- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569851396
作品紹介・あらすじ
子どもたちの遊び場が次々に消失し、体を使って外で遊ぶ子どもの姿を見なくなった。自殺する子どもも、後を絶たない。子どもは本来「自然」に近い存在だと論じる解剖学者が、都市化が進んだ現代の子どもを心配に思い、四人の識者と真摯に語り合う。
医療少年院で非行少年の認知能力の低さに愕然とし、子どもの認知能力の向上に努めてきた宮口幸治氏。インターネットで「正しい育児法」を追いかける親を心配する、慶應義塾大学病院の小児科医、高橋孝雄氏。国産初の超電導MRIを開発し、子どもの脳の大規模研究を行なってきた小泉英明氏。生徒が自分で野菜を育て、机や椅子も作る学校、自由学園の高橋和也氏。子どもと本気で向き合ってきた経験から紡ぎ出される教育論。
●「『ああ、そうだったの。でもあなたにも問題があるんじゃないの?』みたいなことを言ったら、一発アウトです。子どもは自分の話を否定されたことで、大人が思っている以上に傷つきます」(宮口幸治)
●「私はかねてより、『親は自分の願望を子に託すな』と訴えています。『こういう教育をしてやれば、自分にはできなかったこんな夢が実現するのではないか』というような気持ちが強すぎる」(高橋孝雄)
●「幸せのポイントは『共感』能力、言い換えれば『温かい心』(Warm-heartedness)を育むことにある、それこそ子どもたちが幸せになるための教育の最終目標であると考えています」(小泉英明)
●「結果が自分に返ってくることばかり求めていると、自分の利益になることだけをしようという発想になります。自分を超える価値や理想に触れていくことが、未来の社会をつくる生徒たちが育つうえで大切だと、私は思っています」(高橋和也)
●「何もかも手に入るわけではないけれども、生きているだけで満足できる。そんな状況を、生まれてくる子どもたちに対してつくってあげないといけないでしょう。何も難しいことではありません。親が子どもに対して『あなたたちが元気に飛び跳ねていてくれればいい』とさえ、願えばよいのです」(養老孟司)
感想・レビュー・書評
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養老孟司が「教育の壁」に警鐘を鳴らす 新刊『子どもが心配』で伝える人として大事な力 - SankeiBiz(サンケイビズ):自分を磨く経済情報サイト
https://www.sankeibiz.jp/smp/business/news/220217/prl2202171357145-s1.htm
養老孟司×『ケーキの切れない非行少年たち』宮口幸治 子どもが幸せになるための「三つの力」とは[新書ベストセラー] | ニュース | Book Bang -ブックバン-
https://www.bookbang.jp/article/727622
子どもが心配 | 書籍 | PHP研究所
https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-85139-6
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#子どもが心配
#養老孟司
#PHP新書
#読了
「子育ての目標を進学や就職とリンクさせすぎるために、本来目標とするべき『成熟した人間像』が描けないのかもしれません。」(88ページ)その通りだと感じます。本質を見る目を養わなければ。より良く生きるとは。 -
一番心に残ったのは、子ども時代は大人になるための準備期間と捉えていると、いつまでもいまが楽しめないと言う話。その感覚すごくわかる。受験時や社会に出てから、日本における学歴の重要さを身をもって感じているので子育てにおいても社会人をゴールとした子育て競争という意識が抜けなかった。それだといつも比べて急いでしまうね。心から笑ったりいまを子どもと一緒に楽しみたいと思った。
なお三つの力とは、認知能力、共感力、自分の頭で考える力。自然の中で育てられるというのが養老先生の考え方。 -
"バカの壁"を読んでみたいと思い、図書館で検索をかけたところ、この本が出てきたので借りてみた。(バカの壁は出てこなかった…)
対談形式で読みやすく、2.3時間で読了。
自分が常日頃から大切に思っていることが語られていたりと非常に興味深かった。
1章では、非行に走る子どもの特徴に焦点が当てられていて、親としての関わり方を再認識した。
