- Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569781938
作品紹介・あらすじ
夢と希望を断ち切られ、生きることは、挑戦だった。帰国後の日本での暮らしも、挑戦…。挑戦とは、現実から逃げないこと。24年間の拉致体験と現在を語る。
感想・レビュー・書評
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北朝鮮により拉致された被害者である蓮池薫さんの体験記。
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蓮池薫さんの講演会があったことで、参加は出来なかったけれど、興味深くなり読んでみた一冊。
どんな環境に置かれたとしても、必死で生きる術を身につけて生きておられた北朝鮮での暮らしが分かります。
拉致問題の当事者としての視点で北朝鮮で家庭を持ってからさらに周囲の状況を読むことが多くなったのではと思います。
自分の意志とは関係なく拉致という国家の戦略に陥ることになった中でも、挑戦を続けて来られた姿、そして、日本へ戻ってからの新しい挑戦に心を打たれます。
納豆の話。
何気なく食べているけれど、北朝鮮ではこのような思いを抱いて試作されていたのですね。 -
北朝鮮による拉致被害者である蓮池薫さんの体験記。
いきなり何の前触れもなしに不条理な暴力で以て異国へと連れ去られ、もう二度と故郷の地を踏むことはないであろう絶望の中で、一体どうやって生きてきたのか。
それが知りたくて手に取りました。
拉致から北朝鮮での二十五年にも及ぶ生活を、蓮池さんは淡々と描写していますが、それがどれだけ辛い経験であったかは想像にも及びません。
国交のない未知の国というだけでなく、言葉が通じないどころか、生活レベルも全然違う国で、寒さや貧困による死とも向き合いながら、蓮池さんが、それでも希望を失わずに生きていく様が胸にずしりときます。
自分だったらどうだろう?果たして、そういうふうに希望を持って生きていくことが出来たのか。
どんな状況であれ、人は、生きることを諦めないことが出来る。蓮池さんの強さに、勇気づけられもしました。
拉致の問題は未だ解決していません。
北朝鮮の国際的な立場も今後変わってくるのでしょう。
政府は拉致問題の解決に向けて、粘り強い交渉を続けてほしいと思います。それも、一刻も早く。
すべての拉致被害者の方々が祖国の地を踏める日が来ますように。 -
蓮池薫氏「夢うばわれても」、2011.10発行。北朝鮮という国家による犯罪の犠牲者、大変な苦労、そして心からの叫びがあることでしょう!まだ未解決な北朝鮮による拉致問題、日本国政府、国民の生命と財産を守るため、そして国家主権の尊厳を維持するため、毅然とした対応をしてほしいと思います! 私としては、東京オリンピックよりもはるかに優先する政治課題だと思います!
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国家犯罪による拉致によって希望を奪われながらも、言葉の通じない国、風習も環境もまったくちがう場所で、国家による監視、敵国扱いにされる民族という微妙な立場があるなか、いかにして希望を見出して生きていくかという点に、想像を絶する実話だけにおもわず一気に読了した。ごぼうや納豆づくりで日本の味をつくる話のくだりでは、日本にいると食べ物のありがたみなんてさほど感じないけど、食べ物には苦境のなかでその人の生まれ育った根源の地や民族につなぐ大きな力があるんだなぁと思った。
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孤独でしたが、死ぬことまでは考えませんでした。それよりも自分は生きなきゃと。生きるためには、言葉を知らなきゃ。知るためには言葉を勉強しなきゃ、みたいな感じでした。
自分で努力すれば、こんなこともできると、自分の意識を高めていたんです。
人生とは、挑戦だと思います。希望のない北朝鮮での暮らしも、日本での暮らしも挑戦です。現実に、真正面から向かうことが挑戦。現実から逃げないことが、私にとっての挑戦です。 -
本屋で立ち読みして読破できる本。あまり辛く無かったように書かれてるけど、大変だったでしょう。辛かったでしょう。立ち読みして、涙が出そうになるのをとめるので精一杯でした。
