図書室からはじまる愛

  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560080733

作品紹介・あらすじ

1941年、インド。お嬢さまとして何不自由なく育ったヴィドヤは、尊敬する父親が重いけがを負ったことで生活が一変、苦しみの日々を送るようになる。しかし、禁じられた図書室にしのび込んだことから、希望を見いだしていく…。2009年全米図書館協会「ヤングアダルトのためのベストブックス」ボストン作家協会賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 1940年頃のインドを舞台にしたお話。
    イギリスの圧政の中、ガンジーの教えである非暴力不服従を体現して生きる父。迫り来る日本兵の攻撃を前に戦地へ向かうことを決意する兄。カースト制度や様々な差別に疑問を持ち学ぶ道に進もうとする妹。家族それぞれの生き方を尊重し優しく見守る母。彼らの物語を読むことで自分の生き方を見つめなおし、これからの世界について思いを馳せることができた。
    先の戦争で、日本も他国の大勢の人々を苦しめた。そのことは事実として心に留めておかなければならない。その上で、平和な世界を目指して、新たな関係を築いていくために、お互いに尊重し合って努力を重ねる。
    最近の世界情勢を見ていると、ポピュリズムや自国第一主義が勢いを持ち、よくない方向に世界が傾いているような気がする。
    次はガンジーの自叙伝を読もう。

  • 禁じられた図書室で見つけたのは、本だけではなかった。

    ヴィドヤは女。
    だから家の二階に上がってはならない。
    食事は男性に給仕したあと。
    学校ではスポーツなどもってのほか。
    歌の練習はいつかの旦那様のため。
    生理のときには軟禁。

    そんな生活の中、二階にある図書室だけが救いだった。


    インドが舞台、しかも女性差別が激しい時代の物語を読むのは初めてかも。
    制度にイライラしながらも、先が読みたくなる。

  • 「1941年、インド。お嬢さまとして何不自由なく育ったヴィドヤは、尊敬する父親が重いけがを負ったことで生活が一変、苦しみの日々を送るようになる。しかし、禁じられた図書室にしのび込んだことから、希望を見いだしていく…。2009年全米図書館協会「ヤングアダルトのためのベストブックス」ボストン作家協会賞受賞。」

  • 第二次世界大戦禍1941年のインドが舞台。インドのカーストや男尊女卑、そしてイギリスの支配下での生活。日本のインド侵攻についてもインド目線から書かれる。

  • インドのカースト制、男尊女卑根深いのね…

  • 舞台はインド、女は嫁に行き家族に尽くすことだけが許され、それこそが幸せであるという古い考えの親戚の家で暮らす、学問を愛する少女が、家の図書室に出入りするようになり、生き方を変えて行くという話。
    親戚の家に行くことになったきっかけがショッキングなのだけど、インドの歴史と深く関わってもいることでシビアでも描いて良かったと思う。
    そこからの展開は少し甘いようにも思えたけれど、YA向けの味付けというところもあるのだろう。
    少女の祖父の描き方が良かった。
    原題は「階段を上って」だそうなのだけど、邦題は随分またロマンチックにしたものだと読んだ後で驚いた。
    そういうところも確かにあるけど…。

  • 1941年、インド。
    独立運動が激しさをましてゆく時代、カーストや、女性差別的なしきたりが横行していた時代(これはもしかしたら、現在も)、第二次世界大戦直前のインド。

    医者の娘として、お嬢様として何不自由ない毎日をおくるヴィドガヤ。そして自由で革新的な思想を持つ父を尊敬していたヴィドガヤ。自分を守り、一番の理解者であり、大好きだった父のように、ヴィドガヤも革命の闘志になろうかとさえ思う。
    そんな時、抗議デモに偶然 居合わせてしまった二人。
    デモに参加しようとするヴィドガヤを止めようとして、父は行進の中に入った。さらに白人警官に辱めと暴力をうけている女性を助けるべく、非暴力でたちむかおうをして、自らは負傷する。そう、頭を強打されたため、しゃべることも、介助なしに生活することもできなくなってしまったのだ。

    ヴィドガヤたち一家の生活は一変した。マドラスの祖父の家で一緒に暮らすこととなったのだ。
    長男一家が家を継いでいる祖父の家は、古いしきたりを守る、厳しい家で、ヴィドガヤたちは親戚ではあるものの、やっかいもの扱いで、女性たちは長男の妻である叔母の言うことが絶対であった。



    独立運動が盛んだったころのインド。裕福な家でもある、厳しいしきたりや差別。
    そんな中、2階につくられた図書室には、東からの本もたくさんあり、若い頃の父や、ヴィドガヤの心を癒した。

    2階は男性しか行けない・・・そんなしきたりを超えて、女であるヴィドガヤは図書室への出入りを許してもらい、女だって勉強したい、結婚して夫につかえるだけなんて嫌だと思う。

    この本を通して、
    はじめて知ったインドの事がたくさんあります。
    イギリスを憎み、独立運動をしつつも、
    東から来るものが悪いものばかりではない、と父が語っていたというのも良かったし、
    非暴力だけではどうしようもない、
    日本が真珠湾攻撃をして、日本やドイツに政略されたくないからイギリス軍に志願する兄というのも、気持ちはわかる。

    複雑に いろんな思いが入りまじった時代。
    いい小説だった

  • あとがきによると、実際の原題は「階段をのぼって」あるいは「階段をのぼるということ」というらしく、読み終わってみるとそちらの題名の方がピッタリだと強く感じられます。男性しか行くことの許されない2階。2階にある図書室。図書室に行くための階段。「図書室から」とありますが、実際はもっと前、1階と2階を行き来する男性だけのものである「階段」から、見えない境界線があることが話の中で描かれています。そこを一歩踏み出したことではじまるのはむしろ主人公ヴィドゥヤの戦いというか、挑戦ではないかと思ってしまいました。(様々な考えのもと行動する人の中で、主人公が支持した考えはあくまで「非暴力」だったことから、「戦い」とはせず、「愛」と訳したのかなぁと後から思いました。)

  • 小説を読みながらインドの身分、家制度などを知ることができた。
    訳も上手なので、違和感なく読めた。ただ、タイトルはしっくりこない・・・。

  • イメージ的にはインド版アンネの日記みたいな。戦争中だったからですかね。
    自由に本を読みたい、女性だけど勉強がしたいと思うヴィドヤを私も尊敬しなくてはと思いました。

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著者プロフィール

インド、チェンナイ生まれ。母親の影響もあって若い時からCWC(The Concerned for Working Children)というNPO組織にかかわり、恵まれない子どもたちのために活動している。CWCは2012年、2013年、2014年にノーベル平和賞にノミネートされている。
19歳でアメリカへ渡り大学で海洋学を専攻。作家としてはYA作品を4冊出しており、そのうち”Climbing the Stairs”(『図書室からはじまる愛』白水社刊)は2009年全米図書館協会「ヤングアダルトのためのベストブックス」に選出されている。

「2020年 『橋の上の子どもたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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