- Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
- / ISBN・EAN: 9784535555891
作品紹介・あらすじ
先進国は、みずからが発展途上にあるときに採用しなかった政策と制度を、なぜ途上国に強いるのか。ミュルダール賞・レオンチェフ賞受賞の名著、待望の完訳。
感想・レビュー・書評
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国際開発系の大学・大学院では参考本としてよく取り上げられており、読んでみたいと思っていた。
現在の先進国が途上国に要求している政策・制度は、先進国自身が成長過程で利用してきた政策・制度とは異なるものであり、先進国が自分たちに追いつかれないようにする「はしご外し」なのではないか、という論旨。
実際、ほんの100年程度昔は、先進国も現在では考えられないような政策・制度を利用している事を知り、自分の無知さにも驚いた。
筆者が勧める歴史的アプローチの重要さにも気づかれた。
本書が執筆されてから、アメリカを中心とする自国主義が復活したり、製造業を飛ばしてIT産業が発展するなど、大きな変革が起きている。
現在の世界を筆者がどのように捉えているかにも、とても興味がある。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
先進国がどのように発展してきたかの歴史を振り返ることで、現在先進国が途上国に強いている政策の妥当性を問う一冊。とてもわかりやすい一方で、じゃあ今途上国が、17~19世紀の途上国がやっていたことを繰り返して、成長するかなというと疑問でもある。実際中国韓国インドはそうやって伸びてきた!と言われるとそうですか、と思うけど…?グッドプラクティスを闇雲に途上国に押し付けることの愚かさについては賛成。またその多くが無邪気な善意から来ているというのも頷ける。東南アジアの発展もめざましく中南米も同様。次は南アジア、アフリカと広がっていくと思ってる私は楽観的すぎるのかなぁ~
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東アジアの奇跡。介入主義的政策により、経済発展に成功した日本、韓国、中国。
発展途上国が介入主義的政策をするのを邪魔してる。ハシゴ外し。
海賊版の映画、音楽で育った韓国が、韓国の映画、音楽の海賊版の規制をしている。 -
現在の先進国も発展途上時には産業・貿易・技術政策を通じて自国の幼稚産業を保護していたにも関わらず、今は発展途上国に自由市場・民主主義を押し付けるのは、現代版の植民地政策・不平等条約だという主張。関税・産業保護、民主主義、官僚、司法制度、所有権・知財、銀行、労働等々いろいろな面で、今の先進国が発展途上だった頃は今の中国や途上国より未成熟だったことを調べ上げている。かつてアメリカではヨーロッパの特許をそのままパクッて申請できたというのは笑える。ただ論文のような構成で主張・事例・論理を展開していくので流し読みになってしまった。
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現在先進国が批判する経済発展の政策ーすなわち保護主義は、先進国自身が発展途上にある時点では「良い」政策と見なされていたものである。実際のところ、彼らを比較すると各国が同じように保護主義によって経済発展を遂げたことが明らかである。
筆者は経済学の歴史的アプローチを駆使し、上記の例を挙げながらこれを批判する。すなわち、先進国は途上国が彼らの位置まで登ってこないように「はしご外し」を行っているのだと。
具体的には、現在の「良い制度」「良い政策」といわれるものは二つである。すなわち、「自由化」と「良いガバナンス」である。
現在の新自由主義の潮流において、先進国は途上国が保護主義を取り入れることに対して、こぞって批判を行う。しかし実際には、先進国は自分自身が発展途上にあるときには共通の政策を取り入れていた。すなわち、幼稚産業保護に代表されるITT政策である。言うまでもなく、これらの政策は現在「悪い制度」と言われているものである。
また、「良いガバナンス」に関しても、筆者はこれを先進国の経済発展の原因ではなく、結果として形成された制度と主張する。従って、今日の発展途上国にとってどれだけ必要かが明瞭ではない。
私が筆者に共感を持てるのは、ただ単にこれらの例から先進国を批判し、従属論やマルクス主義のように思考停止に陥るのではなく、そこから問題解決に取り組んでいる点である。
具体的には、良い政策とは正しいタイミング(時代)に取り入れられてこそ効果を発揮するものだということである。
それでは、途上国は何をするべきか。筆者のメッセージは「歴史を理解せよ」である。かつて先進国が頼っていた制度と、現在の制度との間にある溝を理解し、これからの時代においては、過去の方法とは異なったアプローチを用いるべきであるということだ。
基本的には私は筆者の意見に賛成だ。例えばイラクやアフガン戦争においても、欧米の「民主主義」という絶対的な倫理を植え付けた結果、それに対する反発が発生し、現在に至っているとも言える。
また、アジア通貨危機にように新自由主義には急速な発展効果を与える反面、大規模な危機を引き起こす可能性もある。従って、筆者が主張するように、「開発の初期段階においては保護主義を取り入れ、自国産業の増強に努めるべきだ」という考えはかなりの正当性を持つだろう。 -
本書の主張は、先進国は善意からか悪意からか、自国の発展の歴史は棚に上げて、発展途上国の発展を自由貿易や特許制度や高くつく高度なガバナンス等を強要することによって妨げているというもの。英国や合衆国等を例に挙げて、先進国が発展途上であったときに幼稚産業を高い関税などによりいかに保護したか、知的所有権の保護制度の導入が遅かったこと、不完全だったこと、有限責任性が一般的ではなかったこと、普通選挙の実施にはかなり時間がかかったこと、所得税法が合衆国で憲法違反として撤廃されたり、英国で当初反対が強く、導入に時間がかかったことなど、幅広い観点から歴史をたどることにより例証し、現在先進諸国が発展途上国に強要していることは、「はしご外し」(kicking away the ladder)だとする。啓発的で面白かった。
日本語で「はしごを外す」というと、他の人が上ったはしごを外して降りられなくするということだが、ここでは先に上った人がはしごを蹴り外して他の人が上れなくするという意味で使われており、表紙の絵はぴったりなのだが、日本語書名は訳語としてはやや違和感がある。 -
本書は、開発経済学を専門とし、
現在は、ケンブリッジ大学准教授である著者が、
開発援助のあるべき姿を提唱する著作です。
保護主義の撤廃、知的財産法や独占禁止法の制定、児童労働の規制…など、
先進国は発展途上国に多くの政策・制度の制定・実施を求めています。
著者は、かくいう先進国がその発展過程でどのような政策を採用してきたのか、
そして、それらの急速な導入が途上国の経済発展を阻害することを示し、
そうした要求が時期尚早であることを指摘します。
それぞれの国、それぞれの時代に適した政策がある…
という一見するとあたりまえの主張を、資料に基づき実証的に展開するとともに
何のための開発援助なのかに、読者に再考を促す本作。
難解な経済学の数式などは登場しないので
開発経済学に関心のある方はもちろん
国際問題に関心をもつ多くの方に読んでいただきたい著作です。 -
ワシントン・コンセンサスの求めるガバナンス改善要求は、先進国人身が発展段階で導入していた制度と比較して高度すぎるばかりか、発展に必要だった制度の導入(幼稚産業保護など)に反対しているとしている。
理論を否定するわけではなく、19世紀などの先進国の事例から学ぶものであるため、現在の途上国にそのまま適用することはできないが、途上国の発展段階にあわせた制度をしなければならないという主張は理解できる。