ずっとお城で暮らしてる (創元推理文庫) (創元推理文庫 F シ 5-2)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488583026

感想・レビュー・書評

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  • 一家毒殺事件のあった屋敷で静かに暮らす生き残りの姉妹。従兄の来訪が閉鎖的な世界に害をなす。美しい狂気の世界。シャーリー・ジャクソンは「くじ」もおすすめ。

  • ユニコーンは処女にしか懐かない、翼の生えた馬もきっと同じなのだろい。なぜなら、清らかなふたりを月の上へ連れて行ってくれたから。

    家族を毒殺した理由は書かれていなかったが、サマーハウスでの記述を見ると家族の一員として大切にされていなかった様子がうかがえる。これがひとつの大きな原因なのだろう。

  • 面白かったです。
    善良な、というかいたって普通の人も、悪意にとらわれるとこんなに激しい事をしでかしてしまうのだと思うとかなり怖かったです。
    その後には「ごめんなさい」のしなじなを運んでくるというのに…集団心理やその場の雰囲気にのまれるのだろうか。
    コンスタンスとメリキャットの暮らしがずっと害われず幸せなままだといいと思いました。
    みんな少しずつ狂っている、幸せなお城の暮らしです。

  • ずっと読みたくてようやく巡り会えた本。

    期待を裏切らない、恐ろしくて美しいお話でした。


  • 世界観がとても好き
    コンスタンスが作ってくれる食事が
    美味しそうだし
    キッチンもお庭もきっと素敵なんだろうなあと
    想像しながら読んだ 

    メリキャット目線の空想のような日常のなかに
    村人たちの悪意、過去の惨劇がひそむのが不気味で、人間の狂気を感じた
    特にジュリアン伯父さんの存在はパンチが効いててとても印象的だったな

    外から見れば姉妹は狂った生活をしているのだろうけど2人はとても幸せそうなので
    このままお城で暮らしてほしいと思ってしまう

  • 最初から最後までずっとマザーグースで文章を練っているのかというくらい不気味で可愛らしい文章で、ワケが分からない。ゴシックホラーの小説の原点であり、この小説に憧れて筆を執っている人は多いのだろうなと。似た作品は沢山あれどやはり別格。

  • 凄惨な事件のあった屋敷でひっそり暮らす姉妹と叔父の、ささやかで浮世離れした幸福がじわじわ壊れていく……と見せかけて、実は最初からどうしようもなくズレているという事が明らかになっていく。
    姉妹の優しさ、互いへの想いの深さが美しいのに、病んでいて圧倒される。
    主人公の年齢を気にしてなくて、すっかり幼い子の話かと思っていたら、読み終わってレビューを見て、かなり育ってたことを知ってまたゾクり。
    かなり面白かった!し、好きな作品。これはもう、星5でしょう。

    ○全編通して主人公が気にする奇妙なまじないごとの数々が、絶妙。口に出したくなるようなリズム感ある訳も良く、文体がとても好み。

  • 【あらすじ】
     メアリー・キャサリン・ブラックウッド(メリキャット・略メリ)は、姉のコンスタント(コニー)・叔父のジュリアン・猫のジョナスと一緒に、広大な敷地を持つ城のような豪邸で暮らしている。家族は毒殺されいて、村の人々は容疑者として疑われていたコンスタンス、資産家であるブラックウッド家の生き残りであるメリを忌み嫌っていた。
     叔父は痴呆が進んでいたが、意識のはっきりしている時もあり、事件について原稿を起こしている。メリは、事件以来、人前に出ることのできなくなった姉の代わりに買い物をするために村に出ては嫌がらせを受けている。空想癖や物を地面に飢えたり、木に本を釘で打って魔除けをする癖がある。コニーが家事、炊事、二人の世話をして、三人は家族の遺産を元手に愛し合って平和に暮らしていた。
     そこへ、従兄弟のチャールズがやって来る。家にやってきたチャールズを歓迎するコニーだったが、メリは激しく従兄弟を拒否し、様々な嫌がらせを始める。優しかったコニーも、そそののかされて、叔父は看護師付の病院へ、おかしなことを言ったりやったりするメリを施設へと送ることを考え始める。
     メリは従兄弟が家族の遺産を狙っていることに気づき、従兄弟を追い払うために嫌がらせをエスカレート。従兄弟の奪った父の遺品を壊し、部屋をあらし、遂には火事を起こす。家事騒ぎに乗じて村人は姉妹の家を破壊し、叔父は避難の際に発作で死亡。暴徒化した村人たちに蔑まれながら何とか逃げた姉妹は、焼け落ちたまだ使えるスペースを片付け、今度こそ外界から隔たって生活を続ける。火事騒ぎからときが経ち、姉妹を助けようとする数少ない友好的な知人、反省し玄関先に食べ物を置いていく村人たち、再び金儲けのために姿を現した従兄弟などに一切触れることはなくなった。障壁を作り、敷地に入って来るようになった人々が気ままに噂するのを、蔦のはった屋敷から眺めて幸せに暮らしている。

    【感想】
     図書館で借りた本が最後に見たときには返却期限を五か月過ぎている。他の家族は皆死んでしまって、姉と二人きりで暮らしている18歳の彼女が、まるで「それでね」とさっきまでしていたおしゃべりの続きを「さっきも同じこと言ったでしょ」と物わかりの悪いこちらに、いやそうでもなく語り聞かせるように物語は始まる。

