給料の上げ方: 日本人みんなで豊かになる

  • 東洋経済新報社
3.80
  • (12)
  • (13)
  • (13)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 225
感想 : 21
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492558096

作品紹介・あらすじ

日本人の実力は、こんなものではないーー。

在日33年、日本を愛する伝説のアナリストが、
「給料の本質」と「日本人の給料を上げる方法」を明かす。

いまこそ、
自分のために、仲間のために、
そして日本のために動きだそう。

◆筆者よりコメント◆
日本人の給料は過去30年間、ほとんど上がっていません。
いまの給料は、まじめな日本人の働きにふさわしい水準ではありません。
政府や経営者に任せていては、給料は上がらないことがハッキリしました。
いまこそ、日本人1人ひとりが動き出すときです。
本書では「給料の本質」を明らかにし、
日本人の給料を引き上げる「戦略」と「戦術」を導き出します。
ーーデービッド・アトキンソン

◆本書の主な内容◆
・給料が上がらないのは「日本人の能力」のせいではない
・給料が上がらない根本理由
・会社との関係をとらえなおせば給料は上がる
・毎年4.2%の賃上げを実現する
・見限るべき社長、ついていくべき社長
・「よいものをより安く」では給料は上がらない
・あなたは「評価される側」から「評価する側」になる
・「4つの基準」で働く会社を評価する
ほか

◆目次◆
第1章 背景:なぜ日本人の給料は低迷しているのか
第2章 未来:日本人は世界の貧困層になる
第3章 目的:毎年4.2%の賃上げを実現する
第4章 手段:見限るべき社長、ついていくべき社長
第5章 心得:「よいものをより安く」では給料は上がらない
第6章 戦略:イノベーションが起きる会社を選ぶ
第7章 戦術:「4つの基準」で働く会社を評価する
第8章 補論:俗流評論家に騙されるな

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • デービッド・アトキンソン節が今回も炸裂。お馴染み、日本は中小企業が多く、それを保護する事が社会全体に不利益を齎しているという論説だ。それは日本人の給与が上がらない原因にも繋がる。

    尤も、経営が上向けば給料が上がるとか、給料は政府が上げてくれるものという考えはマヤカシであるというアトキンソンの言い分はその通りだと思う。ただ、こうした議論の出発点として、日本以外の給与は上がっているんだという比較対象についてだが、確かに米国は給与が年々上がっている気もするが、それは高所得者だけであって、中産階級の給与は日本同様停滞している事を本著には語られない別の本に書かれている。これが事実なら、日本の構造というより、世界的な格差が更に拡大していて、見掛け上、格差の小さな国が停滞して見えるという現象。つまり、格差を広げよ、というのが答えだが、そんな事で誰が喜ぶのだろうか。

    有給休暇取得率も労働生産性も大企業ほど高くなる。輸出しているか否かも企業規模に高い相関関係がある。企業単位で社長が必要な中小企業が、統合すれば社長が1人で済むと思えば、大企業に集約されるほど社会全体の効率があがるのは自明。財閥構造にも一定の合理性はある。競争が鈍化してイノベーションが起こり難い、というのは過去の話。今は競合はグローバルに存在する。だからと言って韓国のような社会構造物が正しいとも言えない。

    ITプラットフォーマの覇権争いの勝者から逆算して、成功者の理論を聞くのは誤りという気がしてならない。中小企業そのままに、日本にGAFAMが生まれていれば、日米の構図は逆だったという話なのだろう。寧ろ、ビッグテックが生まれない問題が先なのではないか。

  • イギリス政府による、生産性向上につながる要因に関するレポートに言及した章が印象的でした。

  • 著者は、イギリス人で日本に30年以上在住、その略歴はオックスフォード大学で日本学を専攻、ゴールドマン・サックスにて金融調査室長を務め、現在は創立300年を超える国宝・重要文化財の補修を手がける小西美術工藝の社長。

    また、第二次安倍政権やその後の管政権では、主に観光戦略に携わり、その間訪日外国人観光客数は上昇を続け、コロナ前の2019年には、3,188万人と過去最高を記録した。

    要は、外国人で金融のプロでありながら、日本の国内事情や経済事情に通じた人ということになる。

    そんな著者が書いた本書は、やはり面白い。

    では、どうやって日本人の給料を上げるのか?

