睦月童(むつきわらし) (PHP文芸文庫)

著者 :
  • PHP研究所
3.83
  • (8)
  • (41)
  • (14)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 279
感想 : 24
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569768700

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 睦月童(むつきわらし)

    著者 西條奈加
    PHP研究所
    2015年3月10日発行

    江戸時代のファンタジー小説。
    睦月童とは、座敷童のことらしい。

    長編小説だが、7話からなっていて、4話までは一話完結的な展開で、ミステリー小説。後半は、ファンタジー的な展開と締めくくり。
    江戸・日本橋の酒問屋の主人が、岩手・盛岡郊外の山里から1人の少女を預かってきた。1年間、預かるという。七つぐらいに見えるイオという少女。
    東北弁の素朴なかわいらしい子。しかし、彼女を見ていきなり手代の一人が腰を抜かす。彼女の目が金色に光っているという。そして、店の金3両を着服したことを白状する。
    次に金色の目に腰を抜かしたのが主人の息子。よくない仲間と三人でつるみ、夜遊び。ある時、湯島のおもちゃやの老主人ともめて、復讐しようと、当時、周辺を恐怖に巻き込んでいた強盗団のふりをしてその店に盗みに入って金を盗んだ。

    やましいことがある人間だけに、イオの目が恐ろしい金色に見える。イオがいうには、見る人の心を映す鏡なのだという。
    息子は、反省し、その店の手伝いをしてお詫びをする。
    時間とともに、老主人も心を開いて許してゆく。
    ここまでが1話。ミステリー仕立てで、最後の締めくくりがほのぼのととてもうまい展開。

    江戸平民の物語は、おもしろいものが多い。侍もの、捕物帖とはひと味違った癒しの世界がある。この小説も、そういう意味で抜群、とてもおもしろい。
    2話は、夜鷹の話。幼いイオに夜鷹の働く姿なの見せたくないと配慮しつつ、夜鷹を恐怖で襲うひとだま話の真相追及をするが、イオがその不思議な力で解決の糸口を見つける。
    これも、病気の亭主の薬代を稼ぐために夜鷹に身をやつした女に、ある男がほれて、夜鷹をやめさせようと仕組んだことだとわかる。やっぱり、ほのぼの話。
    しかし、イオの目が金色に見えるのは、単純にやましいことをしている人間ではなく、やましいことをしている自分を心の中で責めている、良心を持った人間であることが分かってくる。根っからの悪は、イオの目を見ても動じない。

    5話から、様相は変わってくる。
    もと遊び人の酒問屋の息子が、イオをつれて、イオの里に行くという展開になる。そこには、地下で暮らす女性たちが。子供を産むと同時に死ぬが、産まなければ不老不死の女性たちばかり。それを、ある武士が絶滅させようと目論む。
    理由は、人間が行ってきた環境破壊に起因する。

    前半の話は抜群におもしろい。短編的。
    後半の展開は、長編的。意味は深いが、前半と趣が変わりすぎて少ししんどいかもしれない。

    ただし、この西條奈加という作家、非常に注目すべき人。

  • #読了 人の罪を映す瞳をもった少女と、その少女によって罪を暴かれて人生再スタートをきった青年のお話。舞台は江戸で、二人が身の回りの謎を解いていくお話かと思いきや、後半は少女のルーツにまつわる壮大なファンタジーが繰り広げられてびっくりした。
    座敷童の解釈とか里の設定とかは面白かったんだけど、前半と後半のギャップの大きさと唐突さに私は残念ながらついていけず……もう少しゆっくり、二人の交流の話が読みたかったなぁ。

  • 2022.07.04

  • なるほどファンタジー^^ 後半の内容がちょっとね。前半は面白いんだけど、後半で尻すぼみ的かな・・・あくまでもワタシの感想です。

  • 58

  • 江戸で起きる事件と、睦月神関係の事件とが良いバランスでスムーズに移行していく。設定だけだと怖そうなファンタジーですが、読みやすいし、イオの存在のおかげか明るい印象。
    人はやり直せる、成長と繋がりの暖かさを感じる内容。

著者プロフィール

1964年北海道生まれ。2005年『金春屋ゴメス』で第17回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、デビュー。12年『涅槃の雪』で第18回中山義秀文学賞、15年『まるまるの毬』で第36回吉川英治文学新人賞、21年『心淋し川』で第164回直木賞を受賞。著書に『九十九藤』『ごんたくれ』『猫の傀儡』『銀杏手ならい』『無暁の鈴』『曲亭の家』『秋葉原先留交番ゆうれい付き』『隠居すごろく』など多数。

「2023年 『隠居おてだま』 で使われていた紹介文から引用しています。」

西條奈加の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×