- Amazon.co.jp ・本 (95ページ)
- / ISBN・EAN: 9784494020799
作品紹介・あらすじ
かっぱには大がっぱと小がっぱがいた。大がっぱは川で、小がっぱは池でくらしていた。でも、人間たちは大がっぱだけをかっぱだと思っていたようだ。大がっぱが人間につかまったり、すむ場所がなくなったりして姿を消しても、小がっぱは小さな池の中でひっそりと生きていた。かっぱは人間よりもずっと長生きだ。池にも何百年もすむことになる。おれは、あちこちさがしていちばん気に入ったこの池をすみかに決めた。近くに村があるから、よく子どもたちがのぞきにくる。かっぱは目がいいから、池の底にいても子どもの姿はよく見えた。人間の子どもというのはおもしろいなあ。
ある日、おれは池に落ちた女の子を助けた。池の中で女の子はおれと同じ大きさになり、おしゃべりすることができた。女の子の名前は、ちよ。家族とはなれてひとり、この村に疎開してきたという。いまこの国では戦争をしていて、大きな町には爆弾が落とされているらしい。せめて、子どもだけでも逃がそうということになったのだそうだ。ちよは、次の日から毎日おれの池にやってきた。おれは人間と話すのが楽しかった。ちよは学校のことをいっぱい話してくれた。いっしょに勉強したり、体操をしたりもした。ちよが歌ってくれた歌におれは胸がジーンとした。いい歌だった。ちよは、いっしょに学校にいこうと言ってくれた。学校にも池があるらしい。おれはそれもいいなと思っていた。ところが、雪が舞う季節になって、ちよはぷっつり姿を見せなくなった。おれは心配で、木にのぼり村のようすを見た。灰色の雲が村をおおっていた。子どもの姿が見えなかった。ちよは、どうしちまったんだろう。
ちよは桜が咲き始めたころにやってきた。村を出て、知らないおばさんにもらわれていくという。「あのね、みんな、もえたんだって」「もえた?」「お父ちゃんもお母ちゃんもおとうとも、みんな、もえたんだって。ばくだんがおちてきて、もえたんだって」ちよは、悲しみをがまんして笑っておれに話してくれた。「ちよ、ないていいんだぞ。おまえは子どもなんだから、なきたいときはなけばいい」おれはちよをぎゅっと抱きしめた。ちよは池の水がふえてしまいそうなくらい泣き続けた。おれは、なにもできなかった。「あたし、行くね。がっこうにつれていってあげられなくて、ごめんね」おれは、怒っていた。なんで、ちよはこんなにがまんしなくちゃいけないんだ。子どもは甘えていいんだ。なんでだ。なんでだ。なんでだ! ちよがいなくなって、おれは身体中の力が抜けてしまった。大人の人間はきらいだ。戦争をやって、子どもを苦しめて。ちよの顔を思い出すと胸がつぶれそうだった。もう眠ってしまおう……。
どれくらい眠っていたのだろう。子どもの声で目が覚めた。池のまわりはすっかり変わっていた。学校ができていた。夕方、おばあちゃん先生がひとりでやってきて、じっと池の中を見ている。眼鏡の奥の目に見覚えがある気がした。「コケマル、もういないの? わたしよ、ちよよ」おばあちゃん先生は池に飛びこんだ。昔のちよに戻ったんだ。ちよが言った。「子どもたちを見守ってね、ずっと」
感想・レビュー・書評
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がっこうかっぱのイケノオイ0ともいえる話。日本が戦争中に疎開してきたチヨと小かっぱが出会う。都会から来たチヨは疎開先で意地悪されたり、孤児になったり…。戦争による悲しさと小かっぱとの友情。 終わりがいい!泣いてしまった。すごくいい児童書だった。
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タイトルそのまま『がっこうかっぱのイケノオイ』のかっぱの生まれたエピソード。
著者山本悦子さんの平和の願いがこめられたお話でもあります。
小学校3年生ぐらいからおすすめ。
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村の池にすんでいた小さなかっぱが、ある日ちよという女の子に出会いました。ちよは都会から「そかい」して来た子で、村の子どもにいじめられていました。
ちよは毎日小さなかっぱに会いに来て、学校のいろんな話をしてくれました。そしていっしょに学校へ行こうと言ってくれましたが‥。