般若心経入門: 生きる智慧を学ぶ

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  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532192372

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  • ”ひろさちやさんが、般若心経とはなにかについて、日常会話調で語りかけながら解説をしてくれる一冊。

    個人的には、子どもの頃から法事で唱える機会があり、気になっていた般若心経。
    これまで2冊の解説本ではいまひとつ腹落ちしなかったが、この本でいくつか印象に残る記述に出合えた。

    ・ベースにある「布施」の考え方 =(譲った方がお礼を言う、「本当の布施」はできないから申し訳なく思う)
    ・「他人に迷惑をかけるな」ではない → 「他人に迷惑をかけているのですよ」
    ・「いまある、このままの自分に満足する」「こだわるな」「ゴム紐の物差し、から、ほとけさまの物差しへ」「修行の途中でも利他の働きかけを」。
    ・最後の呪文「羯諦。羯諦。波羅羯諦。波羅僧羯諦。菩提薩婆訶」の意味=(わかった、わかった、ほとけのこころ。すっかりわかった、ほとけのこころ。ほとけさま、ありがとう)

    日常生活で最後の呪文が言える瞬間がないのか、意識していくことにしよう。


    <読書メモ>
    ・一つのケーキを二人で分けて食べて、そのほうがおいしいと思えるこころ??それが布施のこころです。(p.15)

    ・『般若心経』が教えていることといえば、そんなことはどちらだってかまわないということです。そんなことにこだわるな??というのが『般若心経』の教えです。(p.27)
     #頭髪が全部抜け落ちて見るも無惨な姿になって生きるのか、人間らしい姿のままで死んでゆくのか の比較から。

    ・『般若心経』のいちばん重要な部分といえば、いま挙げた「色不異空。空不異色。色即是空。空即是色」のところですね。
     (略)
     もっと簡単にいえば、「物は空だ」ということです。これが『般若心経』の言いたいことです。(p.34-35)

    ・譲ったほうがお礼を言うのが布施です。そういう布施を、あなたが常日頃から実践していると、ゴム紐の物差しがうまく使えるようになって、一千万円のお金を見ても、たとえそれが百万円であっても、「わぁー、すごい大金!」と思えるようになるのです。(p.42)
     #ゴム紐の物差しが必ずしも悪いってわけでもないってことか。物差しが小さくなれば、測る対象は大きくなる。ようは使い方。

    ★どうすれば、わたしたちはゴム紐の物差しを捨てられるでしょうか……?それは、わたしたちが、「いまある、このままの自分」に満足すればいいのです。いまある、このままの自分が、ほとけさまのくださったものだと気づき、それに満足できれば、たちまちわたしたちは幸福になれるのです。(p.50)
     #いまある自分に満足できない“餓鬼” の話につづく。

    ・菩薩というのは、簡単に言ってしまえば、「仏(ぶつ)に向かって歩みつづける人」です。仏というのは、もちろん悟りを完成させた人です。その仏の教え(仏の教えが仏教ですね)を学んで、仏に向かって歩んでいる人が菩薩です。(p,56)
     #あなたもわたしも菩薩。新米の菩薩、菩薩の赤ちゃん。

    ・観音さまは、音を聞くのではなしに音を観るのです。溺れている人が「助けて??」と救助信号を叫ぶ、その口元をじっと観ておられます。そうしてその口元が救済信号を発すると、すぐさま救済に駆けつけられるのです。(p.60)
     #だから「観」「音」

    ・場合によると、観音さまはあなたに救助の手を差し伸べてくださらないこともあります。それはなぜかといえば、あなたに泳ぎをおぼえてほしいからです。溺れることによって、あなたは泳ぎをマスターできるのです。あなたが溺死するような人間でないことを観音さまは知っておられて、しばらくあなたを溺れさせておかれるのです。(p.62)

    ★「老師、どちらを先にすべきですか?お教えください」と、聴衆の代表が言います。結局、降参したのですね。「そうじゃな、わしであれば、近くにいるほうから先に助ける」。これが禅の考え方です。禅の智慧です。(p.65)
     #差別するな、こだわるな、レッテルを貼るな、レッテルをはがせ

    ・“般若”ということばは、インドのサンスクリット語の“プラジュニャー”(その俗語形が“パンニャー”です)を音訳したものです。“プラジュニャー”(“パンニャー”)は「智慧」という意味です。
     (略)
     智慧は……ほとけさまの智慧。事物を差別せず、こだわりのない見方で見る智慧。(p.72-73)
     #「智恵」は損得の智恵。事物を差別し、その差別にこだわった智恵。

