龍の騎手 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (446ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488513030

感想・レビュー・書評

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  • 登場キャラが続々と出てくる上に、土地名や肩書など、最初に理解すべき事柄が立て続けに出てくるので初めちょっと読みにくいです。
    理解出来れば王道の恋愛ファンタジーなので気軽に楽しめる内容。
    恋愛の方が比重高め。

  • ・エル・キャサリン・ホワイト「龍の騎手」(創元推理文庫)の帯には「『高慢と偏見』×ドラゴン」とある。「高慢と偏見」と言へばジェーン・オースティンしかない。するとまたもやこのパロディーが出てきたのかと思つた。以前は「高慢と偏見とゾンビ」であつた。これはセス・グレアム・スミスがオースティンを使ひながらも、そこにゾンビを取り込むことによつて独自の世界を創り上げた作品であつた。正にパロディーである。それに対してこの「龍の騎士」はどうか。こちらは、オースティンの世界は借りたが中身は別物とでも言ふのであらうか、多くの設定はそのまま生かされてはゐるものの、物語は全く違ふものとなつてゐる。原作は当時の女性の生き方を、と言つて良いのかどうか分からないのだが、描いた作品であつた。それが龍の出てくる世界のファンタジーに変はつてゐる。これとても、世界がアールに変はつてはゐても、女性のしあはせな生き方とは何かとならないわけではないのであらうが、個人的にはやはり龍の世界のお話となる。それでもオースティンが生かされてゐる。ここが問題で、結局、これもまた優れた「高慢と偏見」のパロディーとなつてゐる。さう、これもまたおもしろい。そもそもこの作品、作者があるアニメを見てゐる時、「いきなり“ドラゴンを駈けるミスター・ダーシー”のイメージが浮かび云々」(「訳者あとがき」446頁)といふところが出発点となつてゐるといふ。エリザベスではなくとミスター・ダーシーである。「龍の騎手」と名づけられた所以であらう。ただし原題は“HEARTSTONE”である。これだと2人に関係ありさうな、そしてロマンスにも関係ありさうなタイトルである。つまり、作者は最初からさういふ物語として構想したといふことであらうか。
    ・物語は「メリーボーン卿がライダーどもを雇った」(11頁)ところから始まる。グリフォン退治を頼んだのである。当然、その中にミスター・ダーシーがゐる。アラステア・デアレッドである。この2人、最初はもちろん関係なささうである。それ故に高慢な態度のデアレッドにアリザは偏見を抱く。その偏見は強まりこそすれ弱まることはない。さうしてデアレッドからの告白があり、それをアリザは断る。さうかうしてゐるうちに大リンドワームが目ざめて襲つてくる。こ の危機を乗り越えるには龍の騎手がといふわけでデアレッド等は出陣する……さうして最後はめでたしめでたしとなる。だから、正に「高慢と偏見」のパロディーなのである。その世界は、しかし、オースティンの現実の世界とは違ふ。龍が人と同居する世界である。龍は人と契りを結んでともに戦ふのである。戦ふのは大リンドワームや小リンドワームといふ人に害をなすものである。これらをテカリといふらしい。その中にはケンタウロスやワルキューレなどといふ一見悪くなささうなのがゐるし、恐狼やトロルなどといふのもゐる。他には見られない独特の世界であるらしい。ただし、これらは所詮脇役、ただ出てきただけ。グリフォンもそれに近い。かういふ、いはば小者を使つてオースティンとは違ふパロディー世界を作つてゐる。龍だけでもそれはファンタジーではあるが、かういふのがその世界を彩つてゐる。実際問題、異世界生物を取り込むのがファンタジーンの最も簡便な方法であらう。これが続編にもきつと生かされるはずである。もつとも「二冊の契約」の「龍を扱った長編」(「訳者あとがき」446頁)が本書の続編となるのかどうかは分からない。他の誰かの作品のパロディーであつてもおもしろい。そんなのを読んでみたいと思ふ。果たしてどんな作品が出てくるのであらうか。

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