賀県北部の余呉湖で、身元不明の死体が見つかった。唯一の手がかりは、胃の中にあった宝石・キャッツアイ。続いて京都の美大生、大阪の日雇労働者が殺害される。ともにキャッツアイを口に含んだ状態で発見される。余呉湖との関連に頭を悩ませる警察をよそに、事件の鍵は殺された美大生が生前旅行していたインドにあると、啓子と弘美は一路彼の地へ旅立つ。第4回サントリーミステリー大賞を受賞した、著者の出世作。解説=佳多山大地

感想・レビュー・書評

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  • 推理ものの感想は、下手するとネタバレの方向に走ってしまう…先走る気持ちに待ったをかけながら本書をプレイバックしたい笑

    選んだ理由はズバリ!インドにまで舞台が及んでいて、何だか壮大そうだったから!笑
    推理小説は今まで数えるくらいしか読んでこなかったが被害者の発見からインド行きに至るまでがキュッと引き締まっており、真相に近づく前に息切れ…なんてことがなかった。
    緊迫した捜査会議からインド女子旅へと切り替わる瞬間が個人的に震えた。

    「お啓」が本当に頼もしい!(プラス敵に回しちゃいけないタイプだと段々明らかになっていく…)
    一般的な推理小説好きのはずなのに、推理や行動力がずば抜けていた。小説を読む際話の流れを追うだけではここまで鋭くならないだろうな。人助けじゃなくてただの好奇心からインド行きを決行するのだって普通なら出来てもしない。そこが彼女ならではだし、探偵と一線を分つところだろう。『ダ・ヴィンチコード』みたく、捜査のプロ達より何歩も先を進んでいるところも…おっと、誰か来たようだ。
    考えてみれば、たとえリアリティがあってもフィクションの世界は大それたことが平気で出来るから凄いよね。(以上ノンフィクション派より)
    芝居めいた関西弁は多少引っかかりはしたが笑、弘美との夫婦漫才なみに息ピッタリな会話も楽しい。凄惨な事件簿における、一服の清涼剤以上の役割も果たしてくれている。

    作中の刑事達同様、宝石通の気分になった笑 タイトルのキャッツアイをはじめ、流通経路に産出国の事情までを彼らと一緒にサクッと学習。(80年代の話だから多少変わっているだろうけど) 宝石商から漂うあの独特な陰が何なのか、今なら何となく分かる気がする。

    序盤であれだけ鮮烈な印象を残した村山だから、終盤でももーちょい会話が欲しかったこと以外は満足!
    たまたま知ってからいきなり良質なミステリーに出会えた。そのまま開拓に乗り出したいところだが、お啓みたいな度胸が自分にはない…推理ものを気軽に読めるタイプじゃないから、今回みたいにたまたま良い感じのが転がっていてくれないかなーと密かに願っている笑

  • 冒頭───

    滋賀県警捜査一課班長、根尾研一郎警部が余呉湖西岸の現場に着いたのは午前八時、警備の警官に目礼し、やじ馬の包囲網を抜けた。死体は引き揚げられ、湖岸の砂地に横たえられていた。白衣の検視官と数人の鑑識課員がそのまわりを囲んでいる。検視の最中らしい。
     根尾は咥えていたパイプをポケットに収め、
    「死因は」
    先に来ていた部下の川村を呼び寄せて訊いた。根尾は男の他殺死体が揚がったとしか報告を受けていない。電話で叩き起こされ、食事もとらずに家を飛び出して来た。


    1980年代の初め、ぼくはまだ学生だった。
    当時、学生の間ではインド旅行がちょっとしたブームになっていた。
    インドへ行けば、人生観が根底から引っくり返されるのだと。
    鉄道を下りて駅から外に出ると、道端に大勢の人間がやる気もなく朝から晩まで寝ころんでいる。
    何の職業も持たない路上生活者、今の日本で言えばホームレスだ。
    インドのどこに行っても、それらの人間の多さに圧倒されたと。
    人間の尊厳とは何か? 生きるとはどういうことか?
    それをあらためて考えさせられる。
    バブル萌芽の時期、インドに行った旅行者たちはみなそう思ったと言う。
    時は経ち、あれから30年。
    今やインドはBRICSの一国として、今後の世界経済の一端を担う先進国になりつつある。
    30年の時の流れは全てを変える。

    この作品は、1980年代に大賞賞金が1000万円ということで注目を浴びたサントリーミステリー大賞の第四回受賞作だ。
    最初の被害者の腹部から発見された2カラットもの高価な宝石キャッツアイ。
    続いて起こった殺人事件でも、被害者の口からキャッツアイが転がり落ちる。
    被害者の一人である学生のサークル仲間である女子学生が、事件のカギは、学生が訪れ、キャッツアイの生産地でもあるインドにあると見て、インド旅行を企てる。
    そこであらたな事実が発覚する。

