ミネルヴァの報復 (ミステリー・リーグ)

著者 :
  • 原書房
3.04
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本棚登録 : 104
感想 : 23
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  • Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784562051939

作品紹介・あらすじ

夫の浮気に業を煮やして離婚調停を起こした妻。
しかし結局元の鞘に収まり万事解決。ところが妻は夫の元愛人に高額の慰謝料を請求し裁判へ。
そんななか、弁護士会館で妻が殺害される――。
弁護士を巻き込んだ「仕掛け」に舌を巻く旨味溢れる逸品!

感想・レビュー・書評

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  • この作者はご自身も弁護士されていて(しかも東大法学部出身)退職された後に作家活動を始められたという異色の作家さんです。
    「欺瞞の悪意」「螺旋の底」と読んでどちらも面白かったですが、こちらは二作品に比べイマイチ響きませんでした。個人的にトリックが込み入っていて難解だったことで、解明編を読んでいてもすっきりしなかったことが大きいかもしれません。今のところ「螺旋の底」が一番かなー。でももう少し他作品も読んでみたいと思います。

  • 2回目の読了。
    星を1つ下げたのは、ミネルヴァの報復というタイトル。古代神話の神々は、だいたいみんな自由人(ヒト?)だから、整合性の取れないことや合理的とも思えない行動をするものだけど、横手とは重ならないように感じる。

    睦木に対する一種の道化としての存在っていう側面が強調されて過ぎた結果なのかもしれないけど、ミネルヴァはそうではない気がするんだよねぇ。どっちかっていうと、ギリシャ神話の神のほうがしっくりくるかもしれない。

    そんなにタイトルにこだわる必要があるわけではないと思うんだけども、本筋においてこのキャラクター設定は重要だったはずだし、またおそらく最後の対応を指して「報復」という言葉が使われてるんだろうけども、その矛先は報復という言葉でくくれるほどシンプルでもない。

    このあたりがちょっとしっくりこなかった。トリックと登場人物とのギャップが埋められなかったという感じだろうか。

    トリック自体はけっこう好き。

    ------

    1回目の読了:2017/03/02 星4

  • 話はまあまあだったけど、終わりがなんだかなーって感じだった。

  • 2016.3

  • ぐいぐい引き込まれてとても面白かった。
    ただ、なんとなく犯人がわかるのと動機に納得しきれなかった。

  • 前作登場の女弁護士睦木怜の友人女弁護士横手皐月。大学時代の先輩から離婚裁判の依頼をされる。妻が不倫相手をうったえる、5000万円を請求。不倫相手が失踪。
    民事裁判で被告が答弁書を出さず、出頭しないと訴えを認めたことになり5000万円を支払えとい判決が出る
    不倫相手の持ち物であるマンションは競売される。先輩は妻の元に戻った。
    裁判所の面談室で先輩の妻が殺される。先輩には弁護士事務所にいたというアリバイを美人事務員の佐伯が証明。失踪している不倫相手が殺されていると思い探偵に調査を依頼。別荘の敷地と家の中の調査を依頼。弁護士が襲われる。睦木怜から「気をつけなさい」と言われたので危うくかわす。香水から先輩が襲ったことがわかる。先輩が裁判所でピストルで撃たれて殺される。不倫相手と妻は同一人物。不倫相手は既に殺されている。不倫相手の新しい男が容疑者?輸入業者つながり?
    先輩のアリバイを証明するのは事務員の佐伯だけ、佐伯に疑いがかかる。全ての辻褄があう。睦木怜の最初の疑問は、何故先輩が同じ大学出身にたくさんいる弁護士の中から横手を選んだのか?横手と組んで不倫相手のマンションを手にいれようとしていたが、事務員の佐伯に変更。横手殺害を命じたのは佐伯なのか?先輩を撃ったのは佐伯。佐伯が自白。弁護は横手がする。できるだけ、罪が軽くなるようにもっていくと決意。

