- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488611040
作品紹介・あらすじ
宇宙に進出しようとした人類の前に、突如として未知の大宇宙船団が主要都市の上空に下りてきた。彼らは他の太陽系から来た生命体で、人類とは比較にならない高度な知能と科学力をもつ全能者だった。彼らは地球を全面的に管理し、ここに理想社会が出現したが、その姿を人類の前に現すことはなかった。この全能者の真意は? SF史上にその名を残す不朽の傑作。
感想・レビュー・書評
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異星人とのコンタクト物語ではあるけども……。
アーサー・C・クラークのこの小説は1953年刊行とずいぶん古いもので、作品としては最近読んだ『2001年宇宙の旅』よりも前のものとなる。
メディアはラジオ主流でテレビは出始めたばかり、もちろん人類は月どころか宇宙へも飛び出してはないころにつくられたお話。
時は米ソ対立のさなか、いよいよ「宇宙開発」の第一歩が記される直前に目の前に異星人があらわれる。
特に異星人たちが何かするわけでもないのに、人類はその絶対的な技術力と知性の前で自分たちとの格差に愕然とし、以降は文明の衰退が始まる。
なぜ、異星人は“その”タイミングであらわれたのか。
文明が成熟するということは何を意味することなのか。
終盤では、少し判りづらいが、未来を左右するのは「個」ではなく「全体」の力と示すが、あえてその是非を明らかにしていない。
「滅ぶ」ということと「継ながる」ということ……。
「進化」とは前形態の「絶滅」を意味する。
「さだめ」「運命」とは、いったい何の力によって存在するのか……。
原題「CHILDHHOOD’S END」
ちょっと難しい解釈へと、入り込んでしまうような物語でした。 -
人類の進化として個の消滅、全体への統合が示される。これを上位の存在への進化としながらも、悲劇的に描く。これは個人の独立を失うことになる。アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』では人類補完計画が提示されたが、主人公らは人類補完計画を拒絶した。上からの目線では進歩であっても、当事者意識があれば受け入れ難いものである。
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しばらく前に買ったまま積ん読だった一冊。
積ん読って数年後、何でもないときに「時は満ちた」状態になって、すっと読めてしまうから不思議よな。
買ったからってすぐに読まなくてもええんやで。 -
宇宙船団、ユートピア、海洋探査のほか、宗教や芸術も少し絡むところが面白い。
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SF作品の古典的名作。いやあ実に面白い。教養、娯楽、芸術どの要素も含まれているようで感動した。
プロットとしては上主の正体は?目的が何なのか?といったところを軸に進んでいくミステリー的なもの。物語が進むにつれて見えて来る上主の目的と地球そして人類の未来。
人類史を考えると、他生物から見た人類が「上主」だったときもあるし、植民地国から見た欧米列強が「上主」だったときもあるように、支配と被支配の関係はこれまでずっと繰り返されてきたと思う。まか結果的に上主は支配してるわけではなかったけど。絶対的な存在が生じることで平和や秩序が形成されるってのは面白いと思う、ただ勿論宗教的な神様と違って、物質的な充足感を与えてくれるからこそ成し遂げられたものだろうけれど。これが恐怖で支配されていたとしたらおそらくレジスタンスが台頭してきたんだろうけれど、さすがは上主、過度な干渉はせずに人間の思考をよく理解してうまく統治していますね。これは上主の圧倒的に進んだ科学力と知能のおかげって考えると、やっぱ勉強は大切だなと痛感させられる。
一方で上主たちの絶望と人類への羨望があるってのもこの小説に深みを出しているような気がする。絶対そこには辿り着けないけれども、虎視眈々とその機会を狙っている、貴志祐介の新世界よりでのバケネズミみたいだなーって思った。時間の話は面白かった、そういう発想できる力ってのは生きていく上で役に立つだろうなー。
果たして現実世界の人類の幼年期はいつ終わるのだろうか。あるいはもう既に幼年期が終わったのが現在なのだろうか。