さらさら流る

著者 :
  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575240528

感想・レビュー・書評

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  • 都内を巡る暗渠とその
    上を覆う緑道。

    私の人生はどちらかと
    いうと、

    陽のあたる緑道よりも
    暗渠を辿ってたように
    感じます。

    幼い頃から周囲に気を
    遣い、

    欲しいものに、すっと
    手を伸ばせる素直な人
    を眩しく感じてました。

    傷つくことをやたらと
    恐れて自分の気持ちに
    蓋をして、

    まわりの顔色ばかりを
    うかがって・・・。

    でも、暗渠も辛抱強く
    辿っていけば、

    いつか明るい大海原に
    辿り着く。

    自分の辿る道が誰かに
    与えられた道なのか、

    はたまた自分の意志で
    選びとった道なのか、

    もはやわかりませんが、

    暗がりのなか途方ない
    時間と距離を、

    なんだかんだここまで
    歩んできた自分を少し
    は信頼しようかなと。

    私が辿るこの道の先に
    光溢れる世界が開ける
    ことを信じて。

  • ごく普通の大学生、菫(すみれ)が入ったサークルの飲み会で、酔って介抱してあげた光晴君。家まで歩いて帰るくだりがなかなかユニーク、暗渠(あんきょ)をめぐって歩いて送ると言う彼の誘い何が起こるのかワクワクしながら読み始めました。そしてたった一度彼に撮られたヌード写真をネット上に流失、偶然見つける。そこからの菫の行動が興味津々、いかにして立ち直るのか?そして光春君は?「自分は地下を流れる暗渠で彼女は陽の当たる緑道だ」これがこのお話のしめくくり、ちょっと変わった今までにめぐりあえたことのない恋愛小説でした。

  • 物語の始まりは、とても爽やかでした。
    菫と光晴が、大学の飲み会の帰りに、東京の地下を今も流れる暗渠をたどりながら歩くシーンが、とても心地良かった。
    ところが、そこから先は…

    温かな家族と友人に囲まれ、恵まれた環境で生きてきた菫と、
    生い立ちから、屈折したものを抱えている光晴。

    光晴に撮らせてしまった自分の裸の写真が、ネットに流出していたことを知り、
    世間知らずだった自分の甘さが招いたことと、菫が自身を責める場面は胸が痛んだ。

    菫がつらい気持ちを隠して、なるべくいつもの自分でいようと努力している姿を、
    なぜそんな写真を撮らせたのかと批判する職場の先輩(女性)にも腹が立った。
    こういう場合、被害者にも非があるように言われることも多いけど、これは違うと思う。
    菫は強引な光晴に押し切られた形だったし、
    すぐに消してと頼んだのに、消したと嘘をついた光晴はひどいと思う。

    不注意からとはいえ、写真が流出したのは光晴の責任なのに、
    今一つ罪の意識が薄いというか…、
    それは彼の境遇のせいではないように思えた。
    それと、男女の性差もあるかもしれない。

    両親と、親友の百合、菫の周りは温かい人ばかり。
    何より弟・幹夫の飄々とした明るさに気が休まる。
    彼の作った文房具の歌「モノグラムワン消しゴムのうた」どんな歌詞なんだろう。

    人の本質は非常時に現れるというけれど、
    突然の嵐になぎ倒されそうになりながらも、立ち向かった菫の芯の強さを見習いたい。

  • この本を読んで暗渠(あんきょ)って言葉を知った。
    見えないように地下を流れ上には蓋がされている。なんか人生みたい。
    そう、周りに見えないようにしながら生きていきたいこともある。

    主人公がとある事でリベンジポルノにあってしまうのだが、こんな事がなさそうと思わず自分に置き替えてみてほしい。いつでもどんな理由でもあり得ること。
    リベンジポルノはこの本の中では女性ですが、世の中にはきっと男性にもありえるだろう。

