数学嫌いな人のための数学: 数学原論

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  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492222058

感想・レビュー・書評

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  • 第3章まではそれなりに興味深い内容であるが、それ以降は退屈きわまりない。

    さらに、筆者の怠慢か校正の無能かはわからないが途中で文体が変わっている部分があり極めて不愉快。第5章で会話調にする意味もわからない。

  •  論理が学問や議論でどれだけ有用なのかを力説した本。

    【メモ】
     本書の目次によると、巻末に「おわりに」があるとののこと。しかし、その「おわりに」がどこにも見当たらないのですが……


    【目次】
    はじめに(平成一三年九月 小室直樹) [ii-vi]
    目次 [vii-xvi]

    Chapter 1 数学の論理の源泉――古代宗教から生まれた数学の論理 001
    1 神は存在するのか、しないのか 002
      イスラエルの神は特異な神
      唯一絶対的人格神との契約
      論理こそ数学の生命
      ユダヤ教理解の鍵
      モーセと神の論争にみる神と人間との契約
      古代ギリシャで論理と数学が合体
      法律の論理は偽物
      アリストテレスの形式論理学
    2 存在するのかしないのか、それが問題だ――ギリシャの三大難問題型 022
      解のない問題もある
      ガウスの大定理
    3 航路は果たして存在するのかしないのか――「解」を目的にしたか否かが問題だ 027
      「解」を目的にしなかった鄭和の大航海
      「解」を目的にしたマゼランの大航海
      方程式の解(根)とは
    4 n次方程式には「解」がある――ガウスが発見した「解」の存在 038
      ガウスの大定理の意義
      解があっても解けない方程式がある
    5 最高の役人は最低の政治家である――マクス・ヴェーバーが発見した「解」のない政治の現実 045


    Chapter 2 数学は何のために学ぶのか――論理とは神への論争の技術なり 049
    1 「論理」とは「論争」の技術なり――東西の論争技術 050
      ヨ-ロッパの論争技術「国際法」
      蘇秦・張儀と韓非子にみる中国の論争技術
      韓非子が説く中国の論争技術
      韓国人・中国人の論理と、論理のない日本人との論争
      なぜ、日韓関係はよくならないのか――論理と非論理の衝突
    2 東西の「論理」の違い 071
      形式論理学が確立した三つの根本原則
      「食物規定」にみる論理の違い
      暖昧なる日本の法律の論理
      法律という名の嘘の効用
    3 数学の論理への誘い 084
      近代数学の“華”形式論理学
      論理学とは何か
      韓非子の「矛盾」とアリストテレスの「矛盾」は矛盾する
      ロバチェフスキー「革命」の本質
      すべて(全称命題)と一部〔ある〕(特称命題)の違い
      形式論理学には昇華しなかった中国の論理

    Chapter 3 数学と近代資本主義――数学の論理から資本主義は育った 109
    1 数学と資本主義の精神 110
      宋代、商業が隆盛をきわめたが
      日本人は「数学的精神」をなぜ失ったか
      数学的思考を否定した「空」の思想
    2 資本主義的私的所有権の絶対性と抽象性 119
      資本主義の根本は私的所有権である
      資本主義における所有の絶対性は数学化される
      日本では考えにくい「所有の絶対性」
      キリスト教が生んだ所有権の絶対性
      数学と結婚した経済学
      中世の所有は占有と不可分
      資本主義における所有の抽象性は数学化される
      社会主義へと後退する日本の資本主義
    3 中国や日本社会の特性 157
      人間関係で左右される中国の所有権

    Chapter 4 証明の技術――背理法・帰納法・必要十分条件・対偶の徹底解明 163
    1 形式論理学の“華”――背理法(帰謬法) 164
      背理法(帰謬法)の論理とその威力剛
      非ユークリッド幾何学の発見――パラダイムの大転換
      真理の発見から模型構築へのコペルニクス的大転換
    2 数学を除くあらゆる科学は不完全である――帰納法 179
      近代科学と帰納法
      心理学の実験と物理学
      ファンダメンタリストの科学批判
      メアリー・ベイカー・エディの「奇蹟」
      完全な帰納法は数学だけが持つ
      統計調査法と帰納法
      もう一つの帰納法――権威による論証
      中世の教会は聖書をなぜ読ませなかったのか
    3 社会科学の最重要概念――必要条件と十分条件 211
      数学征服の鍵は必要条件と十分条件の理解にあり
      必要十分条件とは何か――「同値」の定義
      著名な経済学者が陥った「論理矛盾」
      ソビエト帝国崩壊の原因
      必要条件と十分条件の念のためのまとめ 
    4 対偶の論理――何かがうまくいっていないときのおすすめ発想法 235
      対偶・逆・裏とは何か
      経済がうまくいかないときの発想法
      アメリカの金融危機への対処

    Chapter 5 数学と経済学――経済理論を貫く数学の論理 245
    1 ちょっぴりの数学で理論経済学の極意が分かる 246
      方程式と恒等式
      ケインズと古典派
      「セイの法則」の神髄
      「自由市場はベスト」とは
      ベストとは「資源の最適配分」のことを言う
    2 国民(national)を理解すると経済が分かる 266
      大恐慌とケインズ理論の登場
      ナショナル(national)の使い方
      国民所得を計算する
      「有効需要の原理」とは何か
      ケインズは方程式、古典派は恒等式
      クラウディング・アウト(閉め出し)
    3 経済の相互連関を単純なモデルで理解する 285
      政府を無視すると経済学が分かる
      サムエルソンの功績
      数学コンプレックスを治す
      「変化しない」は「変化する」の特殊ケース
      ワルラスは経済学を科学として自立させた
      仏教の因果律との比較
      問題は「労働力の換算」に
      マルクスを理解していない日本のマルキスト
    4 経済学の奥義が分かり数学が大好きに 310
      経済学のエッセンスが分かって数学が大好きになる
      グラフもやっと好きになった
      もう「金融」もなんのその
      「合成の誤謬」とは

