火: 散文詩風短篇集

  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560042229

感想・レビュー・書評

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  • 某古書イベントで見かけ、野中ユリの挿画に惹かれて衝動買い。鉛筆であちこちに線が引かれてあったのに後で気づいた。綺麗にできないかなー。安直に消しゴムを使っていいものか。

    散文詩風短編集。主にギリシア神話を素材とした「或る内的危機の報告書」。著者の内的なものが第一にあり、遥かな神話の定形を面影程度の下塗りに、詩的飛躍とアナクロニズムの眩惑を交えながら、未知の懐かしい物語に仕立て上げている。各作品は短いながら、絶えず乱反射するイメージのおかげで、読む感触はとてもハイカロリー。これは余白多めの造本がふさわしい。
    近頃はイーリアス関連を読んでいただけに、アキレウス篇とパトロクロス篇に特に心をつかまれた。女装のアキレウスのアンドロギュノス像と、死せるペンテシレイアにパトロクロスを重ねたアンドロギュノス像の美と崇高。アキレウス篇ではミサンドラとの共犯関係も目を惹いた。彼女もまた勝者なのだと思う。
    アイギストスとの姦通、夫殺しの罪を自ら語るクリュタイムネストラ篇も白眉。

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著者プロフィール

1903年ベルギーのブリュッセルで、フランス貴族の末裔である父とベルギー名門出身の母とのあいだに生まれる。本名マルグリット・ド・クレイヤンクール。生後まもなく母を失い、博識な父の指導のもと、もっぱら個人教授によって深い古典の素養を身につける。1939年、第二次世界大戦を機にアメリカに渡る。51年にフランスで発表した『ハドリアヌス帝の回想』で、内外の批評家の絶賛をうけ国際的な名声を得た。68年、『黒の過程』でフェミナ賞受賞。80年、女性初のアカデミー・フランセーズ会員となる。母・父・私をめぐる自伝的三部作〈世界の迷路〉――『追悼のしおり』(1974)、『北の古文書』(1977)、『何が? 永遠が』(1988)――は、著者のライフワークとなった。主な著書は他に『東方綺譚』(1938)、『三島あるいは空虚のビジョン』(1981)など。87年、アメリカ・メイン州のマウント・デザート島にて死去。

「2017年 『アレクシス あるいは空しい戦いについて/とどめの一撃』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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