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(2012.07.02読了)(2012.06.28借入)
NHKの100年インタビューで放映されたものを活字にしたものです。
蓮池薫さんは、北朝鮮による拉致事件の被害者です。
北朝鮮の指導者が交代したので、拉致事件の進展が期待できるかもしれません。
現在の指導者の母親が日本からの帰国者ということですので。
北朝鮮工作員によって新潟県柏崎の海岸から北朝鮮に連れて行かれ、そこで日本語の新聞記事を朝鮮語に翻訳する仕事をされられていたとか。
恋人と一緒に連れ去られ、1年9か月後に会うことができ、結婚し子どもができ育てながらの生活だったけど、北朝鮮の食べ物や生活習慣になれるために奮闘しないといけなかった。
冬の停電には、寒さ対策が大変だったようです。
日本の食べ物で、納豆、梅干し、きんぴら牛蒡が恋しくて何とかならないか工夫をした話が出ています。
朝鮮で生活するには、キムチが必需品というのにはちょっと驚きました。
子どもたちは、寮生活で親とは離れて暮らしていたとか。
2002年の帰国の際には、子どもは置いてきたということだったので、そのまま親が北朝鮮に戻らないことになった時には、子どもはどうやって生活するのか、人ごとながら心配したものでしたが、寮で暮らしているなら、そんな心配もあまりいらなかったのかもしれません。
今は、韓国語の講師をしながら、翻訳の仕事もして、自立した生活ができているということです。
【目次】
プロローグ
第一章 故郷・柏崎にて
第二章 拉致の記憶
第三章 二十四年ぶりの祖国で
100年後の皆さんへ
●顔色を見る(37頁)
北朝鮮では常に人の顔色を見ます。つまり本音で話さない。
労働新聞にも本音は出てきません。建て前を出してくる。
●夢と希望(53頁)
私が拉致によって閉ざされたのは、夢と希望です。
●言葉の習得(55頁)
私には生きるための情報が必要だったんです。そのためには言葉が必要で、根底にはともかく生きよう、という強い意志があったのです。
●キムチ(69頁)
冬はキムチですね。日本ではあんまり食べませんが、向こうでは食料なんです。おかずというより、主食に近い食べ物という感じ。
●食べるための闘争(74頁)
北朝鮮には「食べるための闘争」という言葉があります。家族みんなが食べていく糧を得るのは、戦いにも匹敵するほど難儀なことだという意味で、キムチを漬けるたびにそれを感じていました。
●寒さ対策(77頁)
北朝鮮は北の国なので、寒さ対策がとても重要でした。
いかに寒さをしのぐか。食べる心配が五としたら、寒さをしのぐ心配も五。食料がないのと、燃料がないのは、同じぐらい心配をする。両方とも死に直結するからです。
●日本に来て見て(93頁)
北からのまわしものだと言われて、日本にはとても住めない、と北朝鮮から聞かされていたので、最初は疑心暗鬼、心配も山ほど。
●翻訳のプロ(109頁)
読んでいて途中、これはおかしんじゃないかという箇所が一つでもあれば、そこで感情は断ち切られて、読んでいる方は興味をなくしてしまう。だから訳すだけじゃなく、自分で文章を書き直すぐらいのつもりでやれ。そこまでしなきゃ、絶対にプロとして受け入れられないと。
●絆と夢(113頁)
人間は孤立して、一人では生きてはいけません。家族や友人または社会、いろんな絆の中で幸せを感じ、生きていく。と同時に、それぞれが自分の夢を持ち、その夢を追い、実現しながら生きていく。
●人生は挑戦(114頁)
人生はずーっと挑戦、チャレンジを繰り返すことだと思うんです。
挑戦とは何かといったら、現実に、真正面から立ち向かうこと。
☆関連図書(既読)
「奪還」蓮池透著、新潮社、2003.04.25
「ソウルと平壌」萩原遼著、文春文庫、1998.10.10
「拉致と核と餓死の国 北朝鮮」萩原遼著、文春新書、2003.03.20
「謎の独裁者・金正日」佐々淳行著、文春文庫、1999.02.10
「北朝鮮大脱出 地獄からの生還」宮崎俊輔著、新潮OH!文庫、2000.10.10
「北朝鮮の暮らし 浮浪児と美女軍団」宮塚利雄著、小学館文庫、2003.01.01
(2012年7月2日・記) -
北朝鮮に拉致された蓮池薫氏の回想・思いをつづった本。拉致問題が解決しない中でいえないこともあるだろうが、いろいろな思いが書かれていた。見知らぬ土地につれてこられた絶望感などが伝わってくっる。そして、生きるのが難しい時代に、困難な事態に直面している人へのメッセージがよい。