哲学 (文庫クセジュ 944)

  • 白水社
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (162ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560509449

作品紹介・あらすじ

フランスで人気の哲学者、コント=スポンヴィルならではの知見がちりばめられた入門書。哲学とは何か、長い歴史を通じてどのように展開してきたか、を述べるとともに、六つのテーマに即した思考の具体例を紹介する。哲学の魅力をわかりやすく語った好著。

感想・レビュー・書評

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  • 今までで1番納得できた哲学書だった。

  • 哲学

  • 原書名:La philosophie

    序論 哲学とはなにか
    第1章 哲学とその歴史(哲学史と科学史;古代哲学;中世哲学;近代哲学;現代哲学)
    第2章 領域と潮流(形而上学の大きさと諸限界;認識の哲学(「私はなにを知りうるのか」)
    倫理と道徳の哲学
    政治哲学
    芸術の哲学
    哲学と人文諸科学(「人間とはなにか」))
    結論 哲学と叡智

    著者:アンドレ・コント=スポンヴィル(Comte‐Sponville,André, 1952-、フランス、哲学)
    (1952-)
    訳者:小須田健(1964-、神奈川県、哲学)、照屋裕美子(1971-、哲学)、コリーヌ・カンタン(Quentin, Corrine, 1959-、心理学)

  • 本書は、折り目だらけになりました。
    グッときた言葉に出会ったページには折り目を付けるようにしているのです。
    なんと言っても、「言葉に込められた力」が本当に素晴らしかった。

    そして、前半部のスピード感が素晴らしい。
    この分量で哲学の歴史を並べて見せたのは、神業と評して良いと思います。
    しかし、けっして雑な文章ではなく、必要な部分を抽出し、再構築した感じです。
    その再構築された塊に、最後の一仕上げとして振りかけられる、著者の言葉。
    その言葉が、冒頭でも書いた、とても力のある言葉です。

    名著、と言ってしまって差し支えないと思います。
    とりあえず、折り目を付けさせた言葉たちを引用しておきます。

    <blockquote>哲学とは、ことばのアリストテレス的な意味での実践[プラクシス]であって、創作[ポイエーシス]ではない。つまり、創造というよりは活動であり、作品というよりは実践なのだ。哲学がそのあるがままのものであるためには、外的な目標など必要ない。哲学はそれだけで充分であり、なにか別の成果をもたらすことがあるにしても、それはたんなるつけたしにすぎない。</blockquote>
    <blockquote>哲学はだれかの独占物ではない。だれもが哲学する権利をもっている。なにしろ哲学する必要はだれにでもあるのだから。ただし、もちろんそれは、そのひとに可能な理性と抽象の程度に応じるかぎりでの話だが。</blockquote>
    <blockquote>私たちが哲学において愛してやまないのは、確実性でもなければましてや懐疑でもなく、思考そのものであるということだ。</blockquote>
    <blockquote>私たちには絶対的に知ることも絶対的に疑うこともできない。</blockquote>
    <blockquote>人間には気晴らしか無しか道がないわけではない。人間が死にゆくものだというのは正しい。だが、人間は――いまここで、それでいて「ある種の永続性とともに」――認識し、行為し、愛することができる。だからこそ、人間は救いあるいは叡智へと開かれているのだ。私たちは生まれつき自由なのではない。自由になってゆくのだ。私たちは永遠になることは出来ない。すでに永遠なのだ。</blockquote>
    <blockquote>哲学するとは、知っているよりもさらにさきまで、知りうるよりもさらにさきまで考えることだ。形而上学に携わることもまた、できるかぎりさきまで、そしてしなければならないかぎりさきまで考えることだ。どこかで足を止めねばならないのだろうか。さもないと、自分が知る以上のことを語ってしまうとでもいうのか。だがそうなると、哲学を頭から断念して、科学を実践するしかなくなり(むろん、科学には知っている以上のことを語る必要はないと素朴に前提したうえでの話だが)、ついには科学が教えてくれることあるいは教えてくれないことについて、みずから問いかけることすらできなくなってしまう。</blockquote>
    <blockquote>人間に「誤りがつきものであること」を強調するからといって、認識の進歩が断念されることにはならない。むしろそこから――肯定的な確実性などそもそもないのだから、「われわれの誤りから教え」を引きだすことによって――進歩を比較し継続する手段が与えられる。だからこそ科学は、哲学的なそれもふくめて思考にとっての一つの範型なのだ。どんな論駁もありえないからこそ、意見と反論のやりとりがいつでも必要となる。ポパーのことばを借りるなら、「批判的合理主義」こそが真の合理主義である。思想的寛容さと批判的精神と宗教からの独立性に栄光あれ。</blockquote>

