近代の終わり 秩序なき世界の現実(「世界の知性」シリーズ) (PHP新書)

  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569851150

作品紹介・あらすじ

ファンタジーランド、ヘイトクライム、AI兵器…世界の識者が、コロナ禍以降、新たな人類の脅威となるテーマについて警鐘を鳴らす。

感想・レビュー・書評

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  • 東2法経図・6F開架:304A/L57k//K

  • 1 アジア人への暴力と憎悪の民主化(ブライアン・レヴィン)
    アジア系女性への暴行が広がっている
    アジア系以外への人種犯罪も増加
    三十代男性の犯罪者が多い傾向
    非現実的な陰謀論から生じる非難合戦
    ソーシャルメディアで拡散されるステレオタイプ
    予防の観点が抜けていた

    2 「ファンタジーランド」と化すアメリカ(カート・アンダーセン)
    「真実」や「現実」を創作できるという信条
    過激で極端な解釈を掲げる超自然的な宗派の台頭
    反エリート主義はアメリカの国民性の一部
    個人主義が間違った方向に加速した
    人びとの不安が陰謀論を生み出す

    3 北朝鮮の核攻撃に弱い国はどこか(ジョージ・フリードマン)
    アメリカ人の大半が抱く政治への不信感
    階級間の戦いはしばらく続く
    経済・社会活動を軽視する専門家への反発
    アメリカは危うくなるのも再生するのも速い
    米中は軍事衝突するのか
    日本は安全保障上の戦略を示すべき

    4 自由主義的覇権は幻想だった(イワン・クラステフ)
    アメリカ軍のアフガンからの屈辱的な撤退
    アメリカの脆弱性を露呈させた9.11
    自由主義的覇権の危機
    パンデミックで人びとの死に対する意識が変化した
    医薬品は近郊で生産してほしいと欧州人は考えている
    存在感が増すミドルパワー
    Euの多様性はリスクとなるか
    米中対立が沈浄化することはない

    5 パンデミックが加速させた米欧の分断(アダム・トゥーズ)
    経済回復には金融政策に加え、大規様な財政政策が必要
    現代貨幣理論の正しさと限界
    ワクチン配布における政治の大失態
    ヨーロッパ経済の回復はスピード感に欠ける
    中国がアメリカとの軍事競争から引き下がることはない
    経済の未来を担う者たち
    分断に向かうアメリカと欧州経済

    6 外国貿易反対派の抗議の歴史(ヴァレリー・ハンセン)
    グローパリゼーションの起源を大航海時代とするのは遅すぎる
    コロンプスより先にアメリカ大陸に上陸したバイキング
    一帯一路構想で覇権を狙う中国の拡張主義
    西暦一000年当時の反グローバリゼーション暴動
    各国の政府が独自に講じる貨困陪への救済措骰には限界がある
    人類はこれまでとは違う生き方をしなければならない

    7 健常者優位主義を乗り越えられるか(ジョージ・エストライク)
    出生前診断の倫理的課題
    分離教育自体が問題をはらんでいる
    遺伝子細集が抱える危うさ
    障害がある状態という「一線」はない
    誰しもが「障害の地」に渡る可能性がある
    対話の中心として節害者自身も参加すべき

    8 地球の大都市が化石になる日(デイビッド・ファリアー)
    世代を超えて影響を及ぼす地球へのダメージ
    数万年後は道路は残っていない
    ニューヨークを守るには周りに防水壁が必要となる
    ムンクの「叫び」を放射性核廃棄物の保管所の目印に?・
    加速する生物多様性の減少度
    人類の環境の支配がウイルスに進化の道を開いた
    インターネットは大批のエネルギーを消耗する
    エピローグ―パンデミックがもたらした壮大な実験

  • <目次>
    プロローグ人類の未来は明るいか
    1ブライアン・レヴィン アジア人への暴力と憎悪の民主化
    2カート・アンダーセン ファンタジーランドと化すアメリカ
    3ジョージ・フリードマン 北朝鮮の核攻撃に弱い国はどこか
    4イワン・クラステフ 自由主義的覇権は幻想だった
    5アダム・トウーズ パンデミックが加速させた米欧の分断
    6ヴァレリー・ハンセン 外国貿易反対派の抗議の歴史
    7ジョージ・エストライク 健常者優位主義を乗り越えられるか
    8デイビット・ファリアー 地球の大都市が化石になる日
    エピローグ パンデミックがもたらした壮大な実験

    秩序なき世界の現実

    P138グルーバリゼーションの起源を大航海時代とするのは
    遅すぎる
     15C半ばではなくて、1000年代(中国なら宋代)

