昨日までの世界 上: 文明の源流と人類の未来

  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (414ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532168605

感想・レビュー・書評

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  • 今まで読んだダイアモンドの作品とは一線を画している様な気がする。

    この作者がずっと研究してきた伝統的社会との比較を通じて、現代社会への問題提起をしている。
    どれが正しいとか間違っているとかの判断を下そうというものではなく、哲学的な色が強いかな。
    恐らく晩年に達している作者は、自分の研究から得た考えを集大成的する意味合いで作ったと思う。それだけに作者の強い思いが伝わってくる。


    自分と他者とを区別する境界線から始まって、「平和と戦争」・「子育てと高齢者」についての考察が上巻の内容。
    作者のいうところの工業化社会に属している自分にとって、全く別の価値観(伝統的社会の価値観)を提示することで、自分たちの考えを俯瞰して冷静に見ることができる。
    こういう風に自分の価値観をひっくり返す作業は、頭を柔らかくするには一番な気がする。


    個人的に面白かったのは終盤の高齢者の位置づけと価値の話。
    特に高齢化社会が今後も進んでいく日本としては、作者が提示する高齢者の価値(子育て・経験の共有・高齢だからこそできる仕事)は暗い問題に対する希望になり得るんじゃないだろうか。

    下巻への期待も込めて星四つで。

  • 1

  • 歴史

  • 『銃・病原菌・鉄』の著者ジャレド・ダイヤモンドの新作である。ふたたびニューギニア等の伝統的社会を取り上げ、健康、子ども、高齢者、言語、宗教、交易、生命への危険、紛争解決、「われわれ」と「見知らぬ他人」との関係といった、人類に普遍的なテーマを紹介し、我々現代社会人も、伝統的社会から学ぶべきことがあるのではないか?といった示唆を与える本である。文句なしに★★★★★である。

    たとえば、現代社会で売買に当たるものは、伝統的社会では互酬的な物々交換でなされるが、それは人間関係の構築に多いに役立っている。伝統的社会では、紛争を解決するために法律を持ち出さなくても、やはり互酬的に解決する。伝統的社会の子どもたちは、現代社会の子どもたちよりも、はるかに社会性を身につけ、情緒は安定し、自信に満ちあふれ、自律している。

    <目次>
    日本語版への序文
    プロローグ 空港にて
    第1部 空間を分割し、舞台を設定する
     第1章 友人、敵、見知らぬ他人、そして商人
    第2部 平和と戦争
     第2章 子どもの死に対する賠償
     第3章 小さな戦争についての短い話
     第4章 多くの戦争についての長い話
    第3部 子どもと高齢者
     第5章 子育て
     第6章 高齢者への対応ー敬うか、遺棄するか、殺すか

    2013.03.05 くまざわ書店で見つける。
    2013.03.08 予約
    2013.05.06 読書開始
    2013.05.17 読了
    2018.03.08 社内読書部で話題にする。
    2018.03.17 「本って「いいね!」練馬 de 朝活」で話題にする。

  • 【要約】


    【ノート】

  • 昨日までの世界(上)―文明の源流と人類の未来

  •  ジャレド・ダイアモンドの文明論的ノンフィクション最新作。前作『文明崩壊』から7年ぶりの一般向け新著だ。
     帯に、マイケル・シャーマーという科学史家が次のような讃辞を寄せている。

    《19世紀、ダーウィンは『種の起源』などの3部作で世界の歴史と自然に対する認識を一変させた。これから1世紀先の学者たちはジャレド・ダイアモンドの3部作――『銃・病原菌・鉄』『文明崩壊』『昨日までの世界』――に対し、ダーウィンの3部作と同等の評価を下すだろう。壮大なる本書は、世界の歴史と自然のみならず、人類の「種」としての運命も描いている。ジャレド・ダイアモンドは現代のダーウィンである。》

     この評価が妥当なものか、それともヨイショしすぎなのかは判断しかねる。が、私にとっても、この3部作はいずれも知的興奮に満ちた第一級の作品であった。

     前2作が文明の曙以後の歴史をおもに扱っていたのに対し、本書は文明以前の原始社会・部族社会をおもに扱っている。
     タイトルは、“人類史的スケールで見れば、文明の曙は「つい昨日の出来事」みたいなものだから、文明以前は「昨日までの世界」だ”というほどの意味。
     本書は、「昨日までの世界」(文明以前の世界)と「今日の世界」(現代文明)をテーマごとに対比させ、人類が文明を築き上げることによって何を得、何を失ったのかを浮き彫りにしたものなのだ。

     歴史そのものを鷲づかみにするような壮大なスケールは、ダイアモンドの著作の最大の特長である。本作も、スケールにおいては前2作以上といえる。

     ただ、本としての密度は前2作より一段落ちる印象を受けた。3部作すべて、邦訳版は上下2巻組だが、本作はよけいな枝葉を削って1冊にまとめるべきではなかったか。

     たとえば、第3章ではニューギニア高地に住むダニ族の「戦争」(部族間闘争)の模様が延々と描写されるのだが、冗長だと感じた。「ダニ族の戦闘にはかくかくしかじかな特徴がある」と、数行にまとめればすむ話である。本書は学術書ではなく一般書なのだから……。我々一般読者にとって、ダニ族の闘い方をこと細かに知ったところで、なんの意味もない。

     東大教授の佐倉統が『日本経済新聞』で本書を書評していて、その中で「正直なところ、ダイジェスト版が欲しいと思った」と書いていたが、私もそう思った。本書の場合、上下あわせて約800ページは長すぎる。

     が、途中に冗長さがあるとはいえ、本書もじつに面白い本ではある。

     各章では戦争・個人間の紛争解決・子育て・高齢者への対応・宗教・食と健康などの普遍的テーマが取り上げられるのだが、それぞれ、独立した論考として高い価値をもつ内容になっている。
     たとえば、「高齢者への対応」がテーマとなった章は、人類史を鳥瞰して高齢者問題をとらえた類のない論考であり、これからの高齢化社会を考えるためのヒントがちりばめられている。

  • 狩猟採取社会や首長部族社会などの伝統的社会と現代の国家的社会を比較する。狩猟採取社会は人間が現代のような社会を形作る以前の何万年と進化してきたものだ。その社会で採用されている風習は進化の波に洗われてきたものといえる。伝統的社会との比較による知見をこれからのわれわれの政策に生かすことを目的にしたという。

  • 伝統的社会の観察結果から、文明を考察する、ということらしいが、正直疑問。

  • あまり面白くないかな

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著者プロフィール

1937年生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校。専門は進化生物学、生理学、生物地理学。1961年にケンブリッジ大学でPh.D.取得。著書に『銃・病原菌・鉄:一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』でピュリッツァー賞。『文明崩壊:滅亡と存続の命運をわけるもの』(以上、草思社)など著書多数。

「2018年 『歴史は実験できるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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