財政破綻後: 危機のシナリオ分析

著者 :
制作 : 小林 慶一郎 
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532357733

作品紹介・あらすじ

○日本の債務はついに1,000兆円の大台を突破。いまや、財政破綻は「起きるか、起きないか」ではなく、「起きたらどうなるのか」「どう危機をしのぐのか」を考えるべき時に来ている。デフレが終わり、金利が上昇期を迎えれば、財政赤字問題が一気に悪化する懸念があるからだ。「財政破綻」が実際に起こったら日本経済は一体どうなるのか? どのような危機対応策をとるべきなのか。

○本書は、「財政危機時のトリアージ」、財政破綻後の「日本銀行の出口戦略」「年金改革」「公的医療と介護」「財政と成長政策」などの重要課題を取り上げ、日本経済・財政の再生への道を探る。

〇切迫した状況のもとで、国家の運営に支障を来さないように何をするのか、何を守り、どう再生するのか。政策の優先順位が厳しく問われるが、そのシナリオ分析は、財政破綻そのものを回避するための方策を考える上でもヒントを提供する。

○編著者の小林慶一郎氏はじめ、小黒一正(法政大学教授、財政・公共政策)、左三川郁子(日経センター主任研究員、金融政策論)、小林庸平(三菱UFJリーサーチ&コンサルティング経済政策部副主任研究員、公共経済学)、佐藤主光(一橋大学教授、財政)、松山幸弘(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹、社会保障)、森田朗(津田塾大学教授、行政学)と、経済・財政・社会保障の専門家が執筆。

感想・レビュー・書評

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  • 財政破綻後の対策と、今後起こさないための構造改革案についてわかりやすくまとめられていた。

    間違ったこと・先送りしたことはどこかで帳尻をあわせないといけないのは個人でも国家でも同じ、ということだと思います。

  • 図書館で借りた。まぁ、財政が危機的なのにまだばらまく連中が議員にいるからな破綻するだろうな

  • コロナ禍における各国政府の財政出動はまさしく異次元のレベルだが日本もスゴイ。よって、財政破綻後の事を真剣に想定しておきたいなと思って、以前に献本頂いていた本作を緊急事態宣言下において読んでみた。内容は財政破綻の定義とそのメカニズムに始まり、それが起きた後の緊急対応(財政トリアージ、日銀施策)と恒久対応(医療・介護制度の再編と財政規律の再設定、予算庁の設置等)の具体的策にかなりの字数を割いて提示している。そして最後はナイトの不確実性や時間整合性問題などに触れたうえで、人類の長寿命化における財政の世代間格差問題を新しい社会契約論で刷新していくことを提唱して終わっている。

    これを読んでの感想は2点。1つは財政破綻から破綻後の再生局面においては個々人の「健康」がとても重要になること(多くの医療機関等が破綻し、医療・健康サービスを受けれなくなる。)これは今のコロナ禍においても言えることなので、コロナ禍から財政破綻が連続する現象になるならば健康を維持し続けることが極めて重要な要素になりそう。

    もう1つは財政の世代間格差問題は、結局は「同世代互助」に仕切り直さない限り、人生百年時代においては書中にあるような新しい社会契約は理想的過ぎて難しいのではないかということ。これは政治家にはぜひ検討いただきたい。