    雑誌VOICEの連載記事のまとめ本

  • 本書でインタビューされてる人たちの著書を是非読んでみたいと思いました。

    プロローグー人類の未来は明るいかー
    いまこそ現実を直視せよ
    我々はいま「近代の終わり」という歴史的結節点を迎えているのではないかという思いにとらわれた。近代を一貫して特徴をづけてきたグローバリゼーション、その元になっていた理性、認識、秩序といったものへの信頼が大きく揺らいでいる。これこそ現在の我々が感じる漠然とした不安の正体なのかもしれない。
    その先にある人類の未来は明るいのか、あるいは暗いのか……。読者の皆さんが識者の意見に賛同する しないは別として、きっと新しい視点をこの対話から学べると思う。その学びを共有することができたら望外の喜びである。

    ブライアンレヴィン
    ソーシャルメディアで拡散されるステレオタイプ
    予防の観点が抜けていた

    カートアンダーソン
    「ファンタジーランド」と化すアメリカ
    「真実」や「現実」を創作できるという信条
    個人主義が間違った方向に加速した
    人々の不安が陰謀論を生み出す

    ジョージフリードマン
    いまのアメリカにはテクノクラシーや金融に携わる支配階級と、経済的もしくは文化的に負け組になった衰退階級による分裂が生じています。

    専門家には物事を狭い範囲でしか見られないという弱点があります。小さな点では特化しているものの、他へ影響まで注意がゆきわたらない。

    日本は安全保障上の戦略を示すべき
    北朝鮮の核攻撃に一番弱い国は日本だ
    日本が経済規模に相当する軍事的立場を有していないのは明らかです。そのアンバランスは今すぐにでも修正する必要があります。
    海上交通路を確保できる軍事力を持つことです。大きな問題は、原材料のほとんどを輸入に頼っていること。国益の基本は国の存続に不可欠である原材料へのアクセスの維持です。
    軍事的に弱く豊かな国というのは非常に危険な立場にある。
    そこで戦略に基づき軍事力を築いていくことになりますが 、日本の場合、自衛隊という形はあっても、その戦略が見えてきません。もし戦略があるのであれば表に出すべきです。
    北大西洋地域、マラッカ海域における海上交通路を確保することが大切だ。それを事実として認識している。ならばどうしたらいいのか、それを外に向かって表明していないことには、我々にはその戦略が伝わりませんし、具体的にどう武装したらいいか 話し合うこともできません。
    日本には第二次世界大戦で敗北した トラウマがいまだにあり、それゆえに権威を持ってアメリカと話ができない立場にあります。また今や中国の方が強力な軍事力を有しているため、中国に対しても強く主張することには躊躇がちです。南北朝鮮に対して さえ強く出られないでいる。

    北朝鮮は自分たちが生き延びることに最も関心を持っています。そのためには核保有が必要不可欠な策であると考えている。
    もしも北朝鮮が他国への攻撃を目論んだ場合には、核ミサイルの射程内でなおかつ軍事的に脆弱な国はどこであるか、日本は自分たちが置かれている現実を直視しなければなりません。

    イワンクラステフ
    アメリカ軍のアフガンからの屈辱的な撤退
    政府軍の士気喪失は決定的に重要な要素でした。 状況の把握において最も難しいのは当事者の動機であることを我々はまざまざと再認識させられました。

    今後10年で起こることが予想されるのは、自国だけで地政学的なプレイヤーになるこりとはできない、トルコ、ロシア、インド、日本、EUといった ミドルパワー 国家の活動の活発化です。
    今後大きな変化が見られるのは国家同士の関係よりむしろ、身近な社会の中でしょう。我々の社会の中で起きている変化に注目が集まるのです。今後は 地域の現状に即した 調整が進むため、世界秩序よりも地域秩序が大きく変化し、多元的な世界が訪れるでしょう。

    日本は米中対立の狭間で、今後想定される 舞台はアジアであり、日本があらゆる場面で自前で対処できるよう政策面で軍事化しても私は驚きません。 今や戦争も定義が以前と相当変わっています。現在のサイバー戦争や経済戦争の観点から見れば昔の戦争観にとられていてはいけないでしょう。
    また日本は少子高齢化という大問題に直面しています。

    アダムトゥーズ
    分断に向かう欧州とアメリカ
    ヨーロッパ経済の回復はスピード感にかける
    世界が変わりつつある事実を認識しなければならない
    経済の未来を担う人物、学者たち
    ジェロームパウエル、イザベルシュナーベル、クリスティーヌラガルド、ギータゴピナート、ジョシュメイソン、ダニエラガボール

