超ヤバい経済学

  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (338ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492314067

作品紹介・あらすじ

ゾウとサメ、どっちが怖い?酔っ払って歩くのと酔っ払い運転、どっちが危険?ポン引きと不動産屋さん、どっちが偉い?お医者さんはちゃんと手を洗ってるの?サッカー選手になるには何月に生まれると有利?臓器移植問題は思いやりで解決する?カンガルーを食べれば地球は救われる?性別を変えたらお給料は上がるの?全世界400万部超のベストセラー『ヤバい経済学』に待望の続編。

感想・レビュー・書評

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  • 一応経済学という単語がタイトルに含まれているが、必ずしもお金のやり取りにかかる経済に限らず、人々が何をインセンティブにして決断をするか、得するためのインセンティブはどこにあるのかについてさまざまな事象や実験を元に語られている。どこにインセンティブがあるのか、ないのか、どうやったら行動変容を促すことができるのか、特に行動変容に関しては必ずしもソリューションがあるわけではなく、モノによっては非常に長い時間をかけないと変わらないものがある(あった)ということなのだろうか。ただ合理的に判断し、ソリューションを提示しても、車のシートベルトや妊婦の死亡率を低減させるのが難しかったとの記載がある。それだけ人の行動を変えるのは難しく、心情に訴えるのではなく、どういったらインセンティブを与えることになるのかを考えなくてはならないということをこの本では言いたかったのでは無いかと思われる。

    P.30
    政治と経済学はアメリカでは特に相性が悪い。政治家はありとあらゆる理由をつけて、ありとあらゆる法律を作るけれど、彼らがどれだけいいことをしたつもりでも、彼らの作る法律は本物の人びとが本物の世界でインセンティブにどう反応するかがてんでわかっていない。
    アメリカで売春が法律で禁止されると、取り締まりの労力の大部分はお客よりも売春部に向けられた。これはまったくよくあるやり口だ。他の違法行為の市場と同じようにーー麻薬の取引や銃の闇市場を考えて欲しいーー政府はだいたい、モノやサービスを消費する人たちよりも供給する人たちを罰するのを好む。
    でも、供給する側を牢屋に放り込めば希少性が生じ、必然的に価格は高くなり、供給する側になろうという人がもっと市場に参入してくる。アメリカの「麻薬撲滅戦争」はどちらかといえばうまくいかなかった。それはまさしく、買う人じゃなくて売る人を標的にしたからだ。麻薬を買う人はどう考えても売る人よりも多い。それなのに、麻薬関係の罪の懲役は、のべ年数で測って90%は売人が食らっている。

    P.33
    チェザール・マルティネッリとスーザン・W・パーカーはともに経済学者である。2人は10万人を超えるオポチュニダデスの対象者データを分析した。彼らは、生活保護を申し込む人たちがある種のモノについてしょっちゅう実際より過少に申告しているのを発見した。乗用車やトラック、ヴィデオ録画機、衛生テレビ、洗濯機なんかがそうだ。でも、これに驚く人はいないだろう。生活保護を受けたい人たちには、自分は実際よりももっと貧乏だってフリをするインセンティブが働く。でも、マルティネッリとパーカーの発見によると、そういう人たちはその他のモノに関しては課題に申告していた。家の中にトイレがあるとか水道水が来ているとかガス・ストーヴがあるとか床はコンクリートだとか、そういうことだ。(中略)マルティネッリとパーカーは恥ずかしいからだという。どう見ても生活保護を受けないといけないほど貧しい人でさえ、ウチの床は地べたですとウチにはトイレもないですとか、福祉関係の役人に言いたく無いってことだ。

    P.38
    150年以上も前、フランスの経済学者フレデリック・バスティアは、『ろうそく職人の陳情書』で、「ろうそく、テーブル・キャンドル、ちょうちん、ろうそく立て、街灯、芯切りばさみ、ろうそく消しの製造者」、加えて「獣脂、石油、松脂、アルコール、およびアカリにかかわるありとあらゆる一般の生産者」の利益を代表して陳情すると書いている。
    バスティアの陳情によれいは、これらの産業は「国外の敵との破壊的な競争に苦しんでいる。敵はわが国における明かりの生産に比して明らかに有利な条件の下で活動しており、信じがたい低価格でわが国市場を自分の製品であふれさせている」。
    この卑劣なる国外の敵とは?
    「他でも無い、太陽である」とバスティアは書いている。彼は、全国民が家に日光を入れるのを禁じる法律を作るようにフランス政府に懇願している。

    P.81
    テロが効果的なのは、直接の犠牲者だけでなく、あらゆる人に負担を強いるからだ。そんな間接的な負担のうち一番大きいのが、また攻撃されるかもという恐怖である。(中略)もっと見えにくい負担も考えてみよう。たとえば時間と自由が奪われることだ。この前空港でセキュリティ検査の列に並んだときのことを思いだしてほしい。靴を脱がされ、ストッキングの足で歩いて金属探知機をくぐらされ、それからよたよた歩きながら自分の荷物をまとめないといけなかったでしょう。
    テロの美しいところは(中略)失敗したって成功するかもしれないという点だ。靴を脱いで云々なんて決まった手順をフマされるようになったのは、リチャード・リードというイギリス人のせいだ。この人は靴にいれた爆弾を起動させるのには失敗したが、ぼくたちに莫大な代償を払わせるのには成功した。

