ある日どこかで (創元推理文庫) (創元推理文庫 F マ 5-2)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (476ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488581022

作品紹介・あらすじ

脳腫瘍であと半年足らずの命と診断された脚本家リチャードは、旅の途中、サンディエゴのホテル・デル・コロナードでひとりの女性を目にする。女優エリーズ・マッケナ。1896年の色あせたポートレイトからほほえみかける彼女に会おうと、彼は時間旅行を試みるが…時を隔てた恋の行方は?映画化され熱狂的な人気を博する傑作ファンタジイ。世界幻想文学大賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 時間を超えたラブ・ストーリー。リチャード・マシスンさんの小説。
    彼の名前は、『トワイライト・ゾーン』(日本では、『ミステリー・ゾーン』)の脚本を書いていたことで、知っていたし、『地球最後の男』や『縮みゆく人間』を読んだこともある。大好きな作家の一人だ。
    映画化もされているので、映画も見てみたい。
    サンディエゴにある、ホテル・デル・コロナードにも興味をひかれる。機会があれば訪問してみたいホテルの一つになった。

  •  小説をはじめとして読書になじみのない僕ですが、ぼくは時間を超えた幻想というものが好きなようです。どきどきしながら1日で読み終えました。

     解説によれば、作者のマシスンは自分の感覚に焦点を置いた人とのこと。「時間を超えた恋愛なんて”現実には”有り得ない」とか「現実逃避に過ぎない」という人は少なからずいらっしゃると思います。しかし、その人自身がそれを見て感じているという限り、それはその人にとって現実に他ならないのかもしれませんね。

     また、元々タイトルとして考えられていたという「AND MOST LOVE SWEET(そして、愛はとこしえに甘美なり)」。この言葉が終盤で登場したときには身震いがしました。そして慌てて冒頭部を読み直しました。この女性(エリーズ)はきっと、あのあと75年の間、ずっと愛に生き続けてきたのでしょう。そして若き主人公に会った。そのすぐ後、どんな気持ちでこの最期の言葉を遺したというのでしょう。女性の立場に立つと何ともいえない切なさを感じます。

     若い方(とくに女性)からすれば、主人公はちょっと気味が悪いかな?なにせ、写真の女性を見て好意を抱いたからといって、時間を超えて会いにゆこうという発想をしている時点で尋常ではありません。しかし、その尋常ならざるエネルギーが時間を超えることを可能にしたといっても間違いではないでしょう。それに僕は、男が人を好きになるとそれだけ盲目的になるものだと思っているので共感さえ覚えました。

    翻訳もとても自然です。というより、翻訳が自然だからこそ原作者が文に込めた感覚が日本語としても十分に表れていて、すんなり読むことができたのだと思います。

  • ホラーとサスペンスの大家として知られるリチャード・マシスンが突如世に送り出した、ストロベリー全開のラブファンタジー。

    主人公は脳腫瘍で余命幾許もない脚本家・リチャード。残された人生をエンジョイすべく旅に出た彼は、道中のホテルでひとりの女優の古い写真を目にする。エリーズ・マッケナというその女性に一目惚れした彼は、彼女に逢うべくタイムスリップを試みる…。

     時間旅行というマシスン的なSF要素は入っているものの、本筋は紛れもない正統派ラブ・ロマンスである。美しいエリーズの姿に心を丸ごと奪われたリチャードは彼女の人生を徹底的に調べ上げるが、その過程で彼は以前年老いた彼女と会っていたこと、その時に謎めいた視線を向けられていたことを思い出す。そして、ホテルの古い台帳に、エリーズが当ホテルに滞在していた70年前のその日にリチャードの名が記されていたことを知り、自身が時間旅行を成功させてエリーズと出逢うことが必然である、と信じるに至る。かくして、彼は複雑なマシンなど一切使わず、自らの意志一つで時空を越えることに成功するのである。更に、過去のホテルで出逢ったエリーズもまたリチャードに運命的に惹かれ、様々な出来事を経て、僅か2日間で二人は結ばれるのである。正に「こまけえことはいいんだよ!」。ロマンス以外の何者でもない。

