ブッシュの戦争

  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (483ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532164379

作品紹介・あらすじ

なぜ、戦争を起こすのか-?開戦の決断をめぐるホワイトハウスの暗闘と、CIA、軍の秘密作戦の実態を米国を代表するジャーナリストが圧倒的取材力で描く全米No.1ベストセラー。

感想・レビュー・書評

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  • 9・11直後からアフガン戦争、そしてイラク戦争が現実味を帯びてくるあたりまでの、ホワイトハウスの政策決定過程を描く。
    閣僚たちのやり取りを中心としながらも、場面の切り取り方が上手で、まるでドラマのようだった。

    この本を読んで今までと印象が多少なりとも変わった人物は、ブッシュ大統領。
    意外と冷静にものごとを考えていたり、他の人間が見落としている大事な点をきちんと把握していたり、堂々巡りの閣僚会議でポイントを押さえた指導力を発揮したりする。
    アメリカ大統領だけあって、良かれ悪しかれ覚悟と決断というのはちゃんとできているのだなと感心した。
    それに比べて、チェイニーとラムズフェルドは読後もやっぱり好きになれない。
    特に、最初からアルカイダやタリバン以外に戦線を広げようと固執しているラムズフェルドは、ひとりだけとても異常に映る。
    パウエルは最初から最後まで、戦争内閣のなかで孤独な存在として描かれている。
    これを読むと、そもそもどうしてこの人がブッシュ政権に入ってしまったのだろうかと首を傾げたくなる。

    政策決定過程という点でも、この本は面白い。
    世界最大の権力の中枢で、しかも過去最大の攻撃を受けた直後にもかかわらず、なんだか拍子抜けするような、どこにでもありそうな内容の会議が延々と続く。
    戦争をするかどうかという一大決定プロセスは、単なるその辺の会社の話し合いとそれほど違わない気がする。
    全体的には、みんな落ち着いて仕事しているのも印象深い。
    日本が同じような状況になったら、政治家もメディアも国民も無駄に大騒ぎして、まったく余裕のない態度で生きているだろうと思う。

    のめり込むようにずっと読み進めることはできるが、冷静になって考え直したときに引っ掛かったのは、「なぜアメリカがそんなに憎まれてしまったのか」ということを、ブッシュたちが問い直そうとはしていない点だ。
    この本を読む限り、彼らにそんな問題意識はまったくなかったのではないかとすら思う。
    あの時期にそれは無理だったかもしれないが、アメリカは常に善であり正義であるというところから抜け出せない限り、結局アメリカは、複雑なものごとの一面しか見ないで、根本解決には程遠い結果しか得られないのではないか、と思った。

  • ふむ

  • アメリカのみならず全世界を驚愕させた9.11同時多発テロ。
    時の大統領は子ブッシュ。同時テロ多発テロ発生直後から、
    子ブッシュ政権の3カ月を詳細に追っている。

    オサマ・ビンラディン率いるアルカイダのせん滅、ひいてはその
    テロ組織を匿うタリバンへの攻撃を目的としたアフガニスタン
    侵攻作戦は国防総省vs国務省の闘いでもあった。

    安全保障会議や大統領抜きの長官級会議でのラムズフェルド
    とパウエルの対立の構図は興味深い。

    大変だったろうな、パウエル国務長官は。ラムズフェルドは
    国防総省の制服組と対立して、アフガン侵攻の具体案を
    提示出来ないのに、調子のいいことばかり言うんだから。

    支援物資の投下と空爆を同時に行うなんて発想は子ブッシュ
    ならではなんだろうな。「アメリカはタリバンに苦しめられている
    アフガンの人たちを解放しに来たんですよ~」っていう表明
    なんだよね。結局は、長期間に渡ってアフガニスタンの一般の
    人々を苦しめることになるんだけどさ。

    アフガン侵攻当初からテロ支援国家としてイラクを攻めたかった
    チェイニー副大統領をはじめとしたタカ派たち。初めは「イラク
    じゃない。アフガンだ」と言っていた子ブッシュも、最後はイラク
    戦争にGOサインを出しちゃうんだよね。

    本書の中で経過する時間は僅か3カ月。でも、アメリカの政治物
    の常で話で超大作である。

    著者はニクソンを大統領辞任に追い込んだ『大統領の陰謀』の
    共著者である「ワシントン・ポスト」の記者ウッドワードなのだが、
    少々筆が甘いのは子ブッシュが大統領就任中に出版された
    からか。もっと辛口な批判があってもよかったと思うのだが。