    P.155
    ちょっと見られているというだけでぼくたちの行動は変わったりする。イギリスのニューカッスル・アポン・タイン大学で心理学の教授を務めるメリッサ・ベイトソンという人が、自分の学部の休憩室でこっそりと実験を行った。普段、先生たちはコーヒーやなんかの飲み物の代金を「正直者の箱」に入れて払っていた。毎週、ベイトソンは価格の表を変えた。値段はまったく変わらないのだが、表の上に載っている小さな写真が変わるのだ。奇数の週には花、偶数の週には人の二つの目を乗せた。代金表から人の目が見ているとき、ベイトソンの同僚たちが正直者の箱に入れる額は3倍近くになった。(中略)監視と選択バイアスに加えてもう一つ考えないといけない要素がある。人間の行動は頭がクラクラするほど複雑な、インセンティブ、社会規範、判断の枠組み、過去の実験から拾ってきた教訓の組み合わせに左右されるーつまり文脈というやつだ。ぼくたちが実際やっているような行動をするのは、具体的な状況の下で与えられた選択肢とインセンティブに対し、そういう行動をするのが一番得るものが大きいと思うからだ。こういうのは合理的行動とも呼ばれている。つまり、経済学の考え方そのものだ。(中略)実験室という文脈は避けようもなく人工的なものになる。ある学者が1世紀以上も前に書いてあるように、実験室での実験は人間を「バカなロボットに変えてしまう力がある。「研究者が一番ほしいと思っている結果を報告し、ありとあらゆる手を尽くして彼を手助けしようとけなげに振る舞うバカなロボット」だ。心理学者のマルティン・オルネは、実験室は志位いられた協力とでも呼ぶべきものを助長すると言っている。

    P.176
    「障害を持つアメリカ人法」(ADA)を考えてみよう。障害を持つ被雇用者を差別から守るべく作られた法律だ。(中略)でも、データをどう見ても、差っぴきすればこの法律のおかげで障害を持つアメリカ人の仕事は減っている。(中略)雇い主は、障害を持つ人だとろくに仕事をしなくても罰を与えたりクビにしたりできなくなるんじゃないかととても心配して、最初から障害を持つ人を雇わなくなってしまったのだ。

  • ぽん引きと風俗女の件.すごく面白い

  • 地球温暖化から娼婦の話まで、前作よりも扱う題材が幅広く、興味深いものが多かった。

    特に猿に貨幣の概念を理解させる実験の話が面白い。貨幣の概念を理解し人間のような行動を取るようになる猿に驚愕した。

    前作でも少し思ったけど、統計では酔った人間に飲酒運転させるよりも、歩いて帰らせる方が事故に遭う可能性が高いので飲酒運転でも車で帰らせた方が実は安全、みたいな話は『ファクトフルネス』っぽい。

  • エンタメとして面白かった。
    特に面白かったのは、アメリカ男子の性風俗事情(過去)や、アメリカでは飲酒運転をした時の死亡率より、飲酒運転をしているドライバーに轢き殺される確率の方が高いことなど。

  • おもしろい

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/58707

  • 負の外部性の話。
    全体として負であることがわかっていても、個々の人間の行動を改めさせることは難しい。


    温暖化の話は面白い。
    外部性により、一人一人の行動は小さいものでも70億人分のコストとなり重くのしかかる。
    また例え温室効果ガスの排出をやめても経済への打撃がすごいだけではなく、即効性がない。
    さらに気候には責任の所在をつけにくい。
    つまりやめるインセンティブがないに等しい。

    一方、温暖化の対処法もありそうで、亜硫酸ガスを成層圏に放出するだけで解決する見込みが高い。

    止め方がわからないのではなく、止めたくないから温暖化は進行しているらしい。

  • テーマ:人は誘因で動く。
    前著 ヤバい経済学 し

  • よほどよく考えて行動しない限り、人間は非合理的に動く。感情や損得勘定に任せて行動すれば、逆に進んで損をしに行くというのは非常に興味深い結果だった。本の内容をそのまま鵜呑みにするのも危険だけど、思い当たる節がありすぎるので、もうちょっと賢く行動しようと思いました(小並感)

  • 続編だが、結構パワーアップしてる

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著者プロフィール

スティーヴン・D・レヴィット
シカゴ大学経済学部教授
シカゴ大学経済学部教授。40歳未満で最も影響力のあるアメリカの経済学者に贈られるジョン・ベイツ・クラーク・メダル受賞。ヤバい経済学流の考え方を企業や慈善活動に応用するグレイテスト・グッドの創設者。

「2016年 『ヤバすぎる経済学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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