ブラック部活動 子どもと先生の苦しみに向き合う

著者 :
  • 東洋館出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784491033334

作品紹介・あらすじ

部活動問題を世に広く問い、一大議論を巻き起こしている著者が、数年間のエビデンス分析から部活動に潜む矛盾と社会構造を鋭く示す。

感想・レビュー・書評

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  • 教職員だけでなく、一般人も読んでほしい。見方を変えると、この部活動のあり方が、生徒を長時間労働を可能にする労働者にしている。

  • 155ページの表をレポートに引用したい。

  • きちんとしたデータや取材に基づいて、主に中学校における部活動が抱えている問題を指摘する本。
    そもそも部活動は教育課程外の活動であるにもかかわらず、教員は強制的に部活動の顧問にさせられる。部活動は朝練習も、放課後練習も、週末の練習も、当然ながら勤務時間外。そして、自分がやったこともない競技の顧問をさせられた場合、その競技について勉強したり、審判できるように訓練を積んだりもしないといけない。顧問の指示で活動させている途中に生徒がケガをしたり、熱中症になったりしたら当然責任を負う。部活動内のいじめにも責任を負わなければならない。だからそうならないように、常に気をつけなければならない。でもそれは本来の仕事ではない。
    私も15年間、苦労しながら部活動の顧問をしてきた。自分の学生時代は運動部に所属したことはない。本来の仕事である学級経営、授業のための教材研究、教科の勉強や研修に加え、土曜も日曜もなく部活動に時間を割かれるのは苦痛だった。楽しみでやっている立派な教員もたくさんいる。スポーツが好きで、部活動の顧問にやりがいを感じ、それがあるからこそ仕事が続けられるという方もたくさんいるから、そういう教員は素晴らしいと思う。大変尊敬する。私もそうあらねばならないと思いながら、それなりに努力もしてきたが、部活動以外の本来の!本来の!業務だけでもすごく大変なのに、私は部活動に楽しみを見いだせない。とにかく、休日は休まないと疲れる。
    でも、これまで5つの学校に赴任したが、「部活動の顧問にならなくていい」という選択肢はまったくなかった。一度もそういう選択肢を示されたことはないし、議論になったこともない。部活動の顧問をしたくない、という発言は許されない空気である。
    だけど、そのことで悩んでいる教員は実はたくさんいる。たくさんいるのに声を上げられずにいる。理由は「みんながしているから」。
    これって、間違っている。みんながしているからおかしいと思っても声を上げない、というのは、いじめを黙認するのと同じような心理じゃないのか?教員がそんなことでいいのか?いや、だめだ、、、とこの本を読んで強く思った。さて、「私もう二度と部活動の顧問しません!」と言ってみようかな。
    きっと大変なことが起こるだろうな・・・・・・・・・・・・・。

  • 部活動が先生の仕事の範囲として位置付けが曖昧なところが気がかりです。クラス運営や進路指導に加えて、クラスや学年を横断した役回りもあるでしょうし。事務と教職の区分や保護者や卒業生など参加などいろいろな人足を検討し先生が抱えこまない部活動が継続できる方法が見出せると良いと思いました。伝統のある部活動強豪校もあるので解決方法はひとつの基準にはならないように思うものの。最近では、あちこちで部活動の話題を目にし、表立って言えない課題に対し著者のきっかけづくりが功を奏した印象です。

  • ふむ

  • 部活動を全否定するわけではなく、肥大化した部活動の「慣習となっている非常識」を打ち破るための気付きがみっちり入った本。
    子どもたちと向き合う教師が疲弊し、本来教えなくてはいけない学業に本気で向き合えていないことに対し、将来の日本社会への不安すら感じる。
    この本が教師の方々だけにとどまらず、子を持つ保護者が読んでみることをおすすめする。

  • 再読。2017年の本なので情報がやや古くなってはいるけど、学校部活動の負の側面から目を逸らさず見つめ、どうすれば生徒も教員も生き生きと活動できるかを考え、提言した本として今も高い価値があります。
    部活動は教育課程外の活動であり、それゆえに規制がかけられず過熱し、強制性が強まってきた歴史があります。エビデンス、すなわち根拠法令と信頼できるデータを示しながらそれを解説しているので、「教員なら部活の顧問をやるべき」「部活動を私用で休みにしては(休んでは)いけない」などというような感情論は極めて低次元であり、全く無意味です。活動の「総量規制」をすることで過熱化を規制し、部活本来の「居場所」の論理を重視した活動に変えていくことで強制性を廃し、自主性を取り戻すことを未来展望図として示しています。
    これからの社会は、ワークライフバランスを尊重し、とりわけ家庭生活の充実に重きをおくようになると思います。生徒にとって身近な大人である教員がそのロールモデルとならなくてどうするのでしょうか。早急に改革を進めていくべきでしょう。

  • 部活動の教育課程における位置付けや、現状をわかりやすく整理されており理解できた。

  • 部活動問題を、データに基づき、
    真っ向から立ち向かった意欲作。

    高校部活動編についての続編を
    期待しています。

  • 中学でも、高校でも、土日も休みがない運動部ですごしてきました。
    とてもきつかったけれど、オトナになってから思うのは、そのときの自分の苦しみより、顧問の先生はいつ休んでいたのだろう、ということです。

    当時はそんな気安く話すこともできず、引退してから部活を見に行った時の不思議なやさしい言葉から、ついつい現実を見ることがないままでした。

    土日も、夏休みも、お盆と正月以外ずっと部活を見に行く父親って、家族からどう思われていたのだろう、と。

    4時前に校門を出て家路につく公立高校を定年になったあとに雇われた先生と、顧問の先生との違いを、いまさらながら感じます。

    「そこまでする必要はない」

    それが真実だと思います。
    親の側にたち、こどもの保護者として学校をみれば、文句ばかりを言いたくなります。

    でも。
    そうやって人を追い詰めること自体が、こどもからみた親の姿として良くないことを、知らなければいけない時代だと思います。

    ボランティアの「活動」は、こどもも指導者も、笑って取り組める程度にとどめなければいけません。
    先生だからしょうがない、と親の側から言わないこと。それが問題を先に進めることに繋がる気がします。

    こどもの命も大切で、
    先生の命も大切だからです。

    小学校の教科書にも載っている、「いのちの時間」。そのとおりです。

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著者プロフィール

名古屋大学教授

「2023年 『これからの教育社会学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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