     ところで、この物語はストレートに「時空を超えたラブストーリー」として読む以外に、もうひとつの読み方が可能となっている。この物語自体がリチャードの生前残した手記を弟が紹介するという形式を取っているのだが、その弟が「これは兄の妄想である」と明言しており、これこそがこの物語のもうひとつの可能性である。そして、私はこの物語を後者として受け取り、ひとつの妄想譚として大層心を動かされたのである。
     いや、この物語に触れた99%の人は前者として読むであろうことは分かっている。また、別に「時間旅行の非現実性が気に入らない」とかそういう問題ではない。私がこの物語を妄想譚と受け取った理由は、全編に通底する「いちいち徹底的にリチャードへ都合の良い展開」であり、それを創り上げたリチャードが、そしてこの物語を彼に語らせたマシスン自身が、たまらなく愛おしいのだ。言い換えれば、私は彼らに「それなんてエロゲ?」的な清々しいほどの厨二病的妄想力を見る。

     大体一目惚れしたエリーズに過去逢ったことがあった、は実際のところ「たまたま」の範疇である。そして、昔の台帳に記載された自分の名前にしても、同名の人物なんて幾らでもいる。それをして「よし、つまり俺は時間旅行に成功するんだな!」という発想のコペルニクス的転回が素晴らしい。
     そして、正直時間旅行に成功すること以上に非現実的なのが過去でのラブ展開。明らかな不審者である筈のリチャードは、外したら一発アウトなフラグを次々と乗り越え、エリーズを短時間で彼の虜にしてしまう。この都合の良すぎる本ルート、もう完全にエロゲである。最後にHシーンもあるし。
     いや、私は決してエロゲを馬鹿にしているわけではない。むしろ、私は創作における「ジャンルによるクオリティの貴賎」を原則認めない。エロゲでも「何度も繰り返し味わいたくなる」文学性を持ったストーリー作品はあるだろうし、純文学を冠した作品でも、読んだ時間を返せと言いたくなるような駄作もごまんとある。私が言いたいのは、マシスンという世界に誇る才能が本気でエロゲ脚本を書いたら超名作となり全世界が泣いた、ということの重要性である。
    瀬名秀明氏による文庫版の解説によると、マシスン自身も滞在先のホテルである女優の写真に惹かれたのが、この物語を書くきっかけだったそうだ。その意味で、リチャード以上に純粋に、マシスンは妄想力でこの物語を書き上げたことになる。彼は、そしてリチャードも、これを書き上げる事でエリーズとの運命的な恋愛を味わい、幸福な時間を過ごすことができた。時間旅行が本当であったか、など問題ではない。この話はリチャードが自身の力で自らを救った人間賛歌であり、ひいてはエロゲ等で妄想恋愛に興じる「恋愛弱者」への勇気の書なのである。

    「真に運命的な恋愛」など、この世に一欠片しか存在しない。それでも、妄想力は誰にだって鍛えることができるし、究めればその妄想で「真に運命的な恋愛」を創り出し、世界を感動に包むこともできる。我々はこの物語を通じて、己のエロ妄想に宿る無限の可能性に気付かされるのである。

  • 'Cause if you're not really here, I don't wanna be either.

  • 脳腫瘍で余命宣告を受けた脚本家のリチャードがサンディエゴのホテルで出会った女性は75年前の女優エレーズマッケナ。時間旅行で彼女に会いに行こうとするリチャード。時を超えた恋は叶うのか。せつない。苦しい。私はこのラストあんまり好きではないんだけど、最近はうんざりするほどある話に比べると素晴らしさがよくわかる。タイムトラベルラヴストーリーの名作。

  • 映画版を観てはまってしまい、原作を求めました。
    映画で腑に落ちなかった、ラストの違和感を、原作で解消w
    設定にはなかったけれど、脳腫瘍だという前提は、映画にも組み込んだ方が、しっくり来たんじゃないかなぁとか。
    あくまでも男性視点で、その後の女性についても語らないところに、妙なリアルを感じました。

  • 挫折

  • 『鞄図書館』経由で。

  • 知ってたから読み終えるのが怖かった。
    映画が先で。
    映画ももう一度観るのが辛いくらい美しい。
    ああ、もう、その後や途中の2人を想う。
    妄想止まらない笑

    ああ、セリフが優しくて微笑ましい。
    待っててね、とか、すぐ行くからね、とか、愛しさに溢れている。

  • 鮮烈なホラーの印象が強いマシスンだが、本編はタイムトラベルもののファンタジー。オーソドックスなラヴストーリーで基本的な骨格は実にシンプルだが、フィニイを踏襲した19世紀末の風物のディテールと抜群のストーリーテリングで飽きさせない。作品背景が詳細に紹介されている瀬名秀明氏の解説も素晴らしい。

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著者プロフィール

Richard Matheson

「2006年 『不思議の森のアリス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

リチャード・マシスンの作品

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