    アメリカは正義の為に戦う。でも、それは全世界共通の正義
    とは限らない。アメリカはいつになったら気がつくのだろうか。

    尚、ライス大統領補佐官、パウエル国務長官、ラムズフェルド
    国防長官それぞれの本が我が家では積みっぱなしになっている。
    さて、いつ読もうか。汗。

  • 2003年刊行。◆アフガニスタンにおける米国の対アルカイダ戦争について、同時多発テロから百日間のアメリカの政策決定を、関係者からの証言等から再現したもの。◆開戦決意に至るまでの様子はなかなか興味深い。国防総省はアフガンでの闘争を予定していなかった点、対イラク戦争はブッシュ就任の相当前から研究が進んでいたこと、ウサマ・ビン・ラディンは仮想敵の一つであったことなどがわかる。ブッシュ政権におけるライス大統領補佐官の調整は、本書を読む限り政権維持に不可欠だったし、パウエル国務長官のリアリストぶりもわかる。
    一方、ラムズフェルド国防長官は、当初よりイラク戦争へ政策を誘導しようとしていた観があるが、本書ではその理由が判然としない。本書の記述では、突っ込んだ聴取・調査がされていると考えにくい。これは、チェイニー副大統領以上である。どうしてなのかは、巷で言われているように対イラク戦争における利権の問題なのだろうか?さらに、イラク開戦の大義名分の一たる大量破壊兵器の存在は、アフガン開戦時前後では、いまだ根拠・証拠に乏しいことも明瞭に描写されている。
    ちなみに、著者のボブ・ウッドワードはこの種の書籍、つまり、時の権力者やその周辺からのインタビューを通じ、その戦争の大義などを描く書をいくつか出している。もともとウォーターゲート事件の暴露本で名を成した著者だが、パパブッシュのあたりの書になると、政権への批判的精神が薄れ、御用書と化している感はある。

  • [絶ゆ間なき決断]2001年9月11日、全世界を震撼させたアメリカ同時多発テロにブッシュ大統領を始めとするアメリカの政策決定者達がどのように対応したかを徹底的な取材に基づいて記した作品。ブッシュ大統領自身に対するインタビューも数回にわたり行われており、当時の内実を伺い知る上で有用な一冊です。著者は、これまでも数々の政権の内幕に迫っていったボブ・ウッドワード。原題は、『Bush at War』。


    同時多発テロからアフガン戦争、イラク戦争に至るまでを中心として描かれているのですが、政権が直面した課題の数々、そして戦争に突入するまでの意思決定の様子が知り得、大変勉強になりました。対テロ戦争とは何かを巡り、ラムズフェルド国防長官やパウエル国務長官が繰り広げた議論は、今日的にもいまだ重要性を保っているのではないかと思います。


    また、ブッシュ大統領が語った内容についても、巷間で語られている彼のイメージとは異なるものが数多くあり、「おっ」と思わせるものがありました。大統領が果たすべき/果たし得る機能であったり、対テロ戦争における人道的支援の役割についての率直な大統領自身のコメントは、さすが直接インタビューをして言質をとったなと思わせてくれるものがありました。

    〜自由や人権、そして子に対する親の愛といった価値観がある。我々が外交政策や軍事行動を策定するに当たってとても大切ななことは、我々が作り上げているように、そういった価値の作り手であると見受けられないようにすることだ。〜

    ブッシュ大統領の自叙伝も読んでみようかな☆5つ

  • 9.11から約100日間のブッシュと閣僚たちの動向、アフガニスタンでの特殊部隊の作戦などを丹念な調査でまとめたルポ。
    お馬鹿で間抜けなブッシュと思っていたけど意外とまともだったり(ごめん)、かなり早い段階からタリバン政権後のことを考えていたり、知らないことが多く興味深く読めた。
    難点を言えば、あまりに直訳っぽい翻訳。
    今時元の英語の構造がわかるような(あー、that使って長くなってるのねとか)翻訳はちょっと・・・。

  • P483

  •  最悪の大統領などとボロボロに言われているブッシュ大統領だが、この本を読むことによって彼なりに信念をもって行動していたということがよくわかった。この本は情報量を重視したせいか、非常にボリュームがあるのだが、その分読みにくくなっている。気楽に読めるような物ではないのが残念であった。

  • 資料として読んだけれど、物語としても充分読み応えのある一冊。ボブ・ウッドワードの情報量が素晴らしい。

    ブッシュの印象がガラリと変わった。
    開戦の意思決定は単なる感情の発露ではなく、アメリカの信念と戦略の上にあったことが分かる。
    ラムズフェルドのイラクに対する執着。RMAによって精密化されたミサイル攻撃で、戦争を起こすリスクが劇的に減ったからか、軍事力行使を待ち望んでいたようだった。極度の心配症っていう感じもしたけれど。
    パウエルが終始アウェーだった。
    可哀想にと思ってしまう。

    何はともあれ、これを読んだら少しアメリカの上官たちに同情というか共感してしまえるのが恐ろしい。
    でもやっぱりこの人たちは、なんでアメリカが嫌われるのかとか、アメリカにも悪いところがあったかな?とか1ミリも考えていなかったんだな、と思う。

  • 2008/12/22 読了 ★★★★
    2010/07/20 読了

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著者プロフィール

米国を代表するジャーナリスト。1943年生まれ、イェール大学卒。50年間にわたりワシントン・ポスト紙の記者、編集者を務め、ニクソンからバイデンまで歴代大統領を取材・報道しつづけている。
ウッドワードは同紙の社会部若手記者時代に、同僚のカール・バーンスタイン記者とともにウォーターゲート事件をスクープし、ニクソン大統領退陣のきっかけを作ったことで知られる。このときの二人の活動から「調査報道」というスタイルが確立され、また同紙はピュリツァー賞を受賞した。ウッドワードはその後も記者活動を続け、2002年には9.11テロに関する報道でピュリツァー賞を再度受賞。
『大統領の陰謀』『ブッシュの戦争』『FEAR 恐怖の男』『RAGE 怒り』など、共著を含めた20冊の著作すべてがノンフィクション書籍のベストセラーリスト入りを果たしている。そのうち14冊は全米№1ベストセラーとなった。現在はワシントン・ポスト紙アソシエイト・エディターの責にある。

「2021年 『PERIL(ペリル)危機』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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