    答えから先に言ってしまうと、その方法はふたつ。

    ひとつは、社長に給料を上げるよう交渉する。

    もうひとつは、将来成長する見込みのない会社にいて、給料を上げてもらえる可能性が低い場合、将来性のある会社に転職する、というもの。

    おそらく、これは海外では一般的な手法と思われる。

    しかし、日本には日本の事情がある。
    特に日本人の国民性からして、前者の社長との給料増額交渉は難しいのではないかと思う人が多いであろう。

    また、後者の転職についても、最近でこそ40代以上の転職も一般的になりつつあるものの、海外に比べれば、まだそれも一般的ではなく、日本ではそこまで労働流動性が高まっている状況とはいえない。

    では、これらの提言は日本国内の事情や日本人の国民性を知らない外国人の戯言なのであろうか?

    いやしかし、冒頭に記した著者の経歴を見て頂きたい。
    おそらく、日本人の一般的なビジネスパーソンよりもはるかに日本の経済については勿論、その文化的背景やメンタリティーについても通じている人と思われる。

    なので、虚心坦懐に著者の主張に耳を傾けてみることにした。

    まず、給料増額交渉についてだが、このままそれをせずに黙って働いているだけでは、多くの日本人の給料は現状維維持もままならず減少していくことが確実と、様々なデータを挙げながら警笛を鳴らす。

    この30年は「失われた30年」と言われるが、実際この30年間日本人の給料はほぼ横ばいである一方、税金や社会保険料はずっと上がり続けている、つまり、手取り収入が継続的に減少しているのだ。

    そして、この30年間で、生産年齢人口(15~64歳)が約1,300万人減少し、これと同時に高齢者が2,100万人以上増加しており、この状況は今後も更に進むことが見込まれており(2,060年には高齢者の割合は約4割となると推計)、税金や社会保険料は更に上がることは確実なので、給料が上がらない限り手取り収入は加速度的に減っていくことになる。

    では、どの程度給料が上がれば、今後も増加していくことが確実な高齢者負担に対応できるのかと言えば、毎年ベースアップ1.4%、2.8%の定期昇給で合計4.2%と試算されている。

    このように日本の将来が暗澹たるものであること、またこのまま黙って働いているだけでは、給料が継続的かつ加速度的に減少していく一方だということは分かったが、給料増額交渉を我々自身が会社とすべきという主張は未だ現実的な方法として受け入れがたい。

    無論、著者も自分の給料を増やすよう経営者に面と向かって言いにくい日本人のメンタリティーを知らないまたは無視してこのようなことを言ってるわけではない。

    著者曰く、これからは前述のとおり、労働人口が減っていくので、今までのように雇ってやっているという売り手市場から早晩買い手市場に転換する、という前提があるにはある。

    また、ここ数年、安倍政権や現在の岸田政権でも官製の賃上げがなされ、一定の企業はそれに従い、ベースアップなどの昇給をしてきた。

    他方、この失われた30年で企業の内部留保金は500兆円近くまで膨れ上がったという。

    であるならば、この留保金を企業に吐き出させ、それを社員に給料というかたちで還元する、仮にそれに応じない企業にはその分法人税率をあげるといった施策などもあろうかと思うが、そこまでのことを政府としてはいえないのであろうか?

