なぜアメリカは日本に二発の原爆を落としたのか

著者 :
  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (265ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569806808

作品紹介・あらすじ

「戦争を早く終わらせるため」は、やはりウソだった-。戦後、日本が「独立」を果たしてから60年。非公式記録の発掘と関係者の新証言をもとに、日本人が目を背けてきた「真実」を明らかにする。

感想・レビュー・書評

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  • マンハッタンプロジェクトは、アメリカが月へ人を送り込んだアポロプロジェクトよりも巨大な大事業だった。太平洋戦争が始まる前夜の1941年12月6日、ロスアラモス研究所に、まず6000ドルの予算がつけられ、原爆の製造計画が動きはじめた。
    ここでは1945年3月、3個の原爆を作り上げ1つはニューメキシコ州の砂漠で実験のために使われた。あとの2つは広島と長崎に投下された。やがて毎日100発の製造をするようになり、1960年までヨーロッパで使うための核兵器を20,000発以上を作っている
    ルーズベルト大統領は死亡する前に日本への原爆投下を指令したが、実際に命令をくだしたのはその後任のトルーマンだった。原爆の製造は、真珠湾攻撃の前に始まっていた。
    アメリカ人が真珠湾攻撃と日本との戦争について、ドイツとの戦争、つまり白人同士の戦争とは異なる価値観で考えていた事は明らかである。
    候補地は京都、広島、横浜、小倉になっていた。 原則はそれまで僕的が行われていない年を選ぶことだった。天皇いる皇居を攻撃するすべきだと言う案もあったが、日本を降伏させるため取引に使うことが確実だったので、すべきではないと言う結論が出た。
    B29に乗り込んだチベット大佐は青酸カリの錠剤十二個をポケットに手とませていた。B29が撃墜された場合全員がそれを飲むことになっていた。
    ルメイ司令官、マッカーサーは原爆投下に反対だった。原爆を使わなくても無条件降伏させられることは確実だ。トルーマン大統領がどうしても原爆を使いたかったのだ。
    日本に対する原爆投下と東京大空襲、日本人に対するホロコーストそのものだった。ホロコーストの語源はギリシャ語で、獣を丸焼きにして神に捧げるユダヤの宗教儀式の事だ。後にナチスによるユダヤ人大虐殺を表す言葉になった。
    福島の原発の処理に対しての世界の評価。地下資源のない日本が、資源のある国々と同じように、簡単に核エネルギーを捨て去ることについて、決して日本を尊敬してはいない。
    2発原爆を日本に落とした理由は、日本人に強烈な心理的打撃を与えようとした為。

  • 読みやすい構成で一気に読了。
    アメリカをよく知る著者の分析が面白い。
    私の浅薄な知識では、日本海軍は開戦後長期の間持ちこらえられないことは、事前に解っていたと記憶している。大本営の指導力のなさというのはその通りだが、船乗りが戦闘に長けていただけ、というのは著者の言い過ぎだろう。
    また、二度と落とされないようにするために、抑止力を持たなければならないというのは議論の余地がある。

  • 日本が戦争で負けるとわかっていたときに、原爆を二発投下したアメリカが解せなくて、読んでみた。理由はなんとなく想像していたのと近かったので納得。
    ただ東京大空襲のときの被害の大きさは、原爆のものと匹敵していたのは知らなかった。六章の、いまの現実のほうが恐い。また世界は戦争へと向かっているような気がする。そのきっかけがこのアジアになりそうだと思ったのは気のせいか?
    いつまでも同じ世界情勢ではいられない。
    集団自衛権でいろいろ言われてはいるが、この章を読むと、そして、アメリカが弱体化し、中国が国際法を領土、海洋を奪い始めているいま、ゆったりとした戦後のアメリカ植民地化している平和から国家として、まともなものにならなきゃ、と思う。
    福島原発についても書かれている。原発が日本にあることで、日本はすぐにでも核保有国になれる、ということが、他国への抑止力となっていると他の本で読んだし、納得はするが。だがごみ箱のない放射性物質をまきちらすのもね。

  • 色んな観点から。

  • 原爆投下に関する話は面白い。

    読みやすい文章かと言われると、?な感じ。
    結論部分(筆者の主張)が、ちょっと微妙というか乱暴?