    ★『般若心経』が、「空」だというのは、悲しみは「空」であって、実体がないということです。実体がないものをわれわれが「悲しみ」に仕立て上げて、それを後生大事に保存しているのです。そんな馬鹿げたことはやめなさい??と、『般若心経』はわれわれに忠告してくれているのです。(p.76)

    ・「ほとけさまの物差し」においては、「すべての人が役に立っている」のです。(p.94)

    ・『般若心経』はわれわれに、思うがままにならないことを思うがままにしようとしなければ、ちっとも「苦」ではないんだよ??と教えてくれているのです。(p.99)

    ★あきらめる[明らめる]……物事の事情・理由をあきらかにする
     あきらめる[諦める]……だめだと思ってやめる。断念する。
     #自分にOKを出せないのは自分の弱い部分、だめな部分を正面から見つめる(=明らめる)勇気がないから。

    ・わたしは、この「イン・シャー・アッラー」「イン・シャー・ブッダ」を、「神下駄主義」「仏下駄主義」と呼んでいます。神、仏に下駄を預けて生きていこう……というわけです。(p.105)

    ★ああ、自分は、自分の六根がお釈迦さまと同様にならないうちは、衆生への働きかけをしないつもりでいたが、それは「自利」を求めていたことになる。そんなに高い境地に到達しなくても、「利他」の働きかけのほうが大事なのだ。自分は修行をつづけながら、衆生のために働きかけをしよう。(p.123)
     #最澄のエピソード。世間に出る時期が早くなったが、それはよいいみでこだわりを捨て、本当の意味での「忘己利他(もうこりた)」の精神へ。
     #(参考)六根=目・耳・鼻・舌・身・意

    ・大乗仏教においては伝統的に六つの実践が言われています。
     ?布施波羅蜜
     ?持戒波羅蜜
     ?忍辱波羅蜜
     ?精進波羅蜜
     ?禅定波羅蜜
     ?智慧波羅蜜
     これが「六波羅蜜」と呼ばれるものです。(p.130)

    ・子どもの欲しがるもの(中略)を買い与えるのは、いわば子どもを、「欲望人間」に育てているだけです。本当の布施は、「和顔愛語」だということを、しっかりと知ってほしいのです。(p.161)
     #笑顔の布施 と ことばの布施。
     #特に、親が子どもを100%受け入れて&信じて「ことばの布施」を送り続けることではじめて、代送りが可能になる。
     #「お父さんは、お前の味方だぞ。おまえにどんなことがあっても…」「お母さんは、あなたが大好きですよ。あなたがどうなろうと…」

    ★わたしの施しは布施ではありません。でも、申し訳ありませんが、わたしには布施ができないのです。だから、これで勘弁してください。そのような後ろめたさをもって施しをしろ!そうすれば、それが布施になる。『般若心経』はそう言っているのです。(p.156)
     #本当の布施は、全財産を投げ出すこと。…でも、それはできないから…

    ★仏教が教えているのは、他人に迷惑をかけるなではなしに、わたしたちは他人に迷惑をかけているのだから、他人から受ける迷惑をしっかりと耐え忍びなさい……ということです。
     これが忍辱波羅蜜です。(p.166)
     #インドでは、子どもに対して「他人に迷惑をかけるな」と教えるのではなく、「他人に迷惑をかけているのですよ」と教えるという話とあわせて考えさせられた。

    ・じつは、戎というのは、サンスクリット語では“シーラ”といい、「習慣性」の意味なんです。朝、起きて顔を洗う習慣の人は(略)、旅行先でも顔を洗えないと気持ちが悪い。それはそういう習慣がついているからです。それと同じように、生き物を殺さない習慣を身につけようというのが、不殺生戒なのです。(p.174)

    ・「この子は目が見えない子なんだよ。この子をどの夫婦に預けようか。わたしは迷いに迷った。だが、あなたがた夫婦であれば、きっとこの子を幸せにしてくれるね。わたしはあなたがたを信じて、この子を預けるよ。頼むよ」。それがほとけさまの気持ちです。(p.191)

    ・人間の物差しを捨ててしまえば、おのずからほとけさまの物差しが与えられます。そのほとけの物差しが、般若波羅蜜なんですよ。(p.195)

    ★「羯諦。羯諦。波羅羯諦。波羅僧羯諦。菩提薩婆訶」(わかった、わかった、ほとけのこころ。すっかりわかった、ほとけのこころ。ほとけさま、ありがとう) (p.202)
     #呪(しゅ)=真言、マントラ、神々に対する呼び掛け、祈願の言葉


    <きっかけ>
     第20回 人間塾の課題図書。”

