隠し部屋を査察して (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488504038

作品紹介・あらすじ

日曜日の朝、カナダのある町に突然、巨大な溝が出現、高速で西に向かいはじめた。触れるものすべてを消滅させながら……。世界中を混乱に陥れる奇妙な現象「刈り跡」、不可解な死の真相を街角の迷宮に追う警部「窓辺のエックハート」、想像力の罪を犯し幽閉された人々を描く表題作など、謎と奇想に満ちた二十の物語。◆解説=柴田元幸

感想・レビュー・書評

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  • 「想像力の個性的な偏りや歪みを身上とする作家」あとがきで柴田元幸はそう書いている。病的な場面も猟奇的な場面も、あまりそう感じさせない。現実に起こり得ないことが起きるが、人間の常識的知覚を壊したり不安を増殖させるものではない。至って淡々と話は進む。かといって稲垣足穂ほど夢のような話でもない。幅100mの溝が、時速1600kmで触れるもの全てを消滅させながら進んでいく「刈り跡」。この現象に恐怖感はない。今日春一番が吹きましたくらいのノリで、消滅したらしたでそれも良いんじゃないかという淡々とした世界観だ。マコーマックの小説に意味を求めても無駄なのだろう。感覚的に味わうための小説だと思う。

  • エドガー・アラン・ポーのゴシック小説やパトリック ・マグラアなどのニュー・ゴシック小説に作者独自の風味を加えた短篇集――というのが、個人的な印象でした。

    表題作は作者の奇想をいかんなく発揮しており、解説者の柴田元幸さんも絶賛しています。そのあとに続く19篇も、押しなべて個々の作風が表れています。

    個人的には、以下の3作に惹かれました。

    空想なのか妄想なのか、猟奇的なのか悲劇的なのかわからない「窓辺のエックハート」

    展開としては察しがついてしまうが、それでも読後は切なさが残る「エドワードとジョージナ」

    まるでボルヘスの短篇のように視点がめくるめく「フーガ」

  • 以前読んだ『パラダイス・モーテル』がとても面白かったので、他の作品も読みたくて探していたエリック・マコーマックのデビュー作をやっと入手。短編集ですが、どれも不穏で面白かった!

    エロやグロの要素があるものも多いのだけど、あまり不快感がないのは状況の不条理さ、発想の奇天烈さのほうが勝っているからでしょうか。とにかく、この作者の脳内どうなってるんだろうと心配になるくらい、奇妙なエピソードが満載。

    「パタゴニアの悲しい物語」で語られた物語のひとつは「パラダイス・モーテル」の発端と同じもの。というか「パラダイス・モーテル」は長編の形をとりながらも、実はこういった奇天烈エピソードの集合体だったので、全体的には同じテイスト。

    一番面白かったのはやはり表題作「隠し部屋を査察して」。人間ではなく自然現象モチーフの「刈り跡」は異色。シンプルだけど印象に残ったのは「双子」。この中では良い話(?)に分類してもいいと思う「ジョー船長」「趣味」「トロツキーの一枚の写真」も好きでした。

    ※収録作品
    隠し部屋を査察して/断片/パタゴニアの悲しい物語/窓辺のエックハート/一本脚の男たち/海を渡ったノックス/エドワードとジョージナ/ジョー船長/刈り跡/祭り/老人に安住の地はない/庭園列車第一部:イレネウス・フラッド/庭園列車第二部:機械/趣味/トロツキーの一枚の写真/ルサウォートの瞑想/ともあれこの世の片隅で/町の長い一日/双子/フーガ

  • 猟奇的でありながら淡々としているところがやっぱり好み。マコーマックって映像的というか、映画に向いているような気がする。偶然にコルタサルの『遊戯の終わり』を同時に読んでいて、「フーガ」が「続いている公園」の変奏だったのでにやりとしたところ。なるほどフーガだもんね。

  • 奇形でグロテスクな幻想。なのに後味はさらっとしている。自分のポテンシャルにあるんだな。こういう感じ。

  • 7/8 読了。

  • 桜庭一樹セレクト本

  •  水槽の中の奇怪な夢、のような短編集でした。
     奇怪奇天烈な想像力を持つ人は、この世界をどういう風に捉えるんだろう。

  • 『ミステリウム』が面白かったので、短編集にも挑戦。
    次々と登場する異形の動物、病、宗教……、悪夢のようでいながらどこかユーモラスな、奇妙で歪んだ世界がサイコー♪。淡々とした、血の匂いのしないグロ描写も良いアクセントかな。
    お気に入りは表題作、「刈り跡」、「庭園列車」。

  • タイトルに一目惚れ。内容もシュールな味わい。

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