    でも日本人なら知っておかないといけない内容。

  • かなり細かく当時の原爆を落とす流れを書いてくれてる。原爆投下の記憶が強いが被害だけなら東京大空襲も同じくらいくらってたんだ。オイラまだまだ勉強が足りんぜよ

  • 「戦争を早く終わらせるため」という言説がウソだという立場で原爆が日本に2発落とされた経緯を細かく解説。
    また、原爆にとどまらず、東京大空襲についても、当事者のインタビューやさまざまな資料を通して、その意味を問うている。

    戦後、ただただ「祈り」を続け思考停止状態の日本はこういった事実からは目を背けていることがよくわかる。

    最終章では、原爆からの議論を少し離れ、中東・アジアの不均衡な情勢について解説されている。
    そして、日本がいま何をすべきかについての提言もなされている。

    また原発運用の是非についても反反原発の立場から冷静に解説を加えられている。

    下に【目次】を挙げておいたが、それだけでも興味をそそられるでしょう?
    こう言ったことをゴッソリと置き忘れてきたのが、戦後日本の教育。

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    【内容紹介(amazonより)】
    日本人が毎年の夏、半世紀以上にわたって「二度と原爆の過ちは犯しません」と祈りを捧げている間に、世界では核兵器を持つ国が増えている。そうしたなか、日本は平和憲法を維持し、核兵器を持たないと決め、原子力発電もやめようとしている。だが、それで本当に悲劇は繰り返されずに済むのだろうか。
    著者が日本に帰国すると、若い人々が口々に「理由のはっきりしない閉塞感に苛立っている」と述べ、日本国家に対する不信感を隠さないという。そこで著者は、本書の「まえがき」で、こう綴る。「日本はいまや原点に立ち戻り、国家と戦争、そして核について考えるべきときに来ている。日本が変わるには、考えたくないことでも考えなければならない」。
    アメリカは何を考えて大量殺戮兵器である原爆を製造したのか。なぜ日本に原爆を投下したのか。史上空前の無慈悲な仕打ちはどのように日本に加えられたのか。新たな記録の発掘と新証言をもとに、「真実」に迫る。
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    【目次】
    第1章 真珠湾攻撃前からアメリカは日本への原爆投下を考えていた
    第2章 広島・長崎への原爆投下は人体実験だった
    第3章 皇居・京都への原爆投下も話し合われた
    第4章 日本は軍事的に崩壊していた
    第5章 それは日本に対するホロコーストだった
    第6章 祈るだけでなく抑止力を持つことが必要である
    あとがきに代えて―日本は何をなすべきか
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  • 先の大戦で、アメリカはどうして日本に二発の原爆を落とさなければならなかったのか。

  • 昔からアメリカが原爆を落としたので、戦争が早く終わったと言われてきましたが、果たして本当はどうだったのでしょうか。この本では日高氏が、非公式記録の内容や関係者の新証言をもとに「ウソであった」と結論づけています。

    また、原爆投下にいたるまでに、米軍が日本の殆どの中都市以上に対して行った空襲についても記述されていて、「ホロコースト」に近いとしています。

    また、日本に投下された原爆は種類が異なり(ウラン型、プルトニウム型)で兵器開発の実験であった(p73)ということは驚きでした。

    今年(2012)で終戦から67年が過ぎ、当時の様子を知る人がどんどん鬼籍に入っています、関係者がいなくなる前に、関係者の人には本当のことを次の世代に伝えていって欲しいと思いました。

    以下は気になったポイントです。

    ・三発の原爆の製造に成功したのは、1945.5月であった、原爆製造について学者たちは1940年に5年程度必要と述べているが、正確に予測していた(p26)

    ・B29に相当するスーパー爆撃機を作るように要求したのは陸軍のアーノルド中将、当時は陸軍の航空部隊が爆撃を行っていた(p28)

    ・原爆にはおよそ20億ドルが費やされたが、B29の製造には30億ドルかかったと言われている、B29の製造に成功した結果、アメリカは原爆による日本爆撃が実現できるようになった(p29)

    ・B29はグアム島から3000キロあまり飛んで日本を爆撃した、合計3970機を生産した(p30)

    ・スミスレポートには、マグネティックの研究がオークリッジで行われたこと、ウランの気体化による濃縮技術の研究、ハンフォードで行われたプルトニウムの精錬方法について書かれている(p41)

    ・アメリカ人が真珠湾攻撃と日本との戦争について、ドイツとの戦争、つまり白人同士の戦争とは異なる価値観で考えていた(p51)

    ・アメリカには原爆を使うべきではないという指導者(空軍司令官になるカール将軍、アイゼンハワー大統領、物理学者のアーサー博士等)も多くいた(p61)