  • 元々私も「数学嫌い」の一人である。本書は数学に興味を持つきっかけの一冊である。数理論理学すなわち形式論理学の分野を扱っているため数式もほぼ登場しない。数学知識は不要だが、史学や哲学といった文系的素養は要求される。背理法や対偶が原論の範疇かという気がしないでもないが内容は面白い。

    小室氏は数多くの「原論シリーズ(?)」を出版しているが、本書も思想としては左寄りでやや過激、些か偏ってる感は否めない。それゆえ読んでいて極端で面白いともいえる。本書で述べられる「絶対的唯一神との対話」という概念理解が出来るかが論理学のポイントだろう。神視点からの演繹的証明と、聖書視点での帰納的証明の不完全性の指摘などはなかなか興味深い。

    中等・高等での数学教育は、具体性ある算数教育から急に、抽象的な数式や公式へ移行するため興味を失いやすい。私がそうであった。本書のような尖った人間臭さがわかったほうが、多少回り道になったとしても数学に興味を持てると思うが、どうだろう。

  • 後半の100ページはなにが書いてあるかサッパリわからなかったけど、非常に勉強になった。

  • 「所有」の説明は違うのではないかと思ったが、それ以外はすんなりと読めた。

  • 「論理」というターム(学術用語)でいきなり数学と宗教を結びつける。知的な掘削が異なる世界の間にトンネルを掘る。ひとつ穴を開ければ地続きの大地が広がる。言われてみればあっさりと腑に落ちる。神の存在問題は真偽や証明に関わってくるためだ。
    http://sessendo.blogspot.jp/2014/03/blog-post_5095.html

  • 「数学」がタイトルにつくが数学的な内容はほとんど出てこない。数学と論理学、宗教学、経済学などとの関係や矛盾、必要条件、十分条件、証明などの話が例えや歴史的な経緯を踏まえて解説してある。著者特有の表現もあるため、そこは好き嫌いが分かれるかもしれない。

  • 数学嫌いな自分ではあるが、その原因は数学に対する根本的な理解がかけていたからだと思う。個人的な経験談ではあるが、大学に入るまで数学の重要性や意義を誰も教えてくれることがなかった。特に高校数学においては基本的な公式、定理をとりあえず覚えてから論理展開を行うというのが一般的なやり方であるが、そもそもなぜいきなり前置きもなしに公式を覚えさせられるのかという疑問が常にあった。もちろん数学に限らず、基本的事項はとりあえず覚えるということはいずれにせよ必要ではあるものの、それらがなぜ重要でどのような意義があるのかという理由はもっと厳密に私達の思考と連関があるように思われる。本書は数学を一神教、論理学、歴史という例を持ちながら数学的概念の日常例、思考の規則、そして数学の普遍性といった出来事を面白く解説している。
    「ゆとり教育」の弊害として再び教科書のページが再び増量されている。このこと自体に問題はないのだけれども、単純にやることを増やすだけでは余計に学問離れが促進するだけであるように思われる。そもそも、学問の面白さを伝達する知的好奇心の育成こそが学業におけるもっとも重要なテーマであり、それを養うことによって主体的な探究的な勉強を独創的な見地から行うことができるのである。教科書の付録にでも本書の内容のような本質的な事柄が書かれていれば、学問をする意義というものが早いうちからわかってもらえるのではないだろうか。

  •  本書のタイトルに「数学」とあるが、いわゆる数学の専門書ではない。数学の基盤となっている思考方法が社会とどのように関わっているかを説いている。著者は社会科学系学者の小室直樹氏。哲学、宗教、法律、経済と幅広い領域にわたって数学との関わりを解説している。数式はほとんど出てこないし、数式を解説することが本書の主眼ではないのでタイトルにあるように数学が嫌いな人にとっても読みやすいだろう。一方で、いわゆる理系の人にとっては本書で述べられている数学的素養は当たり前のことのように感じるかもしれない。しかし、数学的思考と社会との関わりという視点は新鮮に映るだろう。その意味で本書は数学嫌いな人よりも学校教育で数学が得意だった人こそ読者にふさわしいだろう。

  • 1、数学の論理の源泉
    2、数学は何の為に学ぶのか
    3、数学と近代資本主義
    4、数学の論理の使い方ー証明の技術
    5、数学と経済学

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著者プロフィール

1932年、東京生まれ。京都大学理学部数学科卒。大阪大学大学院経済学研究科中退、東京大学大学院法学政治学研究科修了。マサチューセッツ工科大学、ミシガン大学、ハーバード大学に留学。1972年、東京大学から法学博士号を授与される。2010年没。著書は『ソビエト帝国の崩壊』『韓国の悲劇』『日本人のための経済原論』『日本人のための宗教原論』『戦争と国際法を知らない日本人へ』他多数。渡部昇一氏との共著に『自ら国を潰すのか』『封印の昭和史』がある。

「2023年 『「天皇」の原理』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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