人はなぜ〈上京〉するのか

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532261436

作品紹介・あらすじ

上昇志向か、漂流なのか、それとも「何気」に?若者たちは何を求めて東京に集まるのか-『坂の上の雲』の時代から、団塊世代の集団就職、ギョーカイ人の時代を経て、『下妻物語』的ジモト志向に至るまで。時代により変遷する上京への社会意識をたどり、人口一極集中の本質を追う、はじめての"上京"論。

感想・レビュー・書評

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    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/691741

  • かつて上京とは上昇志向から来る行動だった。
    しかし、2000年代以降ファスト風土化やネットの普及などにより、"上昇"するのに上京が必要条件ではなくなった。
    いや、それどころか上昇志向そのものもなくなったのではなかろうか?


    地方も「トーキョー化」している昨今、ファスト風土化は地方の「トーキョー化」といえるのではないだろうか(本書195ページ)。
    サイタマのラッパーを例に出した地方の「トーキョー化」に関する考察が興味深かった。



    自分は生まれも育ちも東京であるが、確かに2000年代以降「トーキョー」という特色は薄くなってきていると思う。
    象徴的なのが2010年8月に閉店したHMV渋谷がH&Mになったこと。

    同じ全国展開するチェーン店ではあるが、品揃えなどは渋谷にこなくてはいけないという吸引力を持っていないように見える。

    同じ渋谷でも109はまだその力があると思うし、秋葉原の一部にもあるだろう。

    しかし、それらは特殊なトライブの居心地のよいように特化された特殊例であって、かつての団塊の世代や新人類が抱いていたような東京像とは違う(109、秋葉原の機能を果たすスポットが各地方にもあり、多くの人は底で満足するだろう)。

    冒頭にあげたサイタマのラッパーの主人公IKKUとTOMは同じ埼玉県内の繁華街(大宮、熊谷)にも出ず深谷を"レペゼン"し続ける。

    THA BLUE HERBや餓鬼レンジャーが地方(生まれ育った土地)に根ざしながら全国的な人気を得たという背景もあるが、「ここFukuyaからFuckin' Tokyo、SaitamaからN.Y.まで」と歌う彼らに中央志向はない。

    実際、こういった志向の背景にはネットの普及により、「現場」がWWW上に現れたことによって居住地域によるアクセスの差が生まれなくなったことが多いだろう。

    著者はこうした中央志向はお笑いには残っているとしている。

    これはお笑いが主戦場としているテレビと言うメディアがネット以前の文化であるということなのではないだろうか。

  • 朝ドラの「ひよっこ」って団塊の世代の上京物語だと思うんだけど妙に滅菌された感じが気になっていました。もちろんファンタジーなのでエンタメとしてはそれでいいと思うのですが。と、いうことに改めて気づいたのは永山則夫の東京での最初の働き口が米穀店という記載があり、おっ!ミツオと同じじゃん、と思ったからです。2020年東京での世界的祝祭が終わる時、地方と東京の関係はどうなるのか?地方と東京を繋ぐ〈人〉という血液の血管が〈上京〉という現象だとした時、それは一方的なものであり続けるのか?2020年の問題は団塊の世代がすべて75歳以上になる2025年問題とセットなのだと思います。団塊までのヒートアップな上京とそれ以降のクールダウンな現状と、そしてそのあとの上京情況は?もうちょい考えてみたいです。

  • 上京からジョキョーへ。人口異動にフォーカスした東京の歴史論として面白く読めた。これだけ情報と交通が発達するとワザワザ東京に来る必要もなく、東京に住むのは仕事の都合でしかないく、今後は急速に老人の街になっていくのだろう。
    東京といっても東西南北と中心では結構違うし、一概に語ることもできないのだが、その辺の違いも細かく書かれていたのはよかった。
    有名人のプロフィール紹介でしかない業界編はいらないな。出身によるレッテル張り≒テイストの違いという識別は必ずしも間違いであるとは思わないし、良し悪しではあるけど。
    高等遊民の4パターン「資力の有無と国家・反国家」も面白いのだが、ある程度の資力がないと遊民生活はできないのではという疑問も。
    「東京は掃除機」という比喩が印象に残った。

  • 「日本の総面積の0.6%にも満たない東京都に総人口の10%以上がひしめいている」のには驚いた(゚ロ゚ノ)ノ 上京への意識変化を世代別に読み解く「上京論」。

    Why do people want to come to Tokyo? The reason is different according to generation

  • 「人はなぜ〈上京〉するのか」難波功士
    社会学新書。特になし。
    棚分類-ohd

    明治維新後の志士の上京から、ゼロ年代のジョーキョーまで。
    タイトル通りに、(日本の東京人以外の地方の)人はなぜ上京するのか、という視点を、分かりやすくまとめています。
    僕自身は1980年代生まれの東京近郊育ちなので、上京という感覚は馴染みがありませんでしたが、第5章「グダグダのローカリティ」に一番の共感を受けるかも。
    著者はゼロ年代のジョーキョーは、「何気」と表現しています。
    自分の感覚としても、「とりあえず東京」ですね。

    読み物として面白かったです。(3)

    -----
    以下メモ。
    郊外あるいは地方都市から集まった我々が、東京に棲み着けないながらも、トレンドとか社会とかを指向してるの、面白い。

    ぼくはターミナルが好きです。東急渋谷駅、残念だなあ。

    p220. (営団の丸ノ内線・銀座線はやや別)→ああもう、その通り!笑

  • 明治初期からゼロ年代まで、〈上京〉の系譜を辿る野心的な一冊。各時代の状況に即しつつも、東京は人を吸い寄せ続けた。これは上京の歴史であると共に、地方人を吸い込んで駆動する〈東京〉の歴史であり、〈世界システム論〉ならぬ〈日本システム論〉でもある。(平林緑萌)

    ▼『ジセダイ』140文字レビューより
    http://ji-sedai.jp/special/140review/20120208.html

  • 『東京に住むっ♪』冗談半分、照れ隠しの本音半分にそう宣言して
    『本気で上京しようかしら。。。』なんてぼんやり思っていたら、こんな本を見つけちゃうから、
    だから本って面白いよね。

    私が欲しかった『答え』は
    この本には載ってなかったけれど
    いろんな時代の、いろんな人たちの上京への想いが見れて
    なんだか楽しかった。

    『なんとなく』上京したい私は
    なんだかんだ、現代人なのかもなー。って感じたりした。

    何はともあれ
    ネットが普及しても
    サブカルはやっぱり東京!?

    東京に何かを求めてるわけでも
    東京で何者かになりたいわけでもないけれど
    高い家賃はバカげてるし
    苦労なんてさらさらしたくはないけれど

    『やっぱり人生一度は行っておいてもいいかも?』

    なぁんて、かる~いジョーキョー思想を固めてみたりするのでした♪

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著者プロフィール

【編者】難波功士(なんば・こうじ)
1961年大阪府生。関西学院大学社会学部教授。博士(社会学)。『広告で社会学』(弘文堂)、『社会学ウシジマくん』(人文書院)、『メディア論(ブックガイドシリーズ基本の30冊)』(人文書院)など。

「2023年 『吉見俊哉論 社会学とメディア論の可能性』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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