非行に走らないような子どもにするため!!という短絡的で即物的なことではなく、子ども一人一人が幸せを感じながら生きられるように全ての親が接することが出来れば良いなと思う。
2章ではまた別の切り口から子どもの話をしていて。
少子化の話がとても興味深かった。
なぜ少子化になるのか。
ということに関して、一般的に裕福な社会になるほど出生率は減るものだということらしいが、そういうことではなく、「立派な大人に育てなさい」というプレッシャーが「子供を産み育てたい」という本能に勝ってしまう。というのは大いに納得のできる目から鱗のエピソードだった。
これは特に都心部…中学受験が盛んな地域で暮らす人たちや自身もゴリゴリの学歴社会で育ってきた人たちならすごく共感出来るのではないか。
かくいう私も、子どもがまだ幼稚園に入る前からずっと中学受験のことばかり考えていたし。
でもここ数年はもうそんなことは思っていない。
本質に気づけたから。
子どもは大人の願望を叶える道具じゃない。
子どもには子どもの人格があり、やりたいことがあり、価値観も好みも能力も全く親とは違う。
子どものためとか言いながら親である自分自身が安心したいだけなんだ。
親にできることなんて子どもを一生懸命観察して、子どもの"やりたい気持ち"を見守りながら支えてあげるだけ。環境を整えてあげるだけ。
これだけ。
あとは、"成熟した大人とは、共感する力がある人"はとても良かった。
"共感力"は自分が子育てをする中でとても大切にしていて。
共感って凄い。子どもに対して行えば、子どもは圧倒的な安心感と信頼感の土台をもって何かに挑戦する勇気を得ることが出来る。
社会の中で大人に対して行えば(年齢で区切る意味は全くないけど)「この人には話せる」っていう安心感と信頼感が生まれて、より良い関係や環境を作れると思う。
私はずっと親から共感されたかった。
共感されたかったし肯定されたかった。
年齢が上がるに連れてどんどん冷たくなっていく社会の中で、家の中だけは大好きな場所であって欲しかった。
それがなかった私は子どもを産むまで本当に精神的に死人も同然だった。
昔のやり方みたいに、上下をハッキリさせるのって上はただただ楽だよね。
思い通りにいかなかったら殴って怒鳴って罰を与えれば、力のない子どもは従うざるをえないんだもん。
心も目に見えれば良いのにね。
そんな風に育てられた子どもは徐々に心が弱っていって気がついたら心が死んでるんだよ。
でも外からは見えないから、「ここまでよく立派に育て上げた」なんていけしゃあしゃあと言えるんだ。
身体だけ大人になっても心は死んでても良いんですか?
自分が子育てをしていて、やっぱりいつもなんで?どうして?そんな風に育てたのって思わざるを得ない。
こうやって本を読んで、読む度に自分の今の子育てを振り返って確認してる。
長くなったけど。
4章の"形式的に物事を押し付けられて育った子どもは〜"の箇所。本当に心の底から共感でしかなかった。
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副題についている三つの力とは「認知機能」「共感する力」「自分の頭で考える人になる」とういうこと。それぞれ、僕もとても大切だと感じている。もちろんそれは、小泉さんをはじめいろいろと読んできた中で感じていることだから、当たり前のことではある。本書は4人との対談で、どれも養老先生がそれぞれの専門家から話を聞くというかたちになっている。だからいつもの養老節はやや弱め。それでも、対談相手がみな養老先生を立てているので気持ちよく話はすすむ。だれか、養老先生に「それは違いますよ」とか言える人が出てこないだろうか。落合陽一郎くらいならあり得るか。いま、識者と呼ばれるような人の中では、やはり養老先生がトップだろうか。みな頭が上がらないだろうなあ。と、僕が勝手に思っているだけで、先日も、若い世代と話をしていたら、7人中5人も養老先生を知らなかった。僕もまた、あの「唯脳論」のと紹介してしまったのがいけない。なぜ「バカの壁」と言わなかったのか。僕が養老先生のギャラリートークをほんの1mも離れていなところで聞いたんだと興奮気味に話しても、誰にもその思いは伝わらない。(いや小6の男子が一人「すごい」と言ってくれていた。君が「すごい」。)いま、まえがきを読み返すと、「わずかな栄養を必死で摂ろうとするからこそ、根が広く伸びる」とあった。この話は自由学園の先生との対談の中で出てきたのだったろうか。僕がいつも思っている、戦前・戦中生まれの人たちが長生きしている理由にもなるのではないか。というような研究が出てきたと、最近どこかで読んだ記憶があるが、本書だったか、新聞だったか、ネットだったか、いまとなっては思い出せない。