    本書で特に白眉なのは、後半にある「倫理と道徳の哲学」だと思います。
    少し長いですが、そこにある「道徳」と「倫理」についての記載を引用します。

    <blockquote> ここでは、いっさいの規範的で定言的な、つまり絶対的で超越的な価値とみなされるかぎりでの善と悪の対立から引きだされる言説を、道徳と呼ぼう。それは私たちの義務の総体だ。道徳は、「私はなにをなすべきか」という問いに答えるものである。それがめざすのは、この問いにたいするひとつの普遍的にして無条件的な答えとなることだ。それは、絶対的に命令をくだす、あるいはそうあろうとする。それは徳(すなわち、後天的に獲得された、よくふるまおうとする傾向性)をめざし、神聖さ(カント的な意味、すなわち神聖さとは「意思が道徳法則に完全に合致している状態」であるという意味での)において頂点に達する。
     これに対して、ここでは倫理ということばを、よいとわるい――内在的で相対的な価値とみなされるかぎりでの――の対立から引きだされる、規範的だが定言的ではない(あるいは、あるとすれば仮言的な)言説をさすものとする。それはある個人ないし集団の欲望を反映した総体だ。倫理――なにしろ、個人や集団をもちだすと倫理はいくつもあることになる――は、「どのように生きるか」という問いに答えるものなのだ。倫理は命令せず、推奨する。それは常に個人や集団に特有のものであり、ひとつの生きるすべだ。ほとんどのばあい、倫理は幸福をめざし、叡智において頂点に達する。</blockquote>

    この、「道徳」と「倫理」についての言説には唸りました。
    たったこれだけの言葉で、このややこしい二つの概念を見事に、的確に著しています。

    そして圧巻は、結末の部分でしょう。

    <blockquote>社会学は社会哲学と手をきることによってのみ構成され、言語学は言語哲学と手をきることによってのみ構成され、心理学ないし精神分析学はコギトや主観の哲学と手をきることによってのみ構成される。[だが、]哲学もこれによって失う以上のものを手にいれる。哲学の領野は、実証主義者たちがそう思っているのとはちがって、その分だけ狭められるどころか、拡大しあるいは深化する。人文語科学は哲学を黙らせることになるわけではない。まさにその逆で、人文諸科学は哲学に新しい認識、新しい素材、新しい問題を提供する。そうした認識や素材や問題が尽きたためしがない。序章で述べたように、「哲学はつけたしの知ではな[く、・・・・・・]手持ちの知についての反省なのだ」。私たちが人間について人文諸科学からより多くを学べば、それだけ哲学するための素材も増すのだ。</blockquote>
    <blockquote>アランのことばだが、「叡智の対極にある悪は、ほかでもない愚かさである」。重要なことはおそらくここに語られているのだろう。肝心なのは思考すること(哲学)であり、可能なかぎり知性的に――つまりは、自己のうちでも万物のうちでも理性に合致したかたちで、ギリシア人たちのことばを借りるならロゴスに調和しながら――生きること(叡智)だ。おそらく、幸福は終わりにあるのだろう。だが、そこへの道となるのは真理なのだ。</blockquote>

    一読する価値が間違いなくある一冊だと思います。
    唯一の難点は、訳者が漢字を使わなすぎな点ですかね。
    平易に訳そうとする結果なのかもしれないですが、漢字が少ないのは読みにくいです。
    日本語の特色として、文字で意味を補完する点があげられます。
    適切な漢字を使うことで、その訳はより精度を高め、かつ、可読性も上がります。
    それ以外は、言葉の勢いや力強さを損なわない、よい訳だっただけに、余計に残念でした。

  • 「哲学」が理解できるようになります。

  • [ 内容 ]
    フランスで人気の哲学者、コント=スポンヴィルならではの知見がちりばめられた入門書。
    哲学とは何か、長い歴史を通じてどのように展開してきたか、を述べるとともに、六つのテーマに即した思考の具体例を紹介する。
    哲学の魅力をわかりやすく語った好著。

    [ 目次 ]
    序論 哲学とはなにか
    第1章 哲学とその歴史(哲学史と科学史;古代哲学;中世哲学;近代哲学;現代哲学)
    第2章 領域と潮流(形而上学の大きさと諸限界;認識の哲学(「私はなにを知りうるのか」)
    倫理と道徳の哲学
    政治哲学
    芸術の哲学
    哲学と人文諸科学(「人間とはなにか」))
    結論 哲学と叡智

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  • 2010.04.11 朝日新聞に紹介されました。

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