こちらの事情

著者 :
  • 双葉社
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本棚登録 : 126
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575235777

作品紹介・あらすじ

『荷物の順番』-「老人介護施設に預けることにしたから、母を送り届けてほしい」。兄に頼まれ、正文は辛い役目を任される。割り切れず、思い悩む正文に、母は諭すように言う。「正文、人の手はふたつしかないからね。もっと大事なものができれば、先に持ってたものは手放さなきゃならない。世の中は順番なんだから」それでいいんだよと。当日、施設の車寄せに着き、いよいよ万感胸に迫った正文は-自分の中の「いい人」にきっと出会える作品集。

感想・レビュー・書評

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  • 泣きました。

    家族愛がテーマの短編集。

    親の老いや、育ててもらった有り難みを感じるこの頃、また夫婦とは?をたまに考えるこの頃、何とも言えない切なさ、情けなさ、感謝の気持ちに包まれます。

  • 荒んだ私の心には良い話過ぎてのっかりそびれてしまった感…で申し訳ないきもち。

  • 様々な家庭の人間模様を描いた短編集。
    短編なので読みやすいのだけど、それぞれシンプルながらに人間模様がうまく描かれていて、かつ、主人公が自分とちょっと年の近い話が多いのもあり、感情移入しやすかったかな。
    特に妻が入院して入院準備にてこずる夫の話は、自分もそうなりそうなので気を付けないとなあとか。老いた母親を施設に入れる息子の話は、近い将来自分にも降りかかる話だよなぁ、とか。ほかにも割とありがちな設定・話ではあるけど、だからこそ面白く感じたのかも。

  • 「晴天の万国旗」が面白かった。

  • 最後に希望の光が見えるところが後味良い

  • 8編の短編からなる本で、読みやすかった。
    すべてちょっと問題をかかえた家族の話で、最後はほっこりする終わり方でよかった。
    自分の両親のことを思い出して、ちょっと涙が出そうになったりもした。

  • どの話にも、様々な家族が登場して、自分の家族への向き合い方について、考えさせられました。

    特に、「葡萄の木」という作品が心に残りました。

    枝、蔓、房の順番を経て、葡萄は実る。

    何かが足りなくてはダメ。それは、家族も同じなのだろう。

    家族として出会ったのだから、雨が降った時、風が吹いた時、一方に任せるのではなくて、お互いに支え合える付き合い方をしたいと思った小説でした。

  • 2014.5.30 読了

    これは、少し 重松清さんっぽかったかな?

    私と同世代の 日々を取り巻く
    日常を描く。。。みたいな。

    短編集ですが、
    どの主人公も 少しの問題を抱えていて、
    どう解決、もしくは どう折り合いを
    つけるか。。。

    わかる部分もあったり。


    スッと読める本でした。

  • 短編集。何度も涙しました。
    優しくて、暖かくて、ふんわりとじんわりと胸に染み入る物語。

    主人公たちの設定、そして心の動きとそれに伴う彼らの言動の描写が本当に素晴らしいです。

    作者の森浩美さん、本業は作詞家。
    昔SMAPのファンだったこともあり、お名前は知っていました。
    SHAKEやダイナマイトは森さん作詞のヒット曲です。
    小説を出していたなんてびっくり。しかも秀逸でさらにびっくり。


    登場する主人公は40代~50代。年老いていく親、成長する子供たちとの摩擦、夫婦間の溝、愛する人との別れ、仕事上の責任、経済的な不安。
    きっと今の私には想像もつかないような、どんよりと重い問題が降り積もったりする。

    『家族』の在り方。
    その絆、繋がり、それぞれのカタチがあって、目に見えない気持ちがそこにある。
    そんな当たり前のことが、なんだかすごく、愛おしいです。


    誰もが大事なものを抱きしめている。
    「いくら大事なものを持ってても、もっと大事なものができれば、先に持ってたものは手放さなきゃならない。荷物を持つにも順番があるんだ。欲張ったり無理をすれば、それは大事な荷物じゃなく”お荷物”になるだけ。」

    人は、多くのものを抱え込めない、と。
    だけど、だからこそ、大事なものはしっかりと見据えていたい。
    大事に持ってていたい。
    誰かを想うっていうのは、何かを手放してでも大切に持ち続けるってこと。そして、そう想える相手がいるっていうのは、すごくしあわせなこと。
    家族にしろ、親友にしろ、恋人にしろ。
    守りたい、幸せにしたい、そう想える誰かがいるだけで、ひとはしっかり自分を持つことができるはず。

    日常を痛いくらいにしっかり見据えて書かれた作品。厳しい現実がありありと突きつけられたりもする。
    でも、どの短編も、最後には一筋の光が見える。
    問題は解決しなくても、大事な誰かがいる主人公は、きっと救いの手を差し伸べられているんだと思います。

    そしてそれは、私たちだって、同じ。
    一筋の光を信じて、素敵な明日を願って、今日を一生懸命生きてる。
    それでいいと、私は思います。


    「こちらの事情を口にするとき
    それは身勝手な言い分になってしまうのかもしれない
    でも察してほしいときがある」

  • 家族をテーマに主人公を40代から50代に据え、織りなす8編の短編。私とビンゴ世代の物語でした。

     物語と似たような経験をしたり、しそうであったり、すぐ側にこんなドラマがきっとあるだろうなと思う程に身近な日常が題材。知らず知らずのうちに溜め息をついたり、頷いていたりして読みました。

    目の前のそれぞれが抱える問題がすっきりと解決する訳でも、解決した訳でもないのですが、もう半歩踏み出してみようかなという気持ちが湧いてくる作品でした。

     作者は「どの物語にも最後に“光”を残した。“救い”と言い換えてもいい。」という。さらに、「僕は,甘いと言われようとも、やはり救いはあってほしいと願う。救いがあれば、決定的に堕ちる前に踏み止まれると信じている。/様々な事情を抱え生きているのはお互い様だ。ならば共存する上で必要なのは、お互いの事情を察する気持ちではないか。これは、ことなかれ主義とは全く違う。/受け止め、理解しようと努力し、その結果、どうにもならない、しかたないと結論を下す。そこまでやって“目を見ろ、何も言うな”と、心が通じ合うものではないか。それこそが“救い”なのだと思う。たとえ、どんなに過酷な選択であったとしても.....。」と、あとがきを結ぶ。

     精一杯にお互いの事情を察する努力の果てにみる“光”=“救い”、私も逃げずに努力してみよう“光”が見えるまで...。

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著者プロフィール

作詞家、小説家。放送作家を経て1983年より作詞家を始める。作家・脚本家としても活動。

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