カラー版 エロスの美術と物語―魔性の女と宿命の女

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  • Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784568400595

作品紹介・あらすじ

かつて19世紀末の美術や文学には、男を魅了し、ついには破滅させる数々の魔性の女たちが描かれ、また物語られた。彼女たちは「宿命の女」と総称され、その頂点にサロメの姿があった。描かれた魔性のヒロインたちの系譜を探る331点をカラー図版で再現、伝説のなかに明暗が交錯する情念と官能のドラマを追う。

感想・レビュー・書評

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  • ファム=ファタルの系譜を、サロメに源流をみだしそこから系譜を辿っていく。全体の半分はサロメに関わる作品を紹介して、後半で、エヴァやらヘレネやらデリラやらユディトやらをモチーフにした作品を見ていく。
    テーマ史としてはまあまあ面白いとは思うが、特定の属性を持った女性にファム=ファタルとレッテルを貼り扱うという、そういう目線や態度への批判的・反省的な意識が希薄なのが気になった。作品が作られた時代の意識や倫理観が現代とは違うのは当然として、それを現代から見る書き手がそこに無批判に乗っかってよいのか。当時の感覚がどうあれ、それを事後的に見て評価する以上、そこになんの批判的な態度も見えないというのはちょっと違うと思う。前に読んだ海野弘の「魔女の世界史」もそんな感じだったし、この界隈はそういうものなのだろうか。

  • ファム・ファタル=宿命の女という、画家がこぞってテーマにした女性について考察した本。「サロメ」や「ユディト」などの代表的なファム・ファタルを筆頭に、絵画で表される女性の“純潔”や“妖艶”さといったイメージを多彩な作品によって説明したもの。取り上げられている作品はほぼ全て写真が載っているので、その時代の画家や風潮に詳しくなくても、読むことができた。

  • かつて19世紀末の美術や文学には、男を魅了し、ついには破滅させる数々の魔性の女たちが描かれ、また物語られた。彼女たちは「宿命の女」と総称され、その頂点にサロメの姿があった。描かれた魔性のヒロインたちの系譜を探る331点をカラー図版で再現、伝説のなかに明暗が交錯する情念と官能のドラマを追う。(表紙)

    「サロメ=ファムファタル=運命の女」を題材とした絵画と文芸(専ら前者)を論じる一冊。ビアズリー、モロー、ルドンといった19世紀末象徴派はもちろん、16~17世紀のクラーナハやカラヴァッジョの「運命の女」的絵画も収められていて、大満足。

  • ファム・ファタル、少女、娼婦、聖母、、純潔と母性と官能、、、この本の副題、そして表紙のサロメからわかるように、~魔性の女と宿命の女~ そのままの内容です。
    美術、文学、神話など、様々な方向からのアプローチで、サロメとその他の魔性の女を見ることが出来ます。
    ページ数が多いわけではないのでファム・ファタルの解剖とまではいかなくとも、自分で探索していける糸口、着眼点のヒントを頂きました。19世紀末、宗教や精神、サド・マゾヒズムの解釈など、読んでいて飽きない美術書でした。

  • オスカーワイルドの戯曲で有名な「サロメ」の、社会が作った人格形成と、それに関わる(翻弄される)芸術家達の変遷。「魔性の女と宿命の女」とはよくいったもので・・・女性の魅力に改めて気づかされる一冊。

    内容はとってもよいのに、タイトルで損している気がしますね。

  • 19世紀後半、世紀末の偶像として西欧の美術と文学の世界を風靡した「ファム・ファタル」のイメージのもとに、神話や伝説の中の女性たちがよみがえった。本書は特にサロメに焦点を当て、聖母マリアと光と影の対をなす究極の魔性に向き合う。

    第Ⅰ章:サロメ=宿命の女が完成してゆく過程
    …文学:オスカー・ワイルド、美術:ビアズリー、モロー
    第Ⅱ章:中世~19世紀までのサロメ図像の系譜
    第Ⅲ章:神話・聖書・歴史伝説の中の宿命の女たち
    第Ⅳ章:世紀末に変容しつくし消え去ってゆく宿命の女

    Ⅰ【ワイルドのサロメ】…ビアズリーの挿絵はワイルドの原作に忠実でなく、お互いに不満があったというのは知らなかった。サロメがヨハネに口づけするのは、ワイルドの独創らしい。「お前の唇は苦い。これは血の味なの? いやこれはたぶん恋の味なのだよ。」

    Ⅱ【サロメ像の変容】…母の命令に服従したユダヤ王女から、陰翳のある女へ
    ×ヨハネの生首…リアルに描いた絵画が多く不快
    ×フランチェスコ・デル・カイロ…題材と描き方が悪趣味。

    Ⅲ【サロメの姉妹】…「魔性の女」⇔「女の魔性」
    ・エヴァ…蛇と同一視される誘惑者
    ・ヘレネ…「人間のうちで最も美しい女性」トロイアの王子パリスに略奪された後、トロイアを滅亡に導く。
    ・クレオパトラ…官能的な死
    ・デリラ…英雄サムソンの怪力の秘密を聞き出し死に至らしめた
    ・メデューサ…男性の去勢恐怖
    ◎フランドル派の逸名画家によるレオナルドの作品のコピー「メデューサ」17世紀…瞳に力があり、禍々しいが美しい!
    ・ユディト…旧約聖書外典の救国のヒロイン。デリラと対をなす。または正のユディト、負のサロメ。
    ・ルクレティア…凌辱された後自害。サディスティックな情欲を掻き立てる存在。

    Ⅳ【世紀末とベル・エポック(良き時代):世紀転回期の二つの顔】
    ◎クノップフ「フローベールによる」1883、同「イシュタル」1888
    清冽な色気。
    ◎クリムト「ユディト」1901,1909…サロメと勘違いされてきた
    ◎シュトゥック「サロメ」1906…この本の表紙。肉感的。
    ◎クリンガー「新しきサロメ」1893…彩色彫刻。少女のよう。二つの生首。
    ◎モロー「スフィンクス」1887-88…見たことがなかった。青い羽が印象的。
    ×クラーナハ…吊り上った目と不穏な笑みが好きになれない

  • 借りたもの。
    世紀末に人々を虜にした妖姫・サロメ。
    そのファム・ファタールの系譜と図像を中心に、女性のエロス像を解説した本。
    サロメを筆頭に、ユディト、メドゥーサ…それらは原初の女性エヴァへと繋がる。それが簡潔に解説された一冊。

  • えーと、いっとき独学でかなりいい加減に美術の勉強してた時期がございまして、その時買いました。副題にありますように、女性の背負った宿命をモチーフとした絵画作品を解説した専門書です。畑が違うので読解できない箇所多々あり。そういや絵眺めてばっかでした。

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