- Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488501099
作品紹介・あらすじ
仮面舞踏会に連れ出された青年が、悪夢にも似た一夜を過ごすジャン・ロラン「仮面の孔」など21編に加え、澁澤龍彦の70枚に及ぶ名解説を収録。
感想・レビュー・書評
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フランスの怪奇小説集。
フランスの本って、中々読むことが無いのでちょっと新鮮。今まで読んできた傑作集の中でも、怪奇の中に恋愛毎が必ず入ってるのが、なんだかフランスらしさを感じた。フランスってそういうイメージ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
マルキ・ド・サド「ロドリゴあるいは呪縛の塔」
シャルル・ノディエ「ギスモンド城の幽霊」
プロスペル・メリメ「シャルル十一世の幻覚」
ジェラール・ド・ネルヴァル「緑色の怪物」
ペトリュス・ボレル「解剖学者ドン・ベサリウス」
グザヴィエ・フォルヌレ「草叢のダイヤモンド」
テオフィル・ゴーティエ「死女の恋」
バルベエ・ドルヴィリ「罪のなかの幸福」
アルフォンス・カル「フルートとハープ」
エルネスト・エロ「勇み肌の男」
シャルル・クロス「恋愛の科学」
ギー・ド・モーパッサン「手」
アルフォンス・アレ「奇妙な死」
ジャン・ロラン「仮面の孔(あな)」
アンリ・ド・レニエ「フォントフレード館の秘密」
マルセル・シュオッブ「列車〇八一」
クロード・ファレール「幽霊船」
ギヨーム・アポリネール「オノレ・シュブラックの消滅」
ポール・モーラン「ミスタア虞(ユウ)」
アンリ・トロワイヤ「自転車の怪」
レオノラ・カリントン「最初の舞踏会」
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2014-11-6
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特に面白かったのはヒロイックファンタジーの先駆ともいえそうな(しかも主人公は完全な悪漢)サドの「ロドリゴあるいは呪縛の塔」、科学の闇の部分を描きこれまた現代に通ずるボレル「解剖学者ドン・ペサリウス」、美しい幻想詩のようなフォルヌレ「草叢のダイヤモンド」、怪奇というよりは一般文学あるいは心理小説だが印象的なドルヴィリ「罪のなかの幸福」、なんとも首回りが苦しくなるような描写が光るモーパッサン「手」、短くシンプルだが映像的で鮮烈なシュオッブ「列車〇八一」、自転車がモチーフというのがユニークで奇妙な味わいの「自転車の怪」。
渋澤龍彦の解説にもあるように心理や人間に比重を置きがちなせいか、いわゆる怪奇小説のおどろおどろしいイメージとはたしかに少しずれた感じの小説が多かった。たとえばユーモア色が目立っていたり恋愛がモチーフになっていたりラストがあまり締まっていなかったり(ただラストに関しては19世紀の作品が多く、形式への意識が高くないこともあるのだろう。むしろそこが良かったりもするのだが)。その一方で傑作とまではいえないが後を引くような作品も目立ち、本人はロマン派に批判的だったというのが意外なくらいに幻想にのめり込む主人公の強迫的な姿がよく描かれているゴーティエ「死女の恋」、恋愛テーマとはいかにもフランス的と思わせるサイコな主人公が実に不気味な「恋愛の科学」、一種の超能力もので切れ味の悪いラストが妙に気になるアポリネール「オノレ・シュブラックの消滅」といったところがそうだし、またファレール「幽霊船」の阿片、エロ「勇み肌の男」の決闘、ロラン「仮面の孔(あな)」の仮面舞踏会、モーラン「ミスタア虞(ユウ)」の中国趣味など背景の時代を感じさせてくれる。
作家たちの個性もそれぞれだが、迷信的な作家が狂熱的な小説を書き、理性を重視する作家が理知的でクールな作品を書いているかというと意外とそうでもないところが面白い。作家本人の話は好きで作品を読む手がかりになることも多いが、基本的には作品というのは本人と独立して考えた方がいいのだろうなあとあらためて感じた。 -
個人的に澁澤さんの訳が好き。
自らの快楽の為なら、どんな代償も惜しまない男の話。
その気力を別のものに向けていたら、偉業も成し遂げられそうなのに。「ロドリゴあるいは呪縛の塔」
全員が更正したかと思ったのに、セルジイはイネスの虜になっていたのだろうか。「ギスモンド城の幽霊」
果たして彼は清浄無垢な神父だったのだろうか、それとも刹那的な放蕩領主だったのだろうか?「死女の恋」
恋に対する興味は分かるが、あそこまで真剣に調べられると、落ちる恋も落ちなくなる。イグノーベル賞的な滑稽な狂気を感じる「恋愛の科学」。 -
09/04/** 読了
フランスらしい(?)ユーモアの効いた小品が多め。
英米編に比べると恐怖やインパクトにやや欠けるかな。