    ・3発の原爆のうち、1発目のトリニティは実験(ニューメキシコの砂漠)で使用、残りはウラン235を使った「リトルボーイ」、プルトニウムを使った「ファットマン」であった(p67)

    ・投下実験は、爆弾の完成度から、まず砲撃型点火装置の原爆リトルボーイ、そして、爆発型のファットマンを使うことになった(p72)

    ・1945春までに日本国土は爆撃し尽くされ、人口5万人以上で残されているのは、広島・長崎・小倉・新潟のみ(p79)

    ・当日の広島は、午前8時、広島のレーダーは侵入してくる米軍機が3機以上でない小規模なので、警報が取り消された(これは私の母親の記憶と同じ)(p81)

    ・アメリカ陸軍の工兵隊とは、エリートでアメリカ陸軍士官学校のトップ5%から選ばれる、その次の5%が騎兵隊で、戦車部隊や機甲科部隊の幹部となった(p88)

    ・真珠湾攻撃は軍事基地に限定されていた事にに対して、広島・長崎の原爆投下は無防備な市民を殺傷したことは異なる(p89)

    ・太平洋戦争以前、アメリカが領土を拡大するために、メキシコやスペインに仕掛けた戦いの殆どが奇襲攻撃で始まった(p91)

    ・オリンピックは、九州南部に対する上陸作戦で、1945.11.1に発動し、投入するアメリカ兵は82万人弱、「コロネット」は、その5か月後に、東京周辺の海外に対する上陸作戦で、118万人程度の参加の予定であった(p108)

    ・リトルボーイは、水が入れば爆発、ファットマンは完成した形で運べば一定時間で活性化するので、部品に分けて運ぶしかなかった(p124)

    ・原爆の部品を運んだアメリカ第5艦隊の旗艦「インディアナポリス」は部品を運び終えた後に、日本の潜水艦伊58により撃沈された(p125)

    ・日本はアメリカ軍の長距離爆撃機に対する防空態勢を十分にとっていなかった、航空戦は特攻隊だけに頼るという戦術に終始した(p136)

    ・原爆投下までに、アメリカは日本の人口5万人以上の26都市をすべて爆撃し、10万トン近い爆弾、焼夷弾を落として、50万人以上の市民を殺していた、広島・長崎の死者の合わせて10.5万人の5倍近い数(p140)

    ・日本陸軍の首脳は、250万人の第一線兵力、400万人の予備役兵、2800万人の国民を招集して戦えると豪語していた(p144)

    ・アメリカ潜水艦隊は、空母機動艦隊や水上艦艇をはるかにしのぐ力を見せた、288隻の潜水艦で、日本の軍艦を201隻撃沈した、戦艦1、大型空母4、小型空母4、重巡3、軽巡8、駆逐艦43、大型潜水艦23(p153)

    ・アメリカ軍の作っていた基本戦略で、日本はオレンジ、ドイツは黒、赤がソビエト、ブルーが青(p160)

    ・1939年、アメリカは3000万バレルの石油を売ったが、これは日本が消費する量の93%、1941年まで売り続けた(p164)

    ・日本はやみくもに戦線を拡大しながら、物資補給のシーレーンを確保できなかった、そのためボルネオから原産地に向かう輸送部隊が簡単に沈められた(p185)

    ・3.10の東京大空襲は、1666のロンドン大火、1906のサンフランシスコ地震、ドイツのハンブルク、ドレスデンに対する爆撃をはるかに上回る大きな被害を与えた(p193)

    ・日本航空隊は、新しい航空機をつくりだしていた、皮肉にもB29に対抗できる飛行機も製造していたが、戦うほうの態勢が整えていなかった(p207)

    ・福島原発で最も致命的だったのは、「原発は安全だ」という宣伝のもとで、事故が起きたときの訓練を行っていなかった(p249)

    2012年8月18日作成

  • この本でとても勉強になりました。

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著者プロフィール

1935年、愛知県生まれ。東京大学英文科卒業。59年、NHKに入局。外信部、ニューヨーク支局長、ワシントン支局長、米国総局長を歴任後、ハーバード大学客員教授に就任。現在はハドソン研究所客員研究員として日米関係の将来に関する調査、研究の責任者を務める。著書に、『アメリカは中国を破産させる』(悟空出版)、『米中時代の終焉』(PHP研究所)、『習近平の核攻撃』(かや書房)など多数。

「2022年 『破れたアメリカの「核の傘」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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