    とにかく、「健康」の価値に改めて気づけたのはよかった。財政破綻までもう少し時間はあるだろうから、運動したり、食べるものに気を使って、備えるぞ。

  • 人口減少が進み大幅な経済成長が期待できない中、膨大な政府債務が累積しており、今すぐにではないにしても、日本の財政が持続可能でなくなる、すなわち、いつか破綻する可能性は低くないと考えられる。本書は、財政破綻が起こるとき、日本社会に何が起きるか、また、財政破綻の「後」の社会を立て直すためにどうすべきかを論じている。
    本書における「財政破綻」の定義は、国内外の市場の投資家が日本国債を買わなくなるという事態が発生することを前提に、インフレ率又は名目金利が高騰する状態であるとする。
    財政破綻後の対応としては、➀歳出の執行停止・先送りなど直後の対応、②歳出削減を含む「止血措置」、③財政赤字を作らない体質(構造)への展開に向けた「構造改革」があるとした上で、特に最初の2つの段階においては、歳出面において何を残し、何をカットするかをあらかじめ決めておく「トリアージ」が必須となると指摘している。また、長期の財政再構築として、ミクロ的な措置=歳出・税制の効率化が重要であり、赤字が膨らんだときの対処をあらかじめ「財政ルール」として定めることを提言している。一方、財政再建を進める中でも、社会の分断等を防ぐために、弱者を救済するセーフティーネットの整備も必要だと指摘している。最後に、財政破綻を防ぐための経済・政治思想的な議論も行っている。
    財政破綻の可能性を提起する論者を「狼少年」に喩え、本書のような議論を馬鹿にしたり、忌避したりする向きも少なからずあるが、東日本大震災における原発事故の教訓があるように、将来起きる可能性が少しでもあるのであれば、「最悪の事態」を想定して政策議論をしておくことは、たいへん意義のあることだと考える。
    また、現状の「国債のパラドックス」とも呼ばれる国債残高が累増しているにもかかわらず国債金利が低水準で推移している状況は「危うい均衡」であり、国債への信認を変化させるような何かをきっかけ(国債を国内の金融資産で支えられなくなったとき等)に財政危機につながりうるという本書の見立ては、納得のいくものであり、その点でも「財政破綻への備え」は必要だと感じる。
    本書で示される財政破綻後の措置や財政破綻を防ぐための処方箋は、いずれも厳しいものではあるが、目を背けてはならないと思う。

  • 2019/10/19-2019/11/13
    大学の研究費削減のニュースから、日本はすでに財政破綻していると言う話になって、読み始めた。
    図書館にあった財政破綻の本としては最も冷静そうだと思ったし、実際そうだった。
    正直、基本的には政策立案者のための本だと思った。財政破綻時になにが起こるのかよく分からなかった。しかし、政府がなぜあの政策をしているのかと言うのが分かる。この本の中で政策が提言されて、政府も少しは着手しているというパターンが多い。ただ、国民が財政に関心を持つ必要性が強調されている。
    第三章以外は理解できた。第三章はすごく難しい。バランスシートの知識がないと無理。

    景気が良くなると金利が上がり、財政破綻しやすくなるらしい。
    テールリスクという言葉を知った。起きた時が怖いから、今消費を控えようと思わせるリスクのことだ。財政破綻のリスクで、日本の不況の4分の1ほどが説明できるという。平成以降に直面している、災害や失業のリスクを合わせたら、全部説明できないか?
    あと「フリーランチは存在しない」というのが経済の鉄則だという。ゲームに課金しようかしら。

  • そもそも財政破綻が起こる論拠がイマイチ理解できなかった(この本は財政破綻後の施策にメインテーマを置いているから当然かも知れないが。)。
    MMTを齧ったりして、日本に財政破綻はあり得ず、デフレ脱却のための積極財政こそが肝要 という論者の主張に強く共感していたが、気づけば、財政破綻論者の主張を直接勉強したことがなく、積極財政派の論者批判的に論じる内容ぐらいしか知らなかったので、きちんと勉強してみようと思った次第で読み始めた。
    結論から言うと、まだまだ勉強不足でよくわからなかった。
    ・国家債務残高が膨れ上がると将来の増税を見越した消費控えが起こるから経済も縮小する (将来の増税ではなくインフレによる債務残高の相対的減少とGDP増加に伴う税収増が生じるまで債務返済しないだけで問題ないのでは)
    ・日銀の国債買い取りは、本来であれば上昇していたはずの国債金利を下げているため、民間が得られていたはずの金利を奪う意味で間接的な税負担のようなもの(むしろ日銀が買ってもらうことを見越して低金利でも市中銀行は国債を買うのでは。根本的に他に資金需要がないことが問題では)
    ・国債金利が暴騰→日銀引き受けで乗り切る→どんどん市中にお金が出る→コントロール不能になってハイパーインフレ (他に資金需要が十分に出てくるから国債の金利が上がるのであって、その場合、日銀引き受けでしのぐのではなくて国債償還で経済引き締めに向かうのでは)
    など、深いところを理解できていないため、他の財政破綻論者の書籍も引き続き読んでいきたい。

