市場の倫理統治の倫理

  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (452ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532191764

感想・レビュー・書評

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  • 市場の道徳は「暴力を締め出せ、自発的に合意せよ、正直たれ、他人や外国人とも気やすく協力せよ、競争せよ、契約重視、創意工夫の発揮、新規・発明を取り入れよ、効率を高めよ、快適と便利さの向上、目的のために異説を唱えよ、勤勉なれ、節倹たれ、楽観せよ」

    統治の道徳は「取引を避けよ、勇敢であれ、起立遵守、伝統堅持、位階尊重、忠実たれ、復讐せよ、目的のためには欺け、余暇を豊かに使え、見栄を張れ、気前よく施せ、排他的であれ、剛毅たれ、運命甘受、名誉を尊べ」

    この二つの道徳律はともに人間社会を維持するために発生したもので、相補的な関係にあり、この二つを都合よく混交した時に腐敗、すなわち倫理的な失墜が生じるのだという。

    なるほどとは思いはしたものの、ずいぶんと都合の良いというか単純化しすぎた話だとは、この本の前半を読んでいて思った。
    とくにプラトンの国家のような対話篇で進むので、なんか鼻白むという感じもした。

    なので、1年ぐらい放置していた。
    たまたま古本屋で買ったのだけど、図書館で借りた本だったら、返却して思い出さなかっただろう。

    他に読むものがなかった時に続きを読んでみたのだけど、本の後半ぐらいから、かなり豊富な実例を上げてケーススタディをするところから、けっこうすごいことを言っている気がしてきた。
    低評価をしていたのはもったいない。
    (あと、あとがきを読んでからはじめて、訳者が実はすごいエコノミストだってことに気がついた。)

    無論、批判はある。この分類は境界事例に弱い。
    あからさまな悪徳がなぜ制度的に発生してしまうのかという場合の説明には向いているが、悪徳の「あからさま」さのジャッジに関して、本書は独断的であり、「なぜそれを悪徳だと判断したのか」については、詰めが甘いと思う。もっというと独断的だ。

    何事についても境界事例や例外はあるものだから、そこに拘泥するよりも、明白な正義がどのようになされるかや、明白な不義がどうして存在してしまうのかについて、つまり価値判断はアプリオリであるようなマジョリティについて説明するのが大事だといってしまえばそうなるし、それがプラグマティズムってものかもしれない、とは思う。
    (実際の所、書名に倫理とはいっているが、えらくプラグマティズムあふれる本だと思った。)

  • 訳が硬い。英米文学和訳本を普通に読んでいる人なら問題ないだろうけど。しかし、商業活動と政治活動の同居に関する、ジェイコブズ一流の珠玉の仮説群は非常に素晴らしい。石器時代の芸術発祥については僕は異論がある。

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著者プロフィール

Jane Jacobs(ジェイン・ジェイコブズ):
1916~2006年。アメリカ、ペンシルベニア州スクラントン生まれ。都市活動家、都市研究家、作家。1952年から10年間「アーキテクチュラル・フォーラム」誌の編集メンバーとなる。1968年にカナダに移住し、同国トロントで他界。40年以上にわたり、アーバン・プランニングに対抗してコミュニティに基盤を置いた革新的な方法を擁護した作家である。一九六一年の著書『アメリカ大都市の死と生』は、数世代にわたるプランナーとアクティヴィストを元気づけながら、都市の内部でうまくいっていることうまく行っていないことに関するおそらく最も影響力のあるテキストとなった。

「2018年 『ジェイン・ジェイコブズ都市論集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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