- Amazon.co.jp ・本 (427ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575234114
感想・レビュー・書評
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7/3 読了。
井ノ頭恩寵公園の管理人分室にひとりきりで勤務し、日報に「異常なし」と書くことだけが実質の仕事内容である50歳のインポテンツの男。かつては小説家志望だったが、今は分室に私物のコンポを持ち込み、チャイコフスキーを聴いて日々をやり過ごしている。公園では棄てられた兎に餌付けする老人たちと、散歩する犬の飼い主とのあいだで諍いが絶えない。ある日、8年間使われることのなかった分室のロッカーを開けると、そこから少年の屍体が現れた。男はその屍体を業務用冷蔵庫の中に寝かせ、共に暮らしはじめる。
ホラー的要素はない(と言っていいと思う)のに、読んでいるあいだ、それこそ作中の冷蔵庫から漏れ出る冷気に触れたかのように、背中がスーッと寒くなる。現世とあの世の狭間にある数ミリ単位のレイヤーに入り込んでしまったような、寒々しい酩酊感。50代独身インポ幻覚小説、って書くとその通りなんだけど迫力あるなぁ(笑)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「おまえいったい、一人何役なんだ!」
「上擦ったG」
おもしろかったー!日本語の魅力、読書の面白さを感じた。こんな本あったんだなあ…図書館で借りたけどちゃんと買って手許に置いておきたい。でも単行本も文庫も絶版になってる…
内容としてはポルノ小説と分類されても仕方ない程度には性描写がちりばめられているけれど、それをもってしてただのゲテモノとしてしまうにはものすごく勿体ない小説だと思う。『ペニス』というタイトルからして敬遠してしまう人もいそう。そんなの勿体ない!
・ハルサイは会話するときのBGMに向いてないと思う。
・チャイコフスキーピアノ協奏曲第一番が耳から離れない。 -
先日読んだアンソロジー本に載っていた短編を除けば初津原本。彼方此方へと文章が飛ぶのはまるで主人公の頭の中身の思考回路を覗き込んでいる様。只、期待が大きすぎたのか、正直読後感は残念。これは私見だが、小説に解離性同一性障害の人物が登場するのは好きではない。
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<b>少しうわずったGGGG</b><BR>
やばい。この表現がかなり気に入った。読んでてダイレクトに耳に響いた。
<br>ストーリーそのものは抑揚に欠ける気がするけど、文体を眺めるだけでも楽しい。小説って色んな表現の仕方があるんだなぁ。ほんとに。 -
幻想色が大変強いミステリ小説。主人公の現実と追憶と夢想と幻想が境目なく入り乱れて、眩惑させられるところがものすご〜く好み。唐突に語られるエロティックな回想の数々に戸惑い驚きつつも、さりげなく伏線となって終焉に向って収斂していくのが鳥肌ものでした。ただ、最後の2ページ半で魔法が解けてしまったかのよう。ちょっと興醒めに感じちゃいました。私はね。 でも『蘆屋家の崩壊』とも『赤い竪琴』とも『綺譚集』ともまた違う津原泰水の才能を垣間見れて、とても興味深かったです。スゴイとは思っていたけど、こんなにスゴイ人だったとは!スゴすぎ!未読の作品がある僥倖に感謝しつつ、他の著作も読んじゃうつもり。
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「ぴあ」に載っていた書評が忘れられない。
振り落とされるなよ