  •  しばらく積読にしていたことを後悔してしまうほど、私にとっては良書でした。私がどうしても理解できない「空」という概念を、「人間のものさし」と「仏さまのものさし」という比喩を用いて易しく解説してくださっています。

     私たち、特に日本人は「人間のものさし」で自分の幸せを測ろうとして、自分だけの幸せを追求しようとしていますが、それでは決して幸せになれないことがよくわかります。「仏さまのものさしで」測れるようになろうと、よい習慣を身につけることが幸せになるための修行です。

     モノを独占すると、豊かになるような気がしますが、限りあるモノは、分配した方が幸せになれます。ひろさちやさんは、そのことを、一つのケーキを分けて食べる兄弟の例え話で示しています。貧しい国では、限りある物資を分けないと、生命すら脅かされるわけです。

     限りある物を独占することが幸せに繋がるという考えは、人間の知恵。限りある物を分け合った方が幸せになれるという考えは、仏様の智慧。人類は、地球から得られる限りある資源を貪ることにで、物質的な豊かさを手に入れ、ゴミになった物資を捨てることによって、地球を壊そうとしている。

  • オススメと言われ、まあ興味本位で読んでみるか程度で手に取るが、良かった。再読すべし。

    【学】
    お布施はあげた人がお礼を言う
    お父さんはあなたにお願いしておきたい。それは、一つのケーキを半分づつ食べて、その方が美味しいと思える人になって欲しい。
    分けてあげた人が、相手に「あなたが一緒に食べてくれたので、美味しく食べる事ができました。ありがとう」と言う。

    病気を治してくれるのは、医者ではない。病気を治すのは人間の内に有る自然治癒力だ。医者はその自然治癒力を高める手助けをしてくれるだけだ。

    不機嫌ほど大きな罪は無い

    他人に迷惑をかけるな!ではなく、あなたは他人に迷惑をかけているのですよと教える
    前者だと、迷惑の量を測るようになり、私はあまり迷惑では無いが、相手は私にすごい迷惑をかけていると感じるようになる。

    子供は親の物ではない。仏様から預かって育てさせていただくもの

  • 【井上み】
    「頑張ること」は我を張ることで必ずしも良くないもので、逆に「いい加減」に生きなさいという著者の発言が一番好きでした。ここでいういい加減は適当にとっちらかす、というような意味合いでなく「お風呂が良い湯加減」と言うときに使う「調度良い加減」のこと。無理に頑張るでも怠けるでもなく、それぞれに合った「いい加減」で生きたいと思う。

  • 「空」とは「ゴム紐の物差し」で事物を測っているという意味。という説明はわかりやすい。エッセイ風だが、『般若心経』のエッセンスは理解できる。

  • 迷ったらサイコロで決めるくらい。
    空とは、どっちでも一緒。
    布施は捨てるつもりでやること。

  • 現代社会の悩みや苦しみを般若心経の智慧を優しく解説し紐解く。般若心経、意味わからない、と思っていたが意外と読みやすく、入門書としてはいいかも。
    以下、個人的なメモ。
    ・1つのケーキを2人で食べて美味しいと思える心が仏の心です。
    ・迷いというのは、迷う必要が無いから迷うのです。
    ・悟りというのはいつでも平気で生きること。
    ・今こうして生きている自分という存在が、すでに仏のくださったもの。
    ・苦というのは思うがままにならないこと。思うがままにならないことを思うがままにしようとするから苦しい。思い通りにならないことは、そのままにしておけ。
    ・席を譲る時は席を捨てろ。
    ・本当の布施はできないと知ることで首が垂れる。謙虚になれる。そしてそれが布施になる。

  • 大乗仏教や般若心経がすべてとは思わないが、
    「智恵」では無く「智慧」を実践できる人間にはなりたいと思った。
    損得にこだわった「凡夫の智恵」ではなく。。。

  • 優しい本
    語り口調で書かれており、スっと入ってくる
    仏教の真のあり方、心のあり方に気付く
    生きにくい日本
    そんな日本を生き抜く心のあり方を教えてくれる
    宗教が好きな人も嫌いな人も一度は読んでもらいたい本

  • 般若心経、仏教の入門書として最適な本

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著者プロフィール

1936年大阪生まれ。
東京大学文学部インド哲学科卒業、同大学院博士課程を修了。
気象大学校教授を経て、宗教評論家として活躍。
「まんだらの会」会長、大正大学客員教授。
著書に、『仏教の歴史』(春秋社)、『釈 とイエス』(新潮社)
『自分が変わる』(世界文化社)、『宗教激突』(ビジネス社)など多数。

「2004年 『釈迦物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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