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- Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
- / ISBN・EAN: 9784560073735
感想・レビュー・書評
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これはある超人の日記であり、文化人類学の教科書でもあるだろう。
最近「ホワイトアウト」を読んで雪に対する恐怖感を目の当たりにできた気がしていたのだが、本書に比したら戯画に堕ちてしまうだろう。何しろこちらはほぼノンフィクションだろうから。
だいたい、なんの設備も持たずヒマラヤ越えなど可能なのだろうか?本書で著者は何度も死にかけている。十分な食料も持たず、防寒着もつけず、自らの信念だけでマイナス何十度の生き地獄を何千キロもの気も遠くなるような冒険へ、彼を駆り立てたものは何なのだったのか?それは仏教への信仰心ひとつだ。
同じ日本人という概念では彼を捉えられないだろう。医学等博学な知識や、恐ろしいほどの体力は超人に値するが、性格は変人に近い。その地金を表す文体は恐ろしく下手糞であり、途中何度か目にする和歌などはあまりにヘタ過ぎてこちらが恥ずかしくなるほどだ。彼のエゴイスティックな部分が文中よく垣間見られ、現地の人たちからも変人扱いを受けている。また、現地の人々を露骨に差別し、卑下するような気配も感じられる。まさに文化人類学のテキストのようではないか。
未踏の地に光を灯す部分だけが彼の業績なのではない。
戦前の日本人のもつ純粋な探究心や克己心、なにしろその不屈の闘志に感銘をうける。
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