    ヴァレリーハンセン
    グロ−バリゼ−ションの起源を大航海時代とするのは遅すぎる
    ヨ−ロッパの歴史家は以前より、西暦一〇〇〇年に大きな関心を持っていた
    西暦1000年頃に中国と中央アジアの歴史、バイキングスカンジナビア人がカナダに上陸したこと、中国からインド アラビア半島 アフリカに至るまで海上交易でつながったこと、西暦1000年頃に世界でなにかがおきている。
    内藤湖南は宋朝を近代のはじまりと見ていた。
    欧州中心主義ではなく、西暦1000年頃から始まる 宋朝こそが近代史の起源。
    バイキングが1000年頃までにアメリカ大陸北東部だけでなく、ユカタン半島にまで到達していた証拠が出てきている。
    「戦士の神殿」の壁画に描かれている捕虜は、ブロンドで目の色が明るく、肌の色は白い。

    ジョージエストライク
    健常者優位主義を乗り越えられるか

    デイビィッドファリアー
    「人新世」に生きる人類の避けられない未来
    我々のほとんどはどれほど先のことを考えてもせいぜい数年後、「将来の夢」という場合は十数年先のことまでは想像するだろうが、それでも10万年後の地球となると思いをはせる人は皆無といえる。
    「いま」は未来からみれば「過去」である。「人間がやることで影響のないものなどなく。すべては繋がっている」「ディープタイム」という地質学的スケールから我々の「いま」の行動を顧みる重要性がわかる。

    何千世代にもわたって、あらゆるものの中に人類の痕跡が残り続ける。

    近所の現象から書き始めることは、自分が住む場所の未来の化石を見ることにつながります。

    マルコポーロがクビライ・カーンとの最後の謁見の際に述べた言葉「あらゆる形がそれぞれ自分の都市を見いだすまでは、新しい都市が生まれつづけることだろう。そして、あらゆる案が出尽くし、形が崩れるとき、都市の終末が始まる。」
    都市は人類がつくり出したとてつもない 産物です。100年前には想像もつかなかった都市の姿が今目の前にある。そしてこの先も都市が築かれていくことに希望を感じさせてくれるのがこの言葉なのです。

    生物多様性は危機に瀕しており、人類は生物の管理人ではありますが 王様ではありません。いかに生物絶滅を阻止する方向に舵を切れるか。未来の化石記録には我々が絶滅の危機をどこまで放置したかがしっかりと残るのです。

    いま見られる 進化のほとんどは、人為的な変更が加わられた結果だと、さまざまな研究の中で言われています。
    私たち人類が他の種の分布域やその行動、場合によってはその外見に変更を加え、生態系を変えてしまったせいなのです。
    本来であれば長い時間をかけて起こる変化が人の一生のうちに起こってもおかしくない。そう思うと不安を覚えずにはいられませんが、 一方で、我々がすぐに変化を起こせるという点には希望を持っていいと思います。

    インターネットは目に見えない空気のようなものです。世界中至るところで利用でき、そのデータはクラウド化していると言いながら実際には実体を持った巨大なデータセンターの中で保管されている。これらのセンターは世界各地にある。
    人間がやることで 影響の出ないものなどなくすべては繋がっている。この深いところでのつながりをまず理解することが変化への第一歩です。

    大事なのは、我々がいまやっていることの影響がどれだけ長く残るか忘れてはならないということです。自分の身の回りにあるものの行為でもその影響は10万年後まで残るかもしれない。

    我々が時代のレガシーを残すという事実を思い起こさせてくれるものに囲まれているのは幸運だと思います。未来の化石になる可能性がある物質に囲まれているからこそ、それをきっかけに未来にどのような化石を残したいかを考えることができるし、考えなくてはという気になれるのです。あなたが行うことの帰結として未来を生きる子孫の生活が変わってしまう。その視点から考察を続けることはとても価値があるのです。

  • 欧米の視点からコロナ後の世界情勢を8人の識者が語る内容。各テーマ毎に最新のトピックがコンパクトにまとまっており、とても参考になり有益である。ただし「近代の終わり」という題名はちょっと大げさというか違うかなという印象。また、ウクライナ問題が起きる前の見解なので、その後世界情勢も大きく変化している事には留意する必要がある。気になったワードとしては「憎悪の民主化」「自由(主義)の暴走」「日本には社会契約があるが中国にはない」「模倣の時代(&アンチ自由主義)」といったあたり。今後も考察すべき主要テーマとしては、ネット社会、米中対立(自由主義vs権威主義)、生命・環境倫理の動向といったところか。

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