    ただ、方法論としての、役所内に未来の住民の主張を代弁する部門作るとか、現在の公的病院の状況(再編整理が必要)など、面白いことも知れた。

  • 財政破綻は「今そこにある危機」
    日本人よ覚悟を持て!という内容です。

    本書は、元日銀総裁の福井俊彦氏らの支援で
    書かれただけに、背筋が凍る程の恐ろしい内容
    です。

    みなさんも是非一読を!

  • 日本が財政破綻したと仮定して、その後どのようなことが必要か論じた本。
    財政破綻して欲しくはありませんが、このような議論を行うことは有益だと思います。

    各界の論客が論証を試みており、読み応えがありました。

  • きっと財政破綻をするであろう日本経済のその先を知りたくて読み始める。いろんな専門家の方がいろんな立場で、各章を書いておられるので、文体とかも違って多少読みにくいですが、参考になる部分は多かったです

    とはいえ、結局のところ、じゃどうやって身を守ればいいのというのはよく分からないというのが現状で、一昔前の韓国やその他の国の事例を知りたいなと思った昨今でしたw(2018.10月中旬読了)

  • いまいち。財政規律は大事ですよ、以上のメッセージが読み取れない。個人的には年金と高齢医療費の大幅カット、高齢者の労働力化、道州制の導入、国債利払いの凍結あたりを順番つけてやるしかないと思うのだが。危機を前にして国債市場の機能不全とか、はっきり言ってどうでもよいところをgdgd書かれるのは退屈だ。。。そんな人は読んじゃいけない本なのだろう。
    中国に国を盗られるか否か、沖縄や北海道が独立するか、なんて話が本筋なんじゃなかろうか?
    日本の医療、皆保険制度(4章)を考えるのは糸口としていいと思った。透析患者は1ヵ月サービスがストップしたら死んじゃうわけで、その痛みは直接的な引き金になりうる。

    追記:
    日本の財政破たんでIMF管理下に置かれる、とか、意味が分からない。危機の事例にギリシャやアイスランドあたりを持ち出すのも木を見て森を見ずの議論。坂の上の雲の時代と今とでは日本の財政規模が全く異なり、何かあったとしても他国からは日本で何とかしてくれよ、と言われて終了だ。(=大きすぎて助けられない)
    国としては、食糧・エネルギー保障、安全保障をどう考えるかが主。次に内需を如何に維持して他国に迷惑を掛けないか。そのためには世代間の不均衡こそどうにかすべきだが、、、皆先送りする気満々なのだろう。
    現在の日本は大枠ストックリッチ。他は人的資源しかない。そのためには、社会的なストックを最大限に活用しながら人を働かせるしかない。
    納税番号が出来たのは1つ目の布石。2つ目は日本円の電子化だろう。これで不労所得を薄くしつつ、働いている限り豊かに生活できるコンセンサスを得るのがこれからの行政の在り方じゃなかろうか。
    世代間不均衡の話については、昔の納税者だけが投票できる仕掛けを復活してはどうだろう?

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著者プロフィール

法政大学経済学部教授。
1974年生まれ。京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。1997年大蔵省(現財務省)入省後、大臣官房文書課法令審査官補、関税局監視課総括補佐、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。経済産業研究所コンサルティングフェロー、鹿島平和研究所理事、キヤノングローバル戦略研究所主任研究員。専門は公共経済学。

「2022年 『日本経済 30の論点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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