死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (380ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569808352

感想・レビュー・書評

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  • 震災以来2年が過ぎ忘れかけていた当時の記憶がよみがえってくる。

    極限状態の現場で、使命感と仲間への想いから決死の作業に取り組み、日本列島を破滅から救った人びとの行いは、これからも語り継いでいかなければならない。

    不作為と怠慢によってこの危機をもたらした政府、東電経営陣の責任を厳しく糾弾すると同時に、先の大戦でも明らかであった、ありのままの現実を見ることなく、希望的観測と身内にしか通用しない論理を振りかざすことによって全体に対する多大な損害を及ぼす構造を、今後いかに変えていくかを相当の覚悟を持って議論していかなければならない。

  • あの福島の原発事故が甚大な被害をもたらしたのは言うまでもないが、それでもあそこで食い止めることができたのは、ひとえに、あの現場で、文字通り命を懸けて闘い続けた人々がいたからだ。
    彼らがいなければ、今頃日本は、人間の住むことができない国になっていたかもしれない。

    刻一刻と惨状が伝えられたあの現場の中、決死の覚悟で闘っていた人々がいたことはわかってはいたが、人間の限界を超える過酷な状況にありながら、こんなにもすべてをなげうって使命を果たそうと体力と気力の限りをつくしてくれていた、その事実を改めて目の当たりにして、胸が震えた。

    原子力安全委員長の斑目氏が、委員会の廃止に際して語ったというこのことばを、決して忘れてはならない。
    「原子力安全を確保できるかどうかは、結局のところ”人”だと痛感している」

    どんな先進技術であっても、必ず最後は人の手に委ねなければならないなら、制御できないものに頼るべきではないと、やはり思う。
    誰かがやらなければならない。その誰かは、ロボットでもなんでもない、家族があり夢があり思いがあり喜びも悲しみもある、命ある人間なのだから。
    そのことを忘れてはならない。

  • 当時の現場状況がよく分かリました。
    筆者が指摘している慢心、日々の仕事でも教訓としたいと思いました。

  • こんなことがあったなんて。
    想定外で済ませてしまうけど、原発は一度事故を起こしたら、国が滅ぶかもしれない。
    こんなのはやめなくてはいけない。

  • あの時あの場所にいた人達留まった人達そして向かった人達。その覚悟と決意にただただ頭を下げるしかない。
    何も知らずに電気を空気のように使う毎日。彼等の努力があってこそのこの毎日なのだと痛感した。ならばせめて福島の復興に役立つことがしたいと素直に思う。私にできることは微々たることだが…しないよりは私自身が救われる。

    現場の話とは別にこの国の行き当たりばったり、採算性だけを考えて突き進んできた原発事業というものはおかしいと考えざるおえない。原発というものがどういうものなのか、一度暴走が始まったらどうなるのか、今も続く処理水などの問題。エネルギーを得たいという巨大な欲望は飽くことをしらない。私自身今電気がなくなったらと思うとどうしようもない不安しかない。どうしたらこの欲望と折り合い安全なエネルギーを生み出せる方向に向かえるのだろうか。

  • 言わずもがなですが、フクシマ50の原作。
    映画を見たことがあったけど改めて手に取る。
    映画では知り得なかった事実が色々あり、まさに人間の究極の状況における葛藤などの中、揺るぎなき信念で、たまたま私たちは救われたのだと思いました。
    吉田所長をはじめ、みなさまの働きに 感動するとともに深く感謝いたします。

  • とても小説に入り込んで、引き込まれて読みました。特に最終部分の原発にて津波で亡くなられたご家族のお話には涙が出ました。門田さんは本当によく取材されてれいると思う。あの時福島原発で何が起きていたか。必死で原発を守った方々の勇姿が描かれている。
    それにしても、政府の対応は良くなかっただろう。

  • 映画「Fukushima 50」がなかなか興味深かったので、その原作である本書を読んでみました。

    ちゃんと確認できていないのですが、本書の中での原子炉内の圧力の値(キロパスカル単位での表記)は、おそらくすべて間違っていると思いますので(正しくは、もう1桁大きい値になると思います)、原子炉内の圧力については「設計圧力の○○倍」といった記述のみを拾えばよいと思います。

    上記の数値の件からも推察できると思うのですが、理系的な観点からは物足りない部分がありますし、この本の内容のすべてが真実だとは限らないものの、東北地方太平洋沖地震により、福島第一原発でどのようなことが起こっていたか(起こった現象とその対応など)を知るには、よい本だと思います。

    当時の福島第一原発での出来事を美談にするのは問題だと思いますが、その一方で、吉田昌郎をはじめとして、命がけで対応に当たってくださった方が何人もいたことも事実。

    本書は、今後の原発のあり方を考える上では、貴重な資料になりうるかもしれませんし、日本人としては、これぐらいは知っておいた方がよいかも、と思いました。
    また、この本を読んで、スリーマイルとチェルノブイリについても、もっと知っておくべきだと反省しました。

  • 好きな俳優の佐藤浩市さんと渡辺謙さんの共演で映画化されることになったと知り、この本を手に取りました。福島第一原発事故の事は、テレビや新聞などで報道されるような事しか知らなかったので、本当に衝撃的でした。現場で対処されてた方々の命懸けの行動には頭が下がります。自分の命を懸けてでも、家族を、福島を、そしてこの日本という国を守るという強い気持ちと勇気ある行動は、大平洋戦争の前線で戦ってくれた先人方と重なりました。最初から最後まで、ずっと涙・涙の読了でした。映画館でも号泣しそうです。

  • 東日本大震災後に起こった大津波によって福島第一原発は危機に直面した。チェルノブイリの10倍の大事故に発展する恐れのあった原子力のメルトダウンを可能な限り事故を最小化しようとした人たちの生死をかけた仕事ぶり。生きているということは、人は何かに生かされていくこと、何かに引き寄せられるように生きていくこと、その中で自分の志を立て、次の世代にバトンを渡していくのだと思います。

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著者プロフィール

作家、ジャーナリスト。1958年、高知県生まれ。中央大学法学部卒業後、新潮社入社。『週刊新潮』編集部記者、デスク、次長、副部長を経て2008年独立。『この命、義に捧ぐ─台湾を救った陸軍中将根本博の奇跡』(集英社、後に角川文庫)で第19回山本七平賞受賞。主な著書に『死の淵を見た男─吉田昌郎と福島第一原発』(角川文庫)、『日本、遥かなり─エルトゥールルの「奇跡」と邦人救出の「迷走」』(PHP研究所)、『なぜ君は絶望と闘えたのか─本村洋の3300日』(新潮文庫)、『甲子園への遺言』(講談社文庫)、『汝、ふたつの故国に殉ず』(KADOKAWA)、『疫病2020』『新聞という病』(ともに産経新聞出版)、『新・階級闘争論』(ワック)など。

「2022年 『“安倍後”を襲う日本という病 マスコミと警察の劣化、極まれり!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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