ソニー再生 変革を成し遂げた「異端のリーダーシップ」

著者 :
  • 日本経済新聞出版
4.12
  • (135)
  • (173)
  • (63)
  • (9)
  • (3)
本棚登録 : 1372
感想 : 140
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532324124

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 平井氏は日本の大企業の元社長とは思えない爽やかな印象。異見を大事にすること、現場のエンジニア一人一人と話をすること、相手が話しやすいように気を使うこと等参考になった。
    オンとオフを明確にし、趣味には没頭する、自分の人生を生きるというロールモデルでもあるように思う。

  • 最高傑作! 三度の企業再生を実践し、成功させた経営者はいない。
    アンチ権威主義 本質を洞察し シンプルな結論 決断と実行そして責任を取る
    この30年日本の停滞が言われて久しいが、結局「経営者の問題」。
    コンプラ・ガバナンスと言っているうちに、本質からどんどん乖離してしまった。

  • 日立を変えた異端児の物語(69歳の再登板)に続いて、SONYを変えた異端児の物語(子会社採用、そして帰国子女の抜擢等)であります。前任社長が英国人という事もあり、英語が母語(バイリンガル)の平井さんにはチャンスがあった、という事かも知れませんが、危機に際しては、異端児が求められる、というのは、日立であれ、SONYであれ、変革への定石なのでしょうか。先日、亡くなった出井さん(危機に直面した社長)が変えようとして、変えられなかったSONYの文化(ジリアンテットのよればサイロ文化の塊の会社等)をどう変えたのかは、読んでいても、良く判らない。危機を抜けたSONYが、本当に変わったのか、平井退任後の道筋を気にしつつ、読んだ次第です。

  •  思えば、この時から40年以上も後にソニーのかじ取りを託されるまで、私は「異」なる場所を転々と動き続けてきた。常に「異なるもの」の見方や考え方に触れ、それを経営に取り入れようとしてきた。それを私は「異見」と呼んだ。
     異見をどう発見するか、どうやって経営戦略に昇華させて実行させるかは、私の経営哲学の根幹をなす思考法の一つだ。
     重要なのは、異見というものは、こちらが待っていれば勝手に舞い込んでくるものではないということだ。リーダーの立場にいる者が能動的に動いて発見しなければならない。よく経営者はコミュニケーション能力が高くなければならないと言われる。それだけではなく、私は知能指数を示す「IQ」ではなく「EQ」、すなわち心の知能指数が高くなければならないと考えている。「この人なら考え方が違っても自分の意見を聞いてくれるはずだ」と思ってもらえなければ、本心からの「異見」を得ることはできないからだ。
     特に社長のような肩書を持ってしまうと、なかなか異見を言ってもらえなくなるものだ。そんな信念があったから「EQが高い人間であれ」と自らに言い聞かせてきた。

     実際に、次世代プレイステーション 4の計画はまだプレイステーション 3のコストダウンにもがき続けていた2008年に始まったのだが、私は最初からCellのような独自アーキテクチャの半導体は開発しないと決めていた。自社で夢の半導体に積極的に投資するのではなく、資金はソフトウェアやユーザーエクスペリエンスにつながる部分に重点的に回そうと決めていたのである。それはプレイステーション 4の立ち上げの時に強く主張した。

     今でもこの時の危機対応はソニーにとって大きな教訓になっていると思う。思わぬ危機に直面した場合、多くのケースですぐに100%事態が把握できているということはないだろう。
     そういう時に会社としてできることは、不完全でもいいから現時点で分かっていることを誠実に伝えることだと思う。もちろん不完全であることを包み隠さず。さらに重要なのは、「次はいつまでに」と期限を区切って情報をアップデートしていくことだ。その都度、説明する。最初から完全な情報とはいかない代わりに、回数を重ねて丁寧にアップデートできた情報を説明していく姿勢を明確にするのだ。

     豊田さんと言えばもうひとつすごいなと思うのが、レーサーのライセンスを取得して「豊田章男社長」ではなく「モリゾウ」という名でレーシングカーのハンドルを握ってコースを走り、実際のレースにも出場されているということだ。日本の自動車メーカーのトップで、いや世界の自動車メーカーのトップでここまでやる人が他にいるのだろうか。
     この「インボルブ感」が大事なのだ。「モリゾウ」がヘルメットをかぶってつなぎのレーシング服でハンドルを握っている。もう、その姿だけで社員たちへの強烈なメッセージとなる。「この人は本当にクルマが好きなんだな」と、口に出してそう言われなくても十分に伝わるというものだ。これには素直にすごいなと思わされた。私の言葉に置き換えれば「臨場感が一体感を生む」ということになる。そしてもうひとつ、大きな効用がある。
    「リーダーは自社の商品やサービスの一番のファンであれ」
    これも私がよく口にする言葉だ。
     豊田さんはそれを誰が見ても一瞬で理解できる方法で伝えているのだと思う。もちろんパフォーマンスではなく本当に心底、クルマがお好きなのだろう。そうでなければ、あそこまで命懸けのことはできない。

     研究開発というものは思い通りに進むことばかりではないので、進捗がない時もある。それでもいい。大事なのはこちらの期待を伝えること。そして、エンジニアたちのがんばりに対して「ちゃんと見ているぞ」と示すことなのだ。その人間関係を構築できるか。その積み重ねだ。だから年に一度の定期訪問のような儀礼的なものではダメなのだ。

     大切にしてきたそ 異見とは読んで字のごとく、異なる意見のことだ。どんなに優秀な人でも、あるビジ ネスのすべてを知り尽くすことなど不可能だ。たとえ何かの分野に精通している人でも、 思いもしなかった新しい発想が、他の人の発言をヒントに浮かんでくるということは 往々にしてあるのではないだろうか。