     村人たちの陰湿な視線が文字の向こうから伝わってくる。様々な嫌がらせにあいながら、彼女が帰り着いた村で一番の敷地の中に聳える城のような館。閉ざされ、隔絶され、他者を拒んでいるかのようにひっそりと佇む彼女の住処に暮らしているのは美しく明るく優しい殺人容疑者だった。三食の華やかなご馳走を作り、叔父や妹を献身的に支え、抜かりなく家族なき後の城を清潔に保っている。狂気と美しさはもしかすると紙一重なのかもしれない。ブラックウッド家の体面、誇りが、姉妹の潔癖なまでのルーティンと孤立した密室のなかで不気味なまでに艶やかに保たれ、鬱蒼としてる。浮世離れしているのが独特の魅力を持っている。

     メアリーの空想癖は夢見る乙女のそれから、頁を捲るごとに、始めは可愛らしく綺麗だった相貌から、その身に毒を宿しているのがわかるような美しさを孕んだ妄想へと変わっていくき不気味さを助長させていく。きづくと既に不協和音の演奏が始まっているのに、腰が動かない感覚に近い。当初優しい老人に思えたジュリアン叔父さんも、言動がちぐはぐになり、迷信深くなり、彼の言からもはやこの城、残された彼女たちに落とされ、ぴったりと張り付いた影が明らかになる。
     この幸せを煮詰めたような暖かい食卓と朗らかに台所で口ずさむ優し気な姉がこの不穏な落とし穴だらけの美しいに庭にホログラムのように奇跡的なバランスの小春日和を演出しているのが、来訪者によってぶち壊される。
     この美しく手入れされた庭に侵入した寄生虫・害虫の存在が、語り手のメアリーの毒が次第に全身をめぐらせ始める頃、叔父の容態が悪化し、綻びが次第に、名画の解像度を落とし、モザイクが目立ち始める。ここだけ見れば、ジュリアンの介護、メアリーの精神異常と過重介護に明け暮れる姉の構造になって行き、メアリを戦いを始める。
     癌を摘出するための荒療治が、続く暴力の渦への対峙と相俟って、姉妹の絆の美しさがどうしようもなく昇華されていくのカタルシスにもにた快感だった。その後姉妹が選んだ城での生活も、二人が世間をスポイルしたようで、メアリーが月の上ではと繰り返し繰り返し口にしてきた印象が結ばれたようで好きだ。陰湿で白痴な村と村人が作る汚れた世界のなかで、姉妹の城とそこでの生活は美しい。まるで別空間にあって、二人には城と連綿と続く家族の歴史の上にあって秩序を織りなしているよに感じられる。
     不気味さ胸糞の悪さもありイヤミスの要素ももちろんあると思う。しかし、恐怖小説やミステリーといったジャンルに固定した読み方をしたかというとそうではなく、爽快な解放感があり、生活を守るための独立独歩の戦いがあり、自らの価値の肯定が読み取れる作品だった。メアリーの無頼で、愛に溢れ、迎合しない生き方は憧れてしまうような美しさがある。この本を不気味だった、狂気じみていたとホラー感覚で読み込む人もいるかもしれない。その人たちは、きっと蔦の這う屋敷とそこに住んでいる魔女のように気がふれた姉妹を面白おかしく畏怖している村人たちに似る。その人たちは気づかない。そんなあなたたちの卑屈な言動をよそに、透き通ったラムネのように笑いながら、幸せを謳歌する彼女たちの姿に。

  • この小さい狭い世界で静かに暮らしている家族を私は嫌いにはなれない。
    人々が生きているはずなのに、メリキャットの目を通すと陰気な死んだ村に見える。実際は違うのかもしれないけれど、彼女の目に映るものがこの本の全てだから疑いたくない。
    18歳なのになんだか幼いメリキャットは、コンスタンス以外はみんな死んでしまえと思ったのかな。だとしたら生き残ったジュリアンおじさんもその中に入っており、しきりに「優しく」することを自分に強いていた理由も自ずと見えてくる。
    空想の中に逃げ込んでいないと正気じゃいられないメリキャット、料理好きで綺麗好きのコンスタンス、夢の中に生きているジュリアン。この3人の奇妙にバランスの取れたあたたかい生活が好きだった。綻びが見えてきた後でも、これは失われてほしくないものだった。
    村人たちの集団心理には燃えるような怒りがわいて、それを擁護する「友人」たちのことも信じられない気持ちで見ていた。もちろん従兄も。
    もう一度読み返したい。そうしたら見えてくるものがまた違ってくるはずだ。

  • 「虫唾が走るような不快感」が癖になってしまうという桜庭一樹さんお勧めの一冊。確かに嫌な気持ちになりながらも読むのをやめられない。自分の胸に問えば邪悪な部分がないとは言い切れない。人間の意地悪な妬み心が高じると、自制が効かなくなる哀しさ、お屋敷の火事に乗じて村人が略奪・暴行に至る過程が怖い。

    そんな人間心理を個性的な美姉妹をヒロインにして綴るシャーリィ・ジャクスンという作家の心理力に興味惹かれる。ゴシックロマンという作風は、20世紀はじめのイギリスアメリカ女流作家に多い、ダフネ・デュ・モーリアもそうだった。もっと言えばシャーロット・ブロンテからも始まっているのね。

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