まかり通る-電力の鬼・松永安左エ門

著者 :
  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (690ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492061329

感想・レビュー・書評

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  • 表記の本ではなく『小島直記伝記文学全集 第七巻
    松永安左エ門の生涯』を読んだ。(小島は他にも松永について書いているので、表記のものとまったく同じではないが、重なりが多いのは想像に難くない)
    以下それについての書評である。
    第九巻の石橋湛山に続いて読むが、松永安左エ門についてもやはり教科書や本などで名前を聞き知っているだけで、詳しく知らない存在であった。この伝記を通して松永安左エ門の濃密な生涯を垣間見て、自分の安易な日々や無知の脳髄に雷の稲妻を受けたような衝撃であった。又、「老いて学べば死して朽ちず」の意味を問う年来の問題意識の解になるヒントを教えてくれる先人の話であった。翁の70代以降晩年の生き方も、老いに従いますます本質的になる仕事や学びの生活と茶道(耳庵)を通した交友の深さにも感服である。
    太平洋戦争を挟んで一実業家が日本資本主義の重要な電力産業の業界再編成を目指し、戦中は軍部や政党と、戦後はGHQや政治家・官僚との駆け引きなど、権力の思惑に振り回されながらも、発電・送電・販売一体の九社分立体制という電力業界の現在に至る体制を作り上げた。戦後パージ明けで、77歳から再起して本格的に活躍する、信念に生きた「電力の鬼」の伝記である。
    印象的な件は①河合栄治郎の愛弟子木川田一隆(東京電力)、松永の秘蔵っ子である無私・大悟の中部電力の横山通夫、太田垣士郎から引き継ぐ関西電力の芦原義重など各社の次世代の実務家同志と共鳴して業界再編成に身を挺した姿②96歳の書「不失恒心、不守恒産」(恒心は理念・理想であり、恒産は地位・肩書・名声・財産)。生涯を通したアンガージュマン=現実関与の姿勢・気迫③福沢諭吉の教え「公正の論は不平の徒より生ず」を信条とし、トインビーの『歴史の研究』(第一次大戦後40歳から75歳まで35年かけて6巻を書き上げる)に共感し、81歳で訪欧し直接本人から許可を得て92歳で刊行会を設置、鈴木大拙・小泉信三・蠟山政道・谷川徹三などの協力を得て翻訳事業に取り組む(彼は6歳年長)。刊行の辞を書くためにシュペングラーの『西洋の没落』原典を赤と青のアンダーラインを引きながら終日読む。1972年に全25巻刊行。中山伊知郎はこの翻訳事業を「教育者としての松永翁」で杉田玄白の「蘭学事始」を想起させ日本の文明を世界の文明の中で考えることを教えた、と言う。94歳の生涯で死ぬまで、原書も含めた多くの読書や各社新聞の精読や切り抜きを絶やさず、知性・教養や情報への貪欲な姿勢を貫く。
    筆者は徹底した関係者への取材や文献・資料の収集と分析で偏りなく纏め、松永安左エ門のリアルな全貌を再現している。立場上異論の存在は当然であるがそのことを踏まえても、松永の人生の処し方が時空を超えて読者に迫ってくる骨太の傑作である。

  • 150102読了。前半の学生時代は退屈。電力の観点からは、後半だけでも十分。電力自由化・発送電分離が議論されている今、51年体制発足時の経緯は確り再確認すべき。当時のポイントは、安定供給の為の発送配電一貫体制と、当時の主電源である水力の帰属(開発力)。
    電力需要が伸びない今、新規電源開発の重要性は低下。安定供給とコスト低減が主なポイントとするなら、9電力の集約と経営多角化・クロスサービスが答えか。
    電力の鬼ならどう考える?

  • 『電力の鬼』の生涯。
    お金儲けの世界から、世のため人のためになる商売へと志が変わっていく。
    長編なので読み応えあり。

  • 請求記号:コジマ
    資料番号:011116506
    伝記作家・小島直記による、人間・松永安左ヱ門を浮かび上がらせた小説です。

  • 斎藤一人さん推薦!!
    「時々こういういい本に出会うと、本好きの私にとっては、ふるえるぐらいのよろこびです」
    裸一貫から起業し、日本を代表する大物財界人となった松永安左ェ門(やすざえもん)の反骨精神あふれる生き方を描いた名作の復刻版。

    松永安左ェ門は、明治8年に九州の壱岐で生まれ、上京後、慶應義塾に入塾し福沢諭吉の教えを受けた。しかし、人間の真価は学歴ではないと慶應義塾を中退。福沢の紹介で日本銀行に勤務するもサラリーマンが合わず退職。石炭販売業を始めて、芸者遊び、相場……とムチャクチャな生活を送りながら、大成功を収めたかにみえたが、株暴落ですべてを失い隠遁。読書三昧の2年間の浪人生活の後に再起し、会社をおこして徐々に成功を収め、九州水力電気を設立。「電力界の松永」といわれるまでに電力業界に君臨し、電力独占化の時代に東邦電力を一人できりもりし5大電力の一角にのしあげた。

    しかし軍国化の時代に、「官僚は人間のクズである」と放言し、役人たちと大ゲンカし、一切の職を引退してふたたび隠遁生活へ……。完全に過去の人物になったかと思われたが、戦後、不死鳥のように復活。電力業界再編の中心的人物となり、電力事業の分割民営化を成し遂げた。その後、昭和46年に亡くなるまで、95年の人生を生涯現役でまっとうしている――。

  • 清水組(既に創業90年)、竹中工務店慶長年間、鹿島組天保年間、安藤組明治6年、銭高組と日本土木明治20年、間組明治22年、大林組は一番の新参者
    摂政関白に命ぜられる家柄 近衛、九条、二条、一条、鷹司の五家を五摂家、大臣、大将になれる家柄で久我、転法輪三条、西園寺、徳大寺、花山院、大い御門、今出川、広幡、醍醐の諸家を九精華

  • その《熱》という言い方を、おもしろい、と感じた。そこが武藤の武藤らしさだが、自分の工場の従業員だけでなく、人間が自分の仕事に打ち込んでいる姿を、何よりも好んでいる
    しかし自分の言葉をひねくれてとらないで、さっさと着替えをし、また駆け戻ってきたところが素直でいい、と思った
    要するに他力本願ではだめなんだ。もっと真剣に、君は君自身の仕事と対決せねばならない
    おい、お祝いをしよう
    友吉といいます。陰ひなたのない働き者です
    自分の人生にとっては決定的な、天下分け目の決断がそこにかかっているその対象から眼を背け、自分の身体をよけさせるとき、《飛躍》も《大望》も永遠に手の届かぬものになる
    自分の生活を立て、そうしてみんなのためになることだ
    いかに大きく儲けるかではなく、いかに人々のためになるかを考えるのが本当の事業精神
    不死の秘密は、ソロバンではない。理想なのだ

  • 分厚いが、一気に読める。戦後、現代日本を築いた男の伝記。アツイ。当時の熱気が伝わってくる。熱量が現代とケタはずれだ。

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