  • 2015.11.25.読了。プロローグ、いわば弁護士会の総本山である弁護士会館で死体が発見される。そして、物語の始まり、銀座に事務所を構える弁護士横手皐月は開業20年にる中堅弁護士。開業以来、ベテランで有能な女性事務員佐伯と二人三脚で歩んできた。ある日横手の元にかつての大学の先輩辻堂が離婚したいと相談にくる。大学時代から大言壮語、何か不誠実な匂いのする辻堂を警戒しながらも仕事として引き受ける横手だったが、逆に辻堂の愛人西館祐美子が辻堂の妻康子に訴えられ、また、その弁護に取りかかろうとする矢先中堅起こった事件。思わぬ方向に横手は巻き込まれていす。横手は司法修習生時代の同級生、陸木に事件のあらましを再三相談する。横手が民事を扱っているのに対し、陸木は刑事畑。冷静な睦木が法の神テミスなら、自分はさしずめ戦いの女神ミネルヴァだ。正義のためではない。自分は自分の怒りのために戦うと思っている。第一、第二の事件が起こり複雑さを呈する中、思わぬ真相が待ち受ける。
    作者の深木さんが弁護士さんだったこともあり、弁護士会館での殺人事件という破天荒な設定が無理なく可能になっていた。また、横手の独立話から離婚裁判、民事裁判で被告が法廷に来なかった場合の処遇、それを利用した悪巧みなど、業界を知っているからこその仕組みがとても面白かった。犯人については途中からわかってしまう安易なミステリーだったが、それまでの組み立てが専門的なので読ませる作品だったと思う。普通なら強引すぎて常識的にあり得ないだろうなんて書いてしまうのだが、専門的な立場からありえてしまい、納得させられてしまうのが素人のかなしさだった。

  • 良くも悪くも古きミステリ。ミス・マープルならこう言うだろう。「ほんとにひどい男! 魅力的でうぶな中年女性に、妙に魅力のある自堕落な男。起こることは想像できますよ」と。

  • いつもに増して凝りに凝ったミステリ。先の展開が全く読めません。元弁護士ならではと思わせる、業界話も楽しいです。

  • ミネルヴァとは、ギリシャ神話ではアテネと呼ばれる知恵と正義、戦いの女神のことだ。
    パリスの審判ではヴィーナスに負けてしまったものの、美しいと自負する美貌をも持っている。
    そんな背景をもとに、本書を読んでみると、事件の複雑さも、それを救うのも神ではなく人によって引き起こされていることを痛感する。
    人間らしい神々なのか、神々に似せて人間が作られたのか。
    どちらにせよ、正しさとは不確かなものである。

    事件の始まりはよくある離婚に関する相談だった。
    協議離婚にはならず、調停を経ても双方が納得せず、さあ、裁判を起こそうというときに現れたのが辻堂という男だった。
    彼は横手という大学の後輩の元へ親しげにやってきて、相談を持ちかけた。
    この男、とにかく胡散臭い。
    自意識過剰で、いつまでも「若いモテた頃の俺」だと思っている。
    (うわぁ一番嫌いなタイプ!引くわー。というのは私の心の声)

    一方、この辻堂の妻と辻堂の愛人である西館との関係も怪しい。
    どうも妻に愛人がいることがバレているよう。
    なのに、辻堂は双方に愛している、離婚する、別れる、結婚する、お前が好きだ.....
    (うわぁーほんと最悪、ペッペッペッ!もう一度心の声)

    そのごたごたの最中、死体が弁護士会館で見つかる。
    これは一体誰なのか?
    誰が殺したのか?
    事件はただの離婚、不倫から姿を変え、主人公の人生までも変えていく。

    守るべきものがあることは強い。
    しかしそれは容易く弱さに変わる。
    人生に絶対的な正解はなく、だからこそ人はそれを求めて進んでいくのだろう。

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著者プロフィール

みき・あきこ1947年東京生まれ。東京大学法学部卒。元弁護士。60歳を機に執筆活動を開始、2010年に『鬼畜の家』で島田荘司選第3回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞。『衣更月家の一族』『螺旋の底』が第13回・第14回本格ミステリ大賞にノミネート、『ミネルヴァの報復』が日本推理作家協会賞にノミネートされるなど、注目の作家。他の著書に、『敗者の告白』『殺意の構図』『交換殺人はいかが? じいじと樹来とミステリー』『猫には推理がよく似合う』『消人屋敷の殺人』『ミネルヴァの報復』『消えた断章』『罠』など多数。

「2023年 『欺瞞の殺意』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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