不幸論 (PHP文庫)

著者 :
  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569762937

作品紹介・あらすじ

どんな人生も不幸である。幸福とは真実を隠蔽した思い込みに過ぎない――自分自身の人生を生ききるために、切れ味鋭い驚異の哲学論。

感想・レビュー・書評

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  •  幸せでいるために幸せを求めることが、かえって不幸にしてしまうのではないか、そのようなことを考えてしまうような内容であった。人間は何らかの形で不幸に陥ってしまう。どんな工夫や努力をしたところで、生きている間に思わぬ事態にぶつかってしまう。そんな理不尽な世の中で、人間は本当に幸せでいられるのか。著者は幸せのあり方を追求する。しかし、いくら考えたところで、結局のところ、幸せは訪れない.。幸せをもとめることが、人をより不幸へと追いやってしまう。哲学者である著者は、古代と中世の哲学者は、「死」について真剣に考えると評価する一方で、現代に近い哲学者の幸福論には納得がいかないという。何人か哲学者を一部抜粋して、著者は不幸であることがむしろ良いのではないかとという結論を出す。不幸を受け入れることが、人生をより楽な方向へと転換できる。幸福=良いというのも、ある種の価値観の押し付けであり、相手を洗脳するような言いぐさかもしれない。このように、本書は、多くの人が無意識に共有する当然の考えに、著者が一石を投じた本であり、不幸であることが逆説的に人生を豊かにしてくれる。ある種の正義感を振りかざす者に読ませてやりたいと思わせる本であった。

  • 飛行機に乗る時は必ず堕ちるだろうと期待して乗り込む哲学博士による理想な幸福は幻想に過ぎない自身が死ねかぎり幸福はないので他人評価より自分本位に生きることを勧める。アラン「幸福論」幸福は天からは決して降ってこないの裏表かも。著書はこの手の本を多数出版し国立大学教授で世間的には成功し幸せだろうと想われているが(笑)

  • 死を目前に控えたとき、その絶対的不幸の元にひれ伏すしかない人々は、その相対的不幸をも引き受けなくてはならない。それが〈絶望〉しないススメであるのだから。

  • 幸福論を読み漁ってるそこのあなた、この本を読んでみましょう!視野が開けますよ!

  • 私はありとあらゆる犯罪者に対して、自分とは無関係だとタカをくくってはいられない。私がしたかもしれない、あるいは今後するかもしれない犯罪を、彼らは私に代わってしてくれたように思う。神谷美恵子の言葉を借りれば、「なぜ、私ではなくてあなたが」という疑問は消えないのだ。

  • 幸福なんて、薄っぺらいものだという考え方は良かった。
    SNSの普及による、承認欲求の囚われや、流行という価値観の押し付けが蔓延る世の中。
    いいね!をされること、流行の波に乗れていることは、確かに、幸福ではなく、息苦しいものだと思う。
    しかしながら、幸福の条件を厳密にし、こうでなければ幸福ではない、みんな不幸だ、という、二値論理的な考え方はどうなんだろうか。
    また、哲学者ゆえに、自分の考え方を世間とは違うという表現を使ったり、少数派だという希少性を用いつつ、意見の正しさをデータなどの根拠もなく伝えようとしているのは、今の時代如何なものか?とは思う。そこが、学問から抜け出せないところなのかもしれない。
    内容全体として、納得いく箇所もあったが、上記の点で星3かな。

  • 読んでいるうちに、気持ちが楽になった気がした。
    共感する部分も多く、確かにそうだと気づかされることもあった。

    『死を忘れるな』私の好きな言葉です。

  • バンカラ~

  • 脅しや絶望じゃなく、幸福なんてどこにも無いよという本。だって地球上の全存在が幸福じゃない限り、個人の感じる幸福はただのまやかしだから。何かを必死に見ないふりしてないと守れない砂上の楼閣、それが幸福。幸福なんてどこにも無いから、必然的にあなたも私も全員不幸。と、いうことをぐちぐち言っている面白い本です。

    人は人生のあらゆる場面で選択をする。自分の欲望を満たすため、幸福を掴むために何かを切り捨て、踏みつけ、置き去りにして進む。それをちゃんと憶えている限り、幸福は無いのだ、と。

    こんな本当のことを言ってしまう人はそりゃ煙たがられることだろう。王様は裸だよ!と告発する空気を読まない大人。それが中島さん。私は読んでいて落ち着くし、少し笑って、リラックスした気持ちになる。「幸福ではない自分」についてはどうでもいい。「不幸だが、味わい深い人生」を思え。

    この本を当時編集したのが今のミシマ社社長、三島邦弘さんと知ってへー、と思った。

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著者プロフィール

中島 義道(なかじま・よしみち):1946年福岡県生まれ。東京大学法学部卒。同大学院人文科学研究科修士課程修了。ウィーン大学基礎総合学部修了(哲学博士)。電気通信大学教授を経て、現在は哲学塾主宰。著書に『不在の哲学』(ちくま学芸文庫)、『反〈絆〉論』(ちくま新書)、『私の嫌いな10の言葉』『私の嫌いな10の人びと』(以上、新潮文庫)、『生き生きとした過去――大森荘蔵の時間論、その批判的解読』(河出書房新社)などがある。


「2024年 『時間と死 不在と無のあいだで』 で使われていた紹介文から引用しています。」

中島義道の作品

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