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大人も心配!そんな残像を残す内容。巷で語られているネットの弊害について、個人の取り組みが必要だなとあらためて考えさせられる(本書でネットについて触れていたわけではないが・・)。
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とても良い本でした。
国産初の超電導MRIを開発した小泉英明先生との対談では、小泉先生が中学時代にガイガーカウンターを手作りしたというエピソードに驚きました。
有名な自由学園がどのような学校なのかもよくわかりましたし、小児科医の高橋孝雄先生との対談は涙が出ました。特に必読です。
「ケーキの切れない非行少年たち」の宮口幸治先生との対談も興味深い点が多く、適度に厳しい、先生のポリシーが良かった。「みんなと同じじゃなくてもいい。自分のやりたいことをやろうというのは大人の勝手な理論でしかない。みんなと同じになるのが大前提で、多様性はそのうえに乗っかっているもの。最近は多様性という言葉を簡単に使いすぎ。」
なるほどなぁと思いました。 -
養老先生と4人の方との対談だが、どれも興味深く素晴らしいフレーズがたくさん!
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学力を伸ばす決め手となるのは、やはりモチベーションですね。
やる気を引き出すためには三つの要素が必要だと思ってまして、それは「見通し」「目的」「使命感」です。
74
「先生のあとにきちんとついていくか」「後ろの方でおしゃべりしながら、列を乱して歩くか」のどちらの行動パターンをとるかについては、遺伝的素因の影響をかなり受けるそうです。
89
「成熟した大人とは、共感する力のある人」だと私は思ってます。
104
義務教育とは、「子どもがイヤがっても、義務として学校に行かせる」ことではない。子どもがに学校に行きたい」と望めば、それを権利として認め、教育機会を与える義務が親にある、ということなんですよね。 -
対談相手は、『ケーキの切れない非行少年たち』や『小児科医のぼくが伝えたい最高の子育て』の著者の方々、幼いころから「測ること」に興味を持ち続けMRIを開発した方、生徒の自主性を重んじる学校の学園長の四名。
本書の副題である「人として大事な三つの力」とは、学びのための「認知機能」、「共感する力」、「自分の頭で考える人になる」ことだという。
否定したり途中で遮ったりせずに子どもの話を聞く。子どもの日常の幸せを考える。親になる心構えとして知っておきたいことばかりだった。
p85
ネットを検索すると、実際、「正しい」と思われる情報がたくさん出てきます。なかでも自分の考えに近く、役に立ちそうな情報を拾い読みしていくと思うんですが、そのときに陥りやすい問題があります。それは、自分が実践している育児と比べて、少しだけレベルの高い方法に「正しさ」を求めがちだということです。
そうなると、もうキリがない。「これは自分より正しい」「こっちはもっと正しい」となって、ネット検索が「正しい育児」という“鬼”を捕まえる“追いかけっこ”のようになる。これが「負け続ける育児」につながってしまうのです。
p92
何もかも手に入るわけではないけれど、生きているだけで満足できる。そんな状況を、生まれてくる子どもたちに対してつくってあげないといけないでしょう。
p93
私はかねてより、「親は自分の願望を子に託すな」と訴えています。「こういう教育をしてやれば、自分にはできなかったこんな夢が実現するのではないか」というような気持ちが強すぎる。
もちろん子どもに期待する親心は当然のものですが、だからといってあれもこれもと押しつけて、日常の幸せを奪っては本末転倒です。「放っておく勇気」も必要なのです。
結局のところ、子どもに後悔してほしくないからではなく、親自身が後悔したくないだけなのでしょう。
p95
そもそも「正しい子育て」なんてないと開き直ってほしいというのが、小児科医としての私の切実な思いです。
p141
たとえば赤ちゃんが食べ物に手を突っ込んで、なかにある何かを取ろうとしているとします。そのときに親や周囲の大人が「手が汚れるからダメよ」と食べ物を取り上げたりすると、赤ちゃんは神経回路を刺激する機会を阻害されたことになります。
https://president.jp/articles/-/55709