    流すヤツと流されてしまった本人。流されてしまった方にも責任はあるかもしれないが、流すヤツは許せない。


    ※本の概要※
    あの人の中には、淀んだ流れがあった――。28歳の井出菫は、かつて恋人に撮影を許した裸の写真が、
    ネットにアップされていることを偶然発見する。恋人の名は光晴といった。
    光晴はおどけたりして仲間内では明るく振る舞うものの、どこかそれに無理を感じさせる、
    ミステリアスな危うさを持っていた。しかし、なぜ6年も経って、この写真が出回るのか。
    菫は友人の協力も借りて調べながら、光晴との付き合いを思い起こす。
    飲み会の帰りに渋谷から暗渠をたどって帰った夜が初めて意識した時だったな……。
    菫の懊悩と不安を追いかけながら、魂の再生を問う感動長編。

  • せっかく感想を書こうと思ったのに、二つ隣の席に座ったおとこが猛烈に汗臭い!

    まぁ、よい。関係ない。移動しよう。これ書いてから。
    気軽に手に取った一冊だが、なかなか読み進められなかった。重い。重いよ。出だしは普通な恋愛が絡む若い2人の爽やかな生活が描かれる小説だと確信していた。違う。違うんだよ。これは世の男性にキチンと読んで欲しい大切な相手への思いやりについて考えて欲しいヒントがたくさんある本だ。出会えて良かった。

  • リベンジポルノに立ち向かい強く立ち直って行くお話。
    天真爛漫な女の子が恐怖の中 強さと弱さを併せ持ち、素敵な家族 素敵な友人に支えられて自分を取り戻していく。
    東京の地下に巡る水路の話も絡めているのだけれど、最初はただの話題の様に見せていたけれど、元カレや人の心の推移を表していたのだろうと最後に感じられた。

  • ある日菫は、元彼に撮られた自分の裸の写真がネット上で拡散されていることに気づく。ネット上で自分の裸の特長を揶揄するコメント、社会の「写真を撮らせる女が悪い」という風潮に傷つくが、友人の百合と共に立ち向かう。

    柚木さんの本を読んで、いろんな人の感想を見ると「嫌な気持ちになった」とか「読み返したくはならない」といった感想が必ず一つは見つかるのはなぜなんだろう。
    多分、描かれる女性やそれを取り巻く世界にリアリティがあるからだと思う。
    ①裸を撮らせる女が悪いという世間
    ②女の羞恥や恐怖が最高のスパイスになるという男の欲望
    この二つが私は怖いと思いました。
    この小説にはこれらのことに対して、「それは違うんじゃないか」と反応する登場人物が出てきます。

    ☆元彼の光晴が働く塾の生徒の言葉
    p.224 「みんな、お酒の席で、笑い話にしようとするじゃん。女の人にひどいことしたとか、裏切ったとか。あんなの、笑えないよ。全然おかしくないよ」

    ⇒これはかなり共感できました。私自身、ネタにされる側だったのでお酒の席の笑い話にされていると知った時は、菫のように「身体がバラバラ」になった感覚に陥りました。自分の身体がじぶんのものでないような。私はこんなにも苦しんでいるのにそれを堂々と話す男が信じられなかった。


    ☆友人 百合の言葉
    p.82「あんまり言いたくないけど、日本はそういう風潮を増長させるところがあるよね。嫌がっている女の子を性的に貶めるのが堪らないっていうやつ。そういうのにぐっときちゃうのは男だから仕方ないって、開き直ってあい空気もあるよね。」

    ⇒ここで漫画やアニメの例が出されたのには驚きました。小さい頃にみたアニメでは無意味にヒロインの服が破れたり脱がされたりするが、男の子は許されて当然。という展開が多かったという例。
    確かになぁと思いました。欧米の子供向けアニメでは見ない、日本特有のストーリー。こういうことが日本人の思想に根付いているからレイプとか写真の流出があっても「女が悪い」という意見が出てきてしまうのではないでしょうか。


    だいぶ前にみたニュースですが、女子大学生が飲み会の後に男子学生の家へと向かい、そこで複数の男子学生に性的暴行を加えられたというもの。生々しい事件でよく覚えています。このニュースに関してのツイートがテレビの下の方に流れてたのかな?その辺はあんまり覚えてないけど、誰かが「女の子のほうも遊んでたから自業自得」とか「不用心だ」とかいう意見を発信していたのに、心を痛めたのを覚えています。悪さをした男達のほうが絶対に悪いのに。