    次に転職の話し。

    これは前述したが、今後労働人口が減少していくことが確実であるため、ある程度鼻の利く経営者であれば、人材難が間近に迫っていることを認識しており、転職話から賃上げにつなげることもできるであろうし、それも無理なら他に行くというのも選択肢のひとつである、という考え方である。

    では、転職を考えるべき将来性のない会社とは
    社長が、①売上を増やそうとしない、②生産性を理解できていない(従業員を削減すれば、労働生産性が上がると勘違いしている)、③単価を下げようとする。

    ③は人口増加局面では薄利多売は今まで購入できなかった客層の新規開拓が可能となるが、人口減少局面では機能しない。

    では逆に、転職先として検討すべき会社はどのような会社かというと、
    ①生産性の高い業界の会社、②会社の規模(中堅企業(社員100~300人)>大企業>中小企業)、③適切なタイミングで適切な規模に成長する企業、④労働分配率(企業が創出した付加価値のうち、何割を給料が占めているか)が高い会社。

    今の会社が嫌だからと闇雲に転職するのではなく、転職先の会社やその会社が属する業界の将来性なども勘案することが重要。

    こちらの提案は、一般の日本人でも実行可能で、かつ、どのような場合に転職すべきかの基準も明確で参考になるものと思われる。

    色々と面白い提言が盛り込まれた本書、一読の価値あり。

  • 人口減少が今後日本にどのような未来をもたらすか、それが個人にどのように影響するか、繰り返し角度を変えて説明しているので、シンプルにわかりやすかった。
    自分のこれからの働き方を考える上で一つのヒントと心構えとしたい。

  • 給料云々の前に、日本の現状がよくわかる。
    平易で読みやすい。
    日本の現状、問題点が数字をもとに明らかにされており、今後どうなるのか見通しを知ることができる。
    世の中がどうなってるのか不安な人におすすめ。
    寝る前に読んだら面白くて興奮して眠れなくなった。

  • 現状維持を好む日本人に対する警告書。
    給料を上げるためにどうすればいいのか?を端的にまとめている。会社から評価されるのではなく、評価するために会社を見極めていくこと、転職も覚悟した自分の給料の値上げ交渉など、なるほどと思う内容ばかりであった。ただどれだけの日本人が行動に移せるのかは疑問。他責、他力本願を続ける限り状況は悪化していくばかりであり、自己責任で主体的に行動する重要性を改めて認識した。

  • 給料を上げる交渉をしない日本人とガツガツくる人。競争力の軍配が上がるのは一目瞭然。

  • 働くことに、様々な環境の違いがあるので一概には言えないが、自分の頭で考えて、給料の何割かを投資したり、有効に使う術を考えていかないと。

  • 税金が上がり続ける今、給料の現状維持はもはや衰退でしかない。年4.2%の給与アップをしなければ現状の生活を維持できない。そう聞いて自分もギリギリなのかと思った。上司から給料上げると言われて、小さくなって申し訳なさそうにしてる姿勢がダメかも。

    そんな風に一人一人が給料を上げる努力をしないといけない、今までとは全然違う国になったという話。日本を出ることも視野に入れるという、自分にとっては考えたこともない、視野が広がる話だった。
    「良いものを安く売るから日本の給料は上がらない。」というのはなかなか重く響く。

全21件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

デービッド・アトキンソン
小西美術工藝社社長
1965年イギリス生まれ。日本在住33年。オックスフォード大学「日本学」専攻。裏千家茶名「宗真」拝受。
1992年ゴールドマン・サックス入社。金融調査室長として日本の不良債権の実態を暴くレポートを発表し、注目を集める。2006年に共同出資者となるが、マネーゲームを達観するに至り2007年に退社。2009年創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手掛ける小西美術工藝社に入社、2011年同社会長兼社長に就任。2017年から日本政府観光局特別顧問、2020年から政府の「成長戦略会議」委員などを歴任。
『日本人の勝算』『デービッド・アトキンソン 新・観光立国論』(山本七平賞、不動産協会賞受賞)『新・生産性立国論』(いずれも東洋経済新報社)など著書多数。2016年に『財界』「経営者賞」、2017年に「日英協会賞」受賞。

「2023年 『給料の上げ方 日本人みんなで豊かになる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

デービッド・アトキンソンの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×