    「異見を言ってくれるプロ」を探し出して自分の周囲に置くことは、リーダーとして不可欠ではないかと思う。そのためには自分自身が周囲から「この人はちゃんと異見に耳を傾けてくれる」と思われるような信頼関係を築く必要がある。それと同時にリーダーが責任を取る覚悟があることを言葉に表して、また行動で示す必要がある。そうでなければ「異見」は集まらない。

    ソニーにとって商品は、ステージに上がるアーティストと同じように

    ならないものなのだ。

    吉田さんには見をぶつけてくれたことに感謝しつつ、それでもこれはやるから! と言って押し切った。重要なのは「責任は私が取る」と明言することだ。 吉田さんが素晴らしいと思うのは、互いに異見をぶつけ合った。 一度やると決め てしまえばなく実行に移してしまうことは食い違ってこそ止する。「解」 を見つけたなら、先送りなどせずにすぐに実行あるのみである。

     ものごとを決めていく過程で互いに異見をぶつけ合うこと、そしてそれができる雰囲気を作ることは私にとってはマネジメントチームを運営する上での大原則となる。その前提になる心がけが三つある。
     第一に、リーダーはまずは聞き役にすること。私は会議ではなるべく発言しないようにしていた。特に冒頭はなるべく発言しない。最初は「この人はエレクトロニクことが分からないから話さないのかな」と思われたようだが、そんなことはお構いなしだ。私は分からないことがあれば正直に分からないと言う。それより冒頭で発言を控えるのは、リーダーの立場にある人間が話し始めると、その場にいる人たちがどうしても聞き役に回ってしまうからだ。リーダーが発言しないと、時にはシーンとして妙な空気になるが「間」を恐れず、まずは異見が言いやすい雰囲気を作ることが先決だ。そのためにはリーダーは黙ることも必要なのだ。
     第二に、区切ること。私は結論の出ない会議というものが嫌いなのだが、一度の会議で結論が出ないこともある。そんな場合は「いつまでに何をアップデートする」とその場でしっかり決めてしまうことだ。
     第三に、これがリーダーの役割になるのだが、最後はリーダー自身の口で方向性を決めること。そして、一度決めたらぶれないこと。「私が責任を持つ」とストレートに伝えることだ。

  • 私はソニーに関心を持たなくなって久しいが、復調しつつあるソニーがどういう経緯を辿っているのか、ちょっと興味があった。
    平井氏は入社はCBSソニーで、エレクトロニクスが本業のソニーでは完全に傍流の方でした。しかし本業が振るわない中、プレイステーションが大当たりし「ちょっと手伝って」となる。それがただの手伝いに終わらず米子会社の立て直しに始まり、プレステとともに歩んでソニー社長になる。この本で何度か言及されているが、一貫してIQよりEQを重視するやり方で、人を動かしてきたのだろう。
    この方のソニーでの経緯が描かれているため、ソニーの他の事業分野についてはわからないことばかりだが、社内昇格でこのような方がトップに就くという点では、会社は健全だと言ってもいいと思うが、かつての輝いていたソニーを考えると、まだ再生は道半ばだと思う。現時点でも、会社全体が時流に乗りきれていない感が否めない。
    第一線を退いた後は、子供の貧困や教育格差の解消に注力されるとのこと。私はむしろ、平井氏が今後その分野でどのように活動されるのかに興味がある。

  • 仕事をする上での心のバイブルになった一冊。
    文書も読みやすくて楽しみながら平井さんの経営哲学を学べる。
    PlayStation1から4までの開発裏話も知れて大変興味深い。

  • とても参考になります。平井さんの人柄の出た口調で読みやすく、社長として、リーダーとして、一人間として今後の社会人生活の参考になります。
    知ったか振るのではなく、分からないことは分からないと伝え、相手から教わる姿勢。社員と同じ立場に立って異見を聞く。リーダーとして、方向性と最終責任を持ちつつ、部下が仕事をしやすい環境作るなど、当たり前の事ですが、このソニーという巨大企業で実践し、結果を残すことは並大抵ではないでしょう。社長と聞くと、上り詰めて悠々自適なイメージがありますが、改めて会社で一番苦労している方という印象に変わりました。
    今、ソニーが復活しているのは平井さんの立て直し所以なのでしょうか。とても参考にしたい歩み方です。
    ただ、現在のソニーの業績が平井さんによる改革の所以なのかどうかが最後まではっきりしませんでした。そこは自分で調べるということでしょうか。

  • 読みやすい語り口で一気に通読。SONYをどのように赤字から脱したかをその生い立ちから振り返る。EQの高い経営者として社員のやる気を引き出すリーダーシップについて繰り返し言及されている。一消費者として外から見ていた側としては、あんなことやこんなこと、確かにニュースで聞いてたけれど、その裏にこんな決断があったのか、、、と知ることができた。SONY製品好きならより楽しめる本だと思います。

全140件中 121 - 130件を表示

著者プロフィール

1984年に株式会社CBS・ソニー(現 株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント)入社。1995年よりゲーム事業の北米責任者を務め、2007年に株式会社ソニー・コンピュータエンタテイメント (現 株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント) 社長 兼 グループCEO就任。2012年4月にソニー株式会社 社長 兼 CEOに就任し、ソニーグループ全体のビジネスを牽引。2018年4月より2019年6月まで会長を務める。2019年6月よりソニーグループ株式会社 シニアアドバイザーに就任。2021年4月、自ら代表理事を務める一般社団法人「プロジェクト希望」を設立。著書に『ソニー再生』(日本経済新聞出版社、2021年)。

「2022年 『THE HEART OF BUSINESS(ハートオブビジネス)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

平井一夫の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×