魔女だったかもしれないわたし (わたしたちの本棚)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569880648

作品紹介・あらすじ

昔、「人と違う」というだけで処刑された人たちがいた――魔女裁判の話を聞いたアディは、慰霊碑を作ることを提案するが……。

感想・レビュー・書評

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  • 読書感想文コンクール課題図書 高学年の部
    https://www.dokusyokansoubun.jp/books.html

    スコットランドのジュニパー村に暮らすアディには自閉的特性がある。一度気になったことが頭から離れない、他の人に合わせられない、字を綺麗に書くことや勉強も苦手なところがある。
    家族は、両親と、双子の姉キーディとニナ。キーディも自閉的で、アディが通っている中学高校時代はかなり苦労したようだ。今では自閉的特性のことは伏せて大学に通っている。
    もうひとりの姉のニナには自閉はない。それが却ってこの小さな村で、自閉の姉妹とともに暮らす生活に退屈に感じていた。今は大学には行かずにYou Tube動画の投稿をしている。

    アディの通う高校でも、彼女に理解を示すクラスメイトや教職員がいる反面、キーディのこともアディのことも「面倒事を起こすやっかいな生徒」と扱う人達もいる。
    アディは自分の自閉的特性を語る。周りに合わせられない共感性が弱いと思われることがある。だがそれは共感性が弱いからではない、むしろとても強いのだ。

    アディは、村の歴史の授業で「かつて魔女として処刑された女性たちがいる」ことを知り、彼女たちのことが頭から離れなくなる。
     魔女として亡くなった人たちの想いは誰が受け止めるの?私も人から違うと言われている。この時代に生きていたら私も殺されていたの?

    アディが行き着いた考えは、村に慰霊碑を作ってもらうことだった。
    自分たちのこの村で、魔女として死ななければいけなかった女性たちのこと忘れないでいてほしい、そのために慰霊碑を作って欲しいと願い、村の委員会に訴える。

    だが委員会からは冷たい反応しか返ってこない。
     またこの厄介な娘がなにか言い出した。この村で、昔、無実の女性たちを魔女として死なせたなんてことをわざわざ掘り起こして公表する必要があるのか?

    アディは繰り返し繰り返し学校や家族や村人たちに訴える。徐々にアディの後押しをしてくれる人達も出てくる。両親や、同じ自閉的なキーディ、そしてニナも心を打ち明け合うようになる。

    そしてアディは教会で行われる村の集会でスピーチをする機会を得る。
    アディは自分が自閉の特性を持っていること、自閉とはどんなものなのか、そして自分が人と違う考え方ができてよかった、と語る。

    このスピーチは村人の心を動かす。
     人には色々な考え、事情がある。
     魔女の慰霊碑を建てることは、ただ過去の罪を曝け出すためではない、彼女たちの想いを忘れないこと、同じことを繰り返さないための、明るい未来のための行為なのだ。

  • 勝手にほんわかファンタジーだと思い込んで借りてみたら全然違った。このパターン、かなりの頻度で起きているような…。
    自閉症のきらいのある主人公は、自分の住んでいる町で、かつて魔女裁判にかけられ、不当に殺されてしまった人たちがいることを知る。
    すこし周囲と違う自分と重ねあわせ、彼女たちの名誉を回復し慰めるために、慰霊碑を作ることを思い付く。
    日本より海外の方が、「周りと違う」ことを認め、サポートする体制も整っているように感じていたので、先生の対応やクラスメイトの仕打ちに心が暗くなってしまう。
    最後は明るく終わっているが、彼女の学校生活の根本は変わっていないようにも思える…あの先生どうなったの?とか、問題はまだまだ残っているような。
    多様性を受け入れられる自分でありたいとは思った。

  • 昔、人と違うだけで処刑された人たちがいた。

    その事実を知ったアデライン(アディ)は、処刑された人たちの慰霊碑をたてることを村の委員会に提案するも否決される。そんなアディも、自閉的で、ニューロティピカルの人たちとは違う子供だった。アディや同じく自閉的な姉、キーディはクラス内で孤立し、いじめも受けていたが、アディはいじめが何か分からず、相手の言っていることは正しい、大人は全て正しいことを言っていると思い込み、自分を覆い隠して生きていた。

    そんなある日、アディの親友のジェンナをアディから奪ったエミリーが、アディの大切にしていた類語辞典をビリビリに破り、「知恵おくれ」と書いた紙を挟んだ。その理由は、エミリーが本を読むことが苦手で、絵本をクレオに注文していたところを、読書好きなアディに見られてしまったこと。類語辞典を見たアディは頭が真っ白になり、エミリーに飛びかかる。

    ネタバレが行き過ぎたので、ここまで。
    読むのが苦痛のはずなのに、読む手は止まらなかった。アディもキーディもニナも、それぞれ苦しみを抱えて生きている。ニューロティピカルの人と違うのは、かっこいいのかは分からないけれど絶対に恥ずべきことじゃない。マーフィ先生はなんであんなになってしまったのだろう。

    ニナが最後、アディとハグしていたのが嬉しかった。キーディとアディが仲良しだったから、入りにくかったのかもしれない。あのニナがマーフィ先生からアディを庇って叫んでくれたことに感動した。最後はとてもいい終わりだったけれど、現実世界ではどうなのだろうか。