    菫もこういう社会の目と戦っているんだと思って、この小説を最後まで読みました。そしたら友人の百合だったり、家族のみんなが本当に強く支えて最後まで一緒に戦ってくれていた。感動しました。
    百合は、菫が誰にも話せず一人で抱え込んでいる状態の時、その心の変化を見逃さず「ちゃんと話してよ」とまっすぐ問題と向き合っています。
    なかなかこんな友達いないです。本当にすごい。

    それと比べて写真を流出させた元彼は自分のことしか考えず、テレビか新聞かで読んだ出来事のように他人事として受け止めています。ほんとにクズ、だけど本当にこういう人はいる。この男に執着していた菫から、自分の在り方を認めることのできる菫に成長するまで、目が離せませんでした。

    他人ごとじゃないなぁというストーリーだったので、かなり私の心に残った作品です。

  • 東京の水脈に関する話が象徴的に使われており、引き込まれた。タイトルも含め冒頭だけだと爽やかな印象だが、内容は極めてハードだ。

    元恋人が撮った自分の写真を、偶然ネット上で発見する主人公菫。物語は、二人の出会いや家族との会話など過去の情景と、現在の二人の状況を並べながら展開する。どの人物にも深い背景が描かれ、特に心理描写が細かい。元恋人である光晴が菫に対して抱いていた羨望や、菫から見た彼の不安定さ、菫の大親友百合の、正義感に直結した行動力、そして菫も含めた家族の信頼関係…。緊密な人間関係や背景は、いずれも菫が再生するための要素である。

    光晴の行動は絶対に許されるものではない。そんな状況の彼にも、著者は再生の道筋を与えている。冒頭に描かれた水脈もその過程に生きてくると思えた。未来を絶望視しない展開に少しだけほっとした。

  • こういう心配を今の若い子たちはしなきゃならないのだな、と。や、中年の人たちも同じかもしれないけど。
    柚木さんがとがってない女性を描いた!とびっくりしながら読んでいたのだけど、リベンジポルノの被害者となった主人公菫が、その最初のふんわりとした優しいイメージに反して、自分の力でしっかりと向き合っていく姿に、やはり柚木小説の主人公だな、とほっとしたりして。
    菫から見た光晴と、光晴から見た菫、その微妙な差が少しずつ広がっていくのは悲しいけど致し方ない。恋愛なんてそんなもんだろうし。でも別れ際と別れた後の自分の気持ちをきちんと処理する力をつけなきゃね、男も女も。
    それよりなによりプレイベートであるべき恋人同士のヒミツの写真を悪気なく拡散していく第三者たちの行動が恐ろしい。

  • 途中読むことがしんどくなってしまった。

    写真を撮りたいと言われたことは私もある。
    だからこそ他人事とは思えなかった。
    好きな人に言われれば危険なことと分かっていても、一瞬気持ちが揺らぎそうになる。

    素人の裸の写真が娯楽として消費される感覚が気持ち悪かった。
    裏側の背景やその人の気持ちなんて関係なく、その他大勢のうちの一つかもしれない。
    撮られた本人の気持ちなんて分からないのだ。

    私も菫の強さと家族の温かさ、百合の存在が羨ましい。

    最後は力強く進み始める菫の様子が、青い流れのように感じた。

  • 昔付き合っていた彼氏に裸の写真を撮られ、
    さらにそれが、ネットにアップされていた。
    過去と現在を行ったり来たりしながら、話が進んでいく。

    菫は光晴と大学のサークルで仲良くなる。
    酔った光晴を介抱したお礼?に、菫の家まで
    暗渠を辿りながら送っていく。
    でも、本当は光晴が菫に引かれてて、
    少しでも長く一緒にいたかったから誘ったみたい。
    大学生の頃の話は、なんだかほのぼのするー。

