地球の中心までトンネルを掘る (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488568054

作品紹介・あらすじ

事情を抱えた親たちの依頼を受け、あちこちの子どもの〈お祖母ちゃん〉を演じて報酬を得ているベテラン女性。折りヅルを使った遺産相続ゲームに挑む男たちと、それを眺める十二歳のぼく。大学卒業後、何をするでもなく生きてきたある朝、ふと裏庭にトンネルを掘り始めた三人の若者――。とびきり奇妙で、けれど他人とは思えない人々が織りなす11 の物語。シャーリイ・ジャクスン賞、全米図書館協会アレックス賞を受賞した珠玉の短編集。

感想・レビュー・書評

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  • SUNDAY LIBRARY:岡崎 武志・評『地球の中心までトンネルを掘る』『評伝・河野裕子…』ほか | 毎日新聞<サンデー毎日 2015年9月20日号より>
    https://mainichi.jp/articles/20150908/org/00m/040/026000c

    地球の中心までトンネルを掘る - ケヴィン・ウィルソン/芹澤恵 訳|東京創元社
    http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488568054
    (単行本)
    http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488016586

  • 11作の短編集。最後の話では、ハゲに悩む若者が主人公だったが、アメリカ人でもハゲに悩むのかと新鮮な驚き。ハゲは世界共通のお悩みか。
    チアリーダーに仕方なく入っている少女の話も面白い。全然話した事がない同級生と、あるきっかけで急に距離が縮まる感じ(本命ではない)や、スポーツでの治安の悪さが、読んでいて面白かった。

  • なんとも奇妙な短編集を味わった!
    主人公が「代理祖母」だったり「スクラブルのQのパーツ集め」だったり「おもちゃの音入れ屋」だったり謎で奇妙でファンタジーな職業についていたりするのに、細部がリアルに書かれているので本当にそんな職業ありそうって思ってしまう。
    主人公はみんなどこか陰の雰囲気を纏った人々で、言ってしまえば変わり者。でもみんな愛を抱えながら複雑に生きてる人々なので、奇妙なのに温かい。
    「今は亡き姉ハンドブック」は淡々と「姉あるある」を単語ごと解説していっているのにえらく切ない。シスコンには全然萌えないけど、なんでだろう、この短編が一番頭から離れない。
    走り去っていく姉の背中という存在しない記憶が生まれかけるほどです。

  • 単行本で出たときに複数の友人が絶賛していたので、文庫になった機会に読んでみた。SFとまではいかない奇想短編集という感じで、設定はどれも面白いけど、正直、私はそれほど好みではないかな、と思いつつ読み進めるうち、たしかにどこか心に引っかかるような良さがあるなあ、とじわじわわかってきて、巻末の津村記久子さんの特別エッセイで具体的にその良さが説明されるに至って、ああ、そのとおりだよなあ、とすとんと納得。そうとしか生きられない変わり者のいとしさとそれを取り巻く寒々しい社会にあるギリギリの捨てたもんじゃなさ、とでもいうのかな。

    ハチャメチャな遺産相続レースを描いた『ツルの舞う家』、オタクの男の子二人組が勢いでキスして、これは恋なのかなんなのかとなる『モータル・コンバット』(←同性愛への目覚めを描いた『アリとダンテ、宇宙の秘密を発見する』を読んだばかりなので、ちょっとつながってるように感じて興味深かった)、高校生の女の子と12歳の男の子とのいびつなラブストーリー『ゴー・ファイト・ウィン』、ガラクタを集めた博物館に勤務する女性が主人公の『あれやこれや博物館』が好きだった。あと、表題作では、仕事もしないで庭にトンネルを掘る若者(とその友人たち)を、その両親がありえないほど淡々と見守るのだが、そのフラットさをことさら美化したり強調したりするでもなく、さらっとそこにあるものとして描いているあたりも地味に心に残った。

  • 本屋で見かけて津村記久子が帯文だったんでなんとなく買った本が、いきなり2023ベストに踊り出てきた。
    自分が普段世の中に自分に他人に感じてる不満・怒りを、より精緻な、でも魅力的な物語にしてくれてる感じ。
    特に好きだったのは「替え玉」「ツルの舞う家」「ゴー・ファイト・ウィン」。
    でも一番心に残ってるのは「今は亡き姉ハンドブック:繊細な少年のための手引き」。内容もタイトルままだが私には刺激的すぎた。

    以下「ゴー・ファイト・ウィン」の出だし1ページにあるお気に入りのフレーズ。

    そういう場合は、“ゴー”、“ファイト”、“ウィン”の三つのことばのうちのどれかひとつを適当に叫ぶことにしているのだが、それではずしたことはほとんどない。

  • 世間からちょっとはみ出しているけれど、ロマンチック!どの短編も良かった。

  • SFかと思っていたら幻想っぽい
    オチの無い不思議な味わい

  • 感じる周囲とのズレをポジティブに取り上げる。センチメンタルなわけではない、静かに生きる力を感じる。

  • 十一編収録されている短編集。タイトルに惹かれて読んでみたけれど、表題作はもちろん、他の作品もとても魅力的で楽しかった。孤独や不安を抱えてる主人公が多く、他者との違いに悩んでいたりもするのだけれどそれを徐々に認め受け入れていく過程がいい。代理祖父母を派遣する会社で働く女性を描く「替え玉」、クイズ大会のチームメイトでモテない男子二人の魔が差した瞬間からの関係性を描く「モータルコンバット」、転校先の高校でチアリーディングを始めたペニーが12歳の男の子と交流を描く「ゴー・ファイト・ウィン」。この三編がとくに印象的で読み終わった後もたくさんの場面が残り続けている。

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著者プロフィール

〔著者〕 ケヴィン・ウィルソン(Kevin Wilson)
アメリカの小説家。『地球の中心までトンネルを掘る』(2009年)でデビュー。この第一短編集でシャーリイ・ジャクスン賞、全米図書館協会アレックス賞を受賞する。また、本書『ファング一家の奇想天外な謎めいた生活』はニューヨーク・タイムズ・ベストセラーのほか、タイム、ピープル、エスクワイアの年間ベストに選ばれている。

「2017年 『ファング一家の奇想天外な謎めいた生活』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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