  • 「魔女狩り」
    その言葉を知っているだろうか?
    昔、実際に起こった理不尽な悲しい
    事件とでも言うべきだろうか。

    昔、発達障害などの理由で「人と違う」と
    言われ、魔女と疑われ、処刑された人がいた。

    この本は、そんな魔女狩りについて触れながら
    私たちは今後このような過ちを犯さないために
    どうすればいいのかを小学高学年くらいから
    考えさせられる見事な作品だ。



    昔だったら魔女になっていたかもしれない、
    そんな「自閉的」な主人公、アディは
    魔女狩りが自分の住む街で行われていた
    ことを知り、魔女の慰霊碑を作ろうと試みる。
    優しい姉の(こちらも自閉的)キーディ、そして
    キーディと双子のニナと共に
    小学生の女の子が奮発する物語。



    魔女狩りという言葉は前から知っていたが、
    詳しくは分かっていなくて、
    まず「魔女狩り」の非道さに驚いた。
    こんな本も読書感想文課題図書に選ばれるのか…

  • 2023年読書感想文課題図書·高学年
    主人公アディは自閉的な症状を持つ十一歳の女の子。スコットランドのエジンバラにあるジェニパーという小さな村に住んでいる。姉は双子で一人は大学生、一人は動画投稿者。大学生の姉は自閉症状あり、お互いに何が生きづらいのか分かり合っている。自閉の目線から、具体的にどこが刺激的でどこが共感力強くなって、どこが夢中になってしまうのか分かり易く語られる。
    話としてはアディが昔、魔女といわれ迫害され殺されたたくさんの人に共感して慰霊碑を建てようとする展開に付随して理解のない担任やクラスメートが事件を起こす程度なので、そこは面白みに欠けるのだが、凄く特徴を持った脳というものが理解できる話だった。最近の有名人ではグレタさんや、テンプルグランディンが似た症例なのかと思う。
    身の回りに自閉症の人がいる人や、そういう人を理解したい人にオススメの本です。小学生高学年から。

  • 自閉について、がとてもわかりやすく学べます
    どんなことを感じ、どんなことが苦手で、どのように考えているのか
    本当にわかりやすいです
    同時に、偏見や差別についても学べ、考えさせられます

    自閉について学びたい、知りたい、もしくは知って欲しいと思ったときにこの本はとてもいいと思います
    児童書であり、物語になっているので入り込みやすい
    海外文学ですが、翻訳が苦手でもこの本なら読みやすいです

  • 途中つらくて少し読むのを止めたくらい、気持ちを持っていかれる物語だった。
    この本が、このような子どもたち、大人たちの声が、社会に、定型発達な人々に届いて欲しい。

  • 自分が住んでいる町に魔女が沈められた湖があると知った自閉的な傾向のあるアディ、自分もその時代だったら魔女と呼ばれていたかもしれないと思い、魔女へ想いを馳せる。
    P111
    「よくこう思う。ほかの人たちにだけ、生きていく上でのコツや秘訣、うまく立ち回る方法が書かれた、ぶあつい説明書が送られているんじゃないかって。」
    こういうふうに感じている子どもたちはたくさんいるのかも、と思う。

  • 自閉の傾向があるアディ。親友のジェンナは意地悪なエミリーと仲良くするようになり、担任のマーフィ先生はアディを目の敵にしている。アディは授業で魔女について勉強し、魔女について興味を持つ。人と違うことで魔女だとされた、過去の女性たちに、自分を重ねて……。

    いろいろと目を開かされる物語だった。自閉症という言い方に気を付けなければいけないとか。作中で定型発達という言葉が出てくるけれど、そもそも定型なんてものがあるのだろうか。例えば、作中でアディを嫌うエミリーは、アディを自閉=「知恵おくれ」という。でも、実際エミリーは本を読むのが人より苦手なのだ。一体何が定型だと言えるだろうか。
    ロンドンからやってきた転校生のオードリーが寛容に思えるのは、それだけ多様性に触れてきたからだろうか。
    エミリーのように、マーフィ先生のように意地悪なことをしなかったとしても、正しくないことに対してなにも言えない、自分の大切な人を守ろうとしないことがよくないと、ジェンナに対してはっきりアディが思いを口にしたところが、一番よかったと思ったし、読者の子どもたちに響いてほしいなと思った。

  • 2023年全国青少年読書感想文コンクール小学校高学年の部課題図書

    昔あった魔女狩りを知り、自分が自閉症で他の子とは違い、受け入れられない事が多く苦労している主人公が感じる世界と、知識を得て成長しながら思うことが綴られていく。姉妹の共感や周りの支えを受け、自分がこの時代にいたら、殺されていたかもしれないことから、慰霊碑を建立する事を目指す。様々な児童に関わる立場でありながら理解の低い大人には腹立つが、そういった人が昔も今もいることを考えさせ、物語の中の善悪がクッキリとしてくる。
    物語の中の差別に共感も多いのではないかと思う。

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著者プロフィール

児童文学作家

「2022年 『魔女だったかもしれないわたし』 で使われていた紹介文から引用しています。」

櫛田理絵の作品

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