    写真がアップされてからは、菫は仕事でも
    人の目が気になってしょうがない。
    そりゃそうだと思う!!
    そして、撮らせるような方も悪いって思うかもしれないけど
    やっぱり撮る方(ネットにアップする)が悪い!!
    酒癖の悪い光晴くんにイライラしちゃったー笑

  • 読み進めるのが辛いほど、この男のことが憎く、嫌いだった………元カノの母親に甘えたい衝動があるところとか、おぞましかった………育った環境がアレだったらなんでもありなわけあるかい…………なんとか読了。

  • よく、こんなにも両側を描けるなあ。すごい。心理的安全性の高い家庭で育つ「強くて」「持てる者」の側と、家庭での愛情を感じることができず拗らせた「弱い」「持たざる者」の側の両方。
    申し訳なさを感じる「恵まれた」菫と、自分と相手の差は環境で自分はあんなに輝けない、と感じる「持たざる者」光晴。
    どちらも共感でき過ぎて、はらはらした。まさに百合!
    だからこそ夏の開けた日差しと濃い緑の中で、清濁併せ持って自分と向き合って自分を大切にして生きていくのが正解なのかも、と気づいた光晴のラスト、他人の目が恐ろしいながらも自分の強さを信じることができた菫、自分の目を信じられた百合に拍手喝采!ラストが真夏で、白い暑い日差しと濃い緑の記述がとても生きている。夏に読めてよかった!東京の地理が出てきて、よく行き来していたエリアが出てきて楽しかった。あと女の恥ずかしがる裸体写真を扱う人たちとその悪意の無さも具体的であるあるーと思う。無垢な子どもがその様子を見たら不気味でしかないと言うのも、改めて、変だよなと思わせる仕掛けになっている。全編を通して感情のプロセスが丁寧に書き込まれている。
    裸体を見せるな・撮らせるなということではなく、本当は嫌だと感じているのに相手に好かれたいからと差し出してしまうという選択が結果的に自分にダメージを与えるということ、でも万が一、多数の目に晒され消費されたとしてもあなたそのものは決して削られたりなくなったりするものではなく強く美しくあってよいもので、存在して良いものであり自分を信じて良いこと、家庭環境やそれに影響を受ける幼少期からの対人関係の距離感、さまざまな要因があれど、自分が自分を受け入れて清濁併せ持って歩く勇気を持つこと。人は天使でも悪魔でもなく、あらゆる混ざり合った感情があるものだということ。

  • 全体的に重い話ではあった。
    同じ女性として気をつけるべき事を暗に伝えられたような気もする。
    当事者にしかわからない気持ち、周りからの言葉。もしも自分の身近に菫と同じ立場に立った人がいたら。私はどのような言葉をかけるのだろう、かけるべきなのだろうかと考えさせられる。

    全体的に食事やマネキュアの色、川の様子家庭菜園など、とても綺麗に表現されていてとても素敵な印象だった。
    お酢のかかったご飯に対しての2人の対比が描かれていておもしろい。根本的に2人はわかりあえる2人ではなかったのである。

    ただ、抽象的な表現もあり、考えすぎてしまう私には個人的に読んでいて噛み砕きにくい部分もあったため3つで。

  •  リベンジポルノ被害にあった女性の懊悩と再生を描くヒューマンドラマ。
              ◇
     28歳の井出菫はコーヒーチェーンの広報部OLだ。多忙ながら充実した日々を送っていたが、ある日ネットで自分のヌード画像を見つけてしまう。それは、かつてつき合っていた恋人が撮影したはずのものだった。

          * * * * *

     「暗渠」が象徴的。
     道の下に隠されている川の流れ。笑顔の下に隠されている本心。どちらも見えない。
     『春の小川』のように「さらさら」流れているものと思ってしまいがちです。どれほど澱んで濁っているかわからないのに……。

     人を見る目を養いたい。そうでなければ流れの清濁を見極めることはできない。この作品を読んで、もっとも強く感じたことでした。

     好みと相性。受容と包容。信頼と依存。

     人が人と関わって生きていくかぎり、それらはついて回ります。どのように切り替え、折り