チンチン電車と女学生: 1945年8月6日・ヒロシマ

  • 日本評論社
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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784535584259

作品紹介・あらすじ

男たちは戦場へ行った。少女たちがチンチン電車を運転した。そして8月6日の朝がやってきた。いまよみがえる「チンチン電車被爆秘話」。

感想・レビュー・書評

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  • 「戦争で男がおらんなるでしょ。その代わりに女の子らが運転したらしいんです。」

    当時14,5歳だった女の子たちの稀有な体験は、ある人には古き良き思い出であっても、ある人にとっては心の中にそっとしまっておきたい記憶でもあった。
    でも、広島でテレビ報道記者をしていた堀川さんの「女学生たちがチンチン電車に乗務したという事実を埋もれさせたくない」という熱意が、70歳代にさしかかった元女学生たちの心の扉を少しづつ開いていった。

    広島電鉄家政女学校に通い車掌や運転士を体験したFさんは、電車を運転中に1945年8月6日午前8時15分を迎えた。車体が盾となったのか、幸い目立った傷はなかった。でも、堀川さんとの出会いがなければ、体験を他人に伝える決意に至らなかったかもしれない。

    …Fさんは原爆投下後の混乱のなか、はからずも一人で故郷に帰ることになり、被災した級友の看護にあたれなかった。
    「私ら、生きとるということが、亡くなられた人に対して申し訳ない。私一人も救護してないでしょ。…でもね。家政女学校のみんながね、死んだ人を看たって言われたら、ものすごい胸が痛みますよね。…広島が好きだったから、みなさんが頑張られたのに、私は何もしなかったという引け目はありますよ、今でも。どんな事情で帰ってもね。…」「年寄りがと思われるかもしれないけど、もういないんですから、私たちが話さないとね。だから…動けるあいだは平和の大切さを伝えていくのが、私らの義務じゃと思うからね。」

    Fさんの長い告白は、大震災などのつらい記憶をもつ現代の私たちの心にも大きく響き、人に言えない悩みをかかえて苦しんでいる多くの人にとって、強い力を与えてくれるものと思わずにはいられない。
    (2011/8/6)

  •  私は小2まで広島市で育ち、チンチン電車はよく乗りました。堀川惠子、小笠原信之両氏による「チンチン電車と女学生」(2005.7)は、1945年8月6日・ヒロシマを描いたノンフィクションです。被爆した70両のチンチン電車に乗務していた運転士・車掌の7割が14~17歳の少女たちだったこと。戦局がつのり、男性乗務員が次々と戦地に取られてぽっかりと開いた穴を、少女たちが懸命に埋めていたこと。綿密な取材に基づく、チンチン電車秘話の核心に迫る書です。

  • 2021/09/03

  • 戦争には始まりはあるが
    戦争には終わりがない

    いつも思うことである

    たいがいのことは経験して初めて
    自分事になっていくことであるが
    この「戦争」だけは絶対に
    経験したくないことである

    それだけに
    「戦争」にまつわる
    優れたドキュメントはしっかり
    語り継がれていかなければならない

    広島に今でも走っている
    「チンチン電車」の73年前の史実を
    丁寧な聞き取りと
    綿密な調査によって
    その当時の日本の状況
    その当時の日々の暮らし
    その当時の人々の考え方
    その当時の人々の様子を
    甦らせていくとともに

    どこまでも、冷静な
    どこまでも、心に響く
    戦争は絶対にいけない!
    のメッセージとなっている

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著者プロフィール

1969年広島県生まれ。『チンチン電車と女学生』(小笠原信之氏と共著、日本評論社)を皮切りに、ノンフィクション作品を次々と発表。『死刑の基準―「永山裁判」が遺したもの』(日本評論社)で第32回講談社ノンフィクション賞、『裁かれた命―死刑囚から届いた手紙』(講談社)で第10回新潮ドキュメント賞、『永山則夫―封印された鑑定記録』(岩波書店)で第4回いける本大賞、『教誨師』(講談社)で第1回城山三郎賞、『原爆供養塔―忘れられた遺骨の70年』(文藝春秋)で第47回大宅壮一ノンフィクション賞と第15回早稲田ジャーナリズム大賞、『戦禍に生きた演劇人たち―演出家・八田元夫と「桜隊」の悲劇』(講談社)で第23回AICT演劇評論賞、『狼の義―新 犬養木堂伝』 (林新氏と共著、KADOKAWA)で第23回司馬遼太郎賞受賞。

「2021年 『暁の宇品 陸軍船舶司令官たちのヒロシマ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

堀川惠子の作品

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