- Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
- / ISBN・EAN: 9784562057320
作品紹介・あらすじ
ゲノム編集、死後も体外で成長しつづける細胞、ブタの中で培養されたヒトの脳――どこからが自分で、どこからが自分ではないのか? それは誰の命なのか? 生物学の歩みから近未来の技術まで紹介し「ヒト/命」を再定義する。
感想・レビュー・書評
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研究機関で肩付近の細胞を基に小型脳組織を培養したサイエンスライターの著者が、シャーレで育つ別の自分を見て感じたバイオ技術全般への思いを語る一冊。
培養脳のアイデンティティについてが哲学的に語られるものと書名からは考えていましたが、この経験で感化された著者がSFや実際の技術を紹介し感想を述べる内容でした。
そのために主題よりも脱線が多いのですが、人の語りで今のバイオ技術について広く浅く知るには良いかもしれません。
オリジナルのコピーであるクローンとは違い、品質の良い人体を設定して培養・生産できる時代はいずれやってくるでしょう。
生物学の研究には夢があり全面的に賛同しますが、生き物の体と遺伝子がブラックボックスの段階では改変に慎重になったほうが良い気がします。
長い歴史と生物学的理由があって今の生物種に落ち着いているはずなので、しばらくは机上と実験室での探索に留めるべきと考えました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「科学道100冊2021」の1冊。
原題は"How to Grow a Human---Adventures in Who We Are and How We Are Made"。「ヒトの育て方---私たちが何者であり、どのように作られるのか」といったところだろうか。
超最先端のバイオテクノロジーは、将来的に人間のありかたを変えるのか?
ゲノム編集、クローニング、脳、生殖医療といったトピックから、技術の発展と社会との関わりを追う。
発端は、著者自身の腕の細胞から作製された脳オルガノイドである。「ミニ脳」とも呼ばれているが、ニューロンの塊で、ネットワークを作り、互いに信号を送り合ってもいる。信号を送り合っているとするならば、何らかの「意識」があると考えてもよいのか。「意識」があるとすれば、それは「誰」なのか?
著者から作製されたが、もちろん、著者自身ではない。ではそれは一体「何者」なのだろう?
最先端の生命科学には、実はそうした倫理的な問題が潜在的に数多く存在する。
やろうとすればできるが、しかしそれは倫理的にやってもよいことなのか。
その議論が十分でないままに、グレーゾーンを抱えながら、技術が発展しつつある。
そんな状況を紹介する本である。
いささかSFめいており、ホラーのようでもあるが、現実である。
元をたどれば、身体の一部である細胞を培養することが可能になったときにそれは始まっていたのかもしれない。
体外に取り出された細胞の培養に成功すれば、ときにそれは持ち主が亡くなった後も増え続ける。そしてiPS細胞のように、さまざまなものに分化する幹細胞にすることができれば、そこから身体の各部や、個体そのものを作ることもできる。それは一体「誰」なのか。
生殖にも技術は入り込む。体外受精は始まった当初は懐疑的に見る向きも少なくなかった(「試験管ベビー」)が、今ではそれほど珍しくはない。
技術を使うとき、そこには何らかの介入がある。受精能力が高い「質」のよい卵子や精子を選ぶことは、目的からして当然のことだろうが、けれども「質」とは何だろうか?疾患のない胚を選択することが許されるなら、疾患になる可能性がある胚を除くことは許されるのか? 疾患になるかもしれないが、ならないかもしれない。線引きは誰がどうするのか、そして疾患になるからといって「抹殺」することは本当に「正しい」のか。
さらには、好ましい形質を選ぶ(=デザイナーベビー)ことが可能ならば、やはりそれを選ぼうと思う者は出てくるだろう。
社会は本当に、それに向き合う準備ができているのだろうか。 -
#科学道100冊/未来エンジニアリング
金沢大学附属図書館所在情報
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科学道100冊 2021 テーマ「未来エンジニアリング」
【配架場所】 図・3F開架
【請求記号】 491.11||BA
【OPACへのリンク】
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