偽のプリンセスと糸車の呪い (創元推理文庫 Fス 5-14)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488503154

作品紹介・あらすじ

今日はルーシーと親友のドーンの16歳の誕生日。ずっと一緒に祝ってきたのに、今年に限ってドーンは育ての親である三人のおばさんに、誕生日に家から出ることを禁止されたのだ。誕生日だというのにドーンとも会えずさえないルーシーは、ひとりで歩いているとき、奇妙な騎馬の男たちに拉致される。巨大な光る門を通って着いたのは、まるでおとぎ話の世界だった……。
〈(株)魔法製作所〉の著者が贈る、ロマンチックなファンタジイ。

感想・レビュー・書評

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  • ・シャンナ・スウェンドソン「偽のプリンセスと糸車の呪い」(創元推理文庫)は、いかにもこの人らしい作品であつたと思ふ。これまで魔法製作所シリーズ等、ニューヨークに妖精や魔法使ひがゐるといふことで物語を作つてきた。言はば最先端を行くニューヨークで魔法的存在が生きることができるかで始まつた物語がどんどん大きくなつていつて、最後はそれらを飲み込んでいつてしまつた。ところが今回のはいささか違ふ。主人公は16歳である。高校生であつて大人ではない。舞台は「テキサス州東部のこのちいさな田舎町」(8頁)であるから、ケイティの活躍の場であるよりも生まれ故郷に近いのかもしれない。それでも米国である。主人公達は普通の米国の高校生として生きてゐる。それがある日突然、魔法の世界、より分かり易く言へばおとぎ話、フェアリーテイルの世界に拉致されてしまふのである。「工場のドアが開き、ぼさぼさ頭の男が顔を出した。『うわっ、なんなんだ!』黒装束の騎士三人を背後に引き連れ、猛烈な勢ひで走ってくるルーシーを見て、男は言った。(中略)『まじか、じゃあ、ほんとにそこにいるんだ、幻じゃなくて』」(31頁)この世の人々の見てゐる前で拉致されるのである。この後、更に彼女の同級生男女二名がおとぎ話の世界に行き、そ ちらでは一人の男が彼女を助けることになる。かくして二組の男女の逃げつ隠れつの旅が始まる。魔法製作所シリーズではいろいろと面倒なことがあつたりした。しかしこれはさうではなささうである。比較的簡単に話は進んでいく。それが「糸車の呪い」であつた。 これが物語を簡単な方に導いてくれる。
    ・糸車の呪ひとは何か。おとぎ話である。オーロラ姫である。ディズニーならば「眠れる森の美女」とでもならうが、ここはディズ ニーである必要はない。ただの「眠り姫」である。おとぎ話のごく基本的な筋が分かつてゐれば良い。物語はこれに従つて進んでいくだけである。ただし、正面から何もせずに従つて行くのではない。そこはスウェンドソン、あちこちにそのパロディーめいたものを差し挟みながら物語を展開していく。私でも知らない話ではないから、それにつきあつていける。まして詳しい人はである。よく分かれば分かるほど、物語に対する思ひが出てくる。さうして偽のプリンセスである。プリンスは一人でも、プリンセスは二人ゐるらしい。 どちらかが偽者である。これは読者には最初から分かつてゐるし、登場人物にも最初から分かってゐることである。どちらが偽者だなどと考へる必要はない。作者がそれを眠り姫によりつつ、いかに物語を料理していくのかを見るだけである。しかも料理の味付けは眠り姫だけではない。よく知られてゐるのではヘンゼルとグレーテルがある。お菓子の家ではないやうだが、老婆が肥え太らせようとしきりに食べ物を勧める。これは物語の言はば枝葉である。面倒なことにはならない。そんなおとぎ話に支へられながら、物語は進む。 ある意味、予定調和の世界である。収まるべき所に収まる。決して外れない。ラストでもさうなのだが、そのうへここは続編を期待させる。相変はらずおとぎ話世界との縁は切れないのである。かくしてまた延々と物語が続くのではと思つてしまふ。これもまたこの人らしいところかもしれない。ケイティの話があれだけ大きくなつたのである。これもまたさうなるのかもしれない。さうなつてほしいと思ふ。「訳者あとがき」の最後の段落、「エンディングにはとっておきのデザートのようなエピローグ。続編を期待させる粋な終わり方だが、さて、どうなることか。訳者はひそかに期待しているのだが……。」(326頁)

  • こちらの著者の作品には今回初めてお目にかかった。
    装丁のイラストが可愛くて手に取ったもの。

    現代の少女2人が童話の世界に紛れ込み、困難な状況を勇気と機転で乗り越えていくファンタジー。

    主人公ルーシーは、親友の少し不思議な女の子、ドーンから借りていたネックレスにより、プリンセスと間違えられて異世界に連れ去られる「偽のプリンセス」。
    タイトルの通り、眠り姫の童話を本筋として紡がれる物語が、ルーシーの行動でどんどん新たな道へと切り拓かれていくのが小気味良い。
    (一方、本物のプリンセス、ドーンの行動は、意図せずも本来の眠り姫のあらすじに戻ろうとしていて、ハラハラしながらも童話の登場人物として強制力が働いているようで、対照的な印象を受ける描写が巧みだと思った)
    最終的に責任感からそのままプリンセスとして人々の前に立つことを決めたルーシーと、
    本物のプリンセスだが、地位に全く頓着せず、リアルの世界での自分の夢を実現させたいと願うドーン。
    最後まで対照的な二人の少女が、物語の中で様々な体験をし、成長していく姿が読んでいて微笑ましかった。

    ダークな要素が無い、王道のファンタジー作品として、
    穏やかな気分になりたいとき、ほっと一息つけるような本だったと思う。

  • ルーシーは凄く普通の子なんだけど、親しみやすくて行動派。プリンセスとして慕われるのも分かるなぁという感じ。一方のドーンはちょっと個性的。二人の視点が入れ替わる事でよりドタバタした感じが出ていて楽しい。

  • おとぎ話のプリンセスを親友にもてるティーンエージャはかなり人間性が優れているのでは…と思いました

  • 成長していくパターンより、自分で切り開いていく感じが主人公にマッチしてて好感が持てる
    ストーリーとしても設定ありきでうまく展開してる
    続編あったらいいな

  • 眠り姫の世界に連れてこられ、プリンセスに間違われるルーシー。魔女に追われ大変な目にあったけれど、そのおかげでセバスチャンにも会えたし、ひとまず一旦落ち着きましたが、今度は現在の方に王妃たちがいるとか。次があると信じて楽しみにしています。

  • タイトルの"プリンセス"と"糸車"で想像付くけど、童話を上手に絡ませたファンタジー。
    シャンナ・スウェンドソンさんっぽくロマンス感あり、冒険感ありのステキなお話でした。
    続きが出たら絶対読もう^^

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