    スリリングな展開と洒脱な関西弁、女子学生の魅力的なキャラ。
    文章も達者でテンポも良く、とても新人の作品とは思えない。
    それもそのはず、著者の黒川博行氏は、第一回、第二回と連続で佳作に入選している。
    よほど才能があったに違いない
    そして、ようやく四回目での大賞受賞。
    感慨深かったに違いない。
    その黒川氏が、つい先月、満を持しての直木賞受賞。
    遅きに失したというべきか。
    受賞作「破門」がなかなか面白かったので、他の作品に取り掛かったのだが、この、ほぼデビュー作ともいえる作品もかなりの秀作だった。
    三十年前から、優れたエンタメ作品を書いていた黒川氏の足跡を知ることができる貴重な作品だ。
    今読んでも、特に古臭い部分などなく、お薦めのミステリーです。

  • 殺害された身元不明の死体から発見されたキャッツアイ。続いて発見された美大生からもキャッツアイ、日雇労働者からもキャッツアイが。滋賀、京都、大阪で発見された遺体の関係とは。美大生が死の直前に旅行していたインドに何があるのか?過去の既読本

  • 関西弁で繰り広げられる軽快なミステリー。黒川博行さんの警察小説の流れだけれど、これは探偵役の主人公が女子大生。

    奈良、京都、大阪で起こった連続殺人事件。
    被害者の共通点は、キャッツアイ(宝石)を口に入れられていたこと。

    京都の被害者の友人である女子大生2人がキャッツアイの謎を解くため、警察に隠れて大活躍する…というお話。

    題名は担当編集さんが付けたとのことだけど、「キャッツアイ」ということばと「ころがった」という言葉を組み合わせて、主人公が女子大生であることを、なーんとなく暗に匂わせている感じがして、題名もしゃれてる。


    関西弁の軽快なテンポと、警察と女子大生たちの両視点からの推理の妙で、物語にグイグイと引っ張られて、あっという間に読了。

    面白かった。

  • 私が完璧に読み切った本の2冊目。とてもいい推理小説。先が気になってスラスラ読めた。だいすきな本です。

  • 滋賀・京都・大阪で起きた殺人事件で宝石キャッツアイが被害者の胃の中や口の中から見つかり、京都での被害者大学生と同じ教室で知り合いだった女子大生二人がインドまで旅に出て真相を探る。

    3府県の警察と張り合うように女子大生が事件を調べていくのにはちょっと無理を感じるが、ミステリーとしては面白かった。

    第4回サントリーミステリー大賞受賞作。

  • 警察側の堅実な捜査と、女子大生二人の二時間ドラマのような捜査行が交差する展開が、さすがに多少古さは感じるけど、面白い。
    ミッシングリンクものとして読めば、「なぜキャッツアイが転がっていたのか」に対する答えには感心した。

  • タイトルのとおり、キャッツアイという宝石がキーになる、
    女子大生と刑事たちの本格ミステリー。サントリーミステリー大賞受賞作。

    評判のとおり、関西弁炸裂!しかもやや古い関西弁(笑)
    これはネイティブじゃなくちゃキツイよね。よく大賞取れたもんだ。
    宝石に関わるウンチクが楽しかったです。骨董シリーズにも興味アリ♪

  • 図書館で。
    主な宝石の取引ってダイヤモンドとエメラルド・ルビー・サファイヤとキャッツアイなんだ~。というかキャッツアイが出てきたのがちょっとびっくり。そして宝石ってのはリサイクル利用が多いんだなぁとその辺りも面白かったです。確かに天然物だから傷があるのも当たり前だもんな。

    お話は面白くない訳では無いんだけど女子大生二人組がどうにも好きになれない感じでちょっと読んでいてヘキエキしました。別に好きでも嫌いでも無いと言い切る先輩の殺人事件に首を突っ込み、興味本位で色々と嗅ぎ回るって…なんなのこの人?と思ってしまうというか。さらに男は金づるとでも思って居そうな態度と嘘八百の数々。こういう女性、嫌いだなぁ~

    というかそんな学生を出し抜けない警察も警察ですけどね。

  • 初期の小説です。
    今とは随分作風が違って黒川博行の若さを感じます。
    今の作風が好きな人には少しもの足りなかもです。

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著者プロフィール

黒川博行
1949年、愛媛県生まれ。京都市立芸術大学彫刻科卒業後、会社員、府立高校の美術教師として勤務するが、83年「二度のお別れ」でサントリミステリー大賞佳作を受賞し、翌年、同作でデビュー。86年「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞を受賞、96年『カウント・プラン』で推理作家協会賞を、2014年『破門』で直木賞、20年ミステリー文学大賞を受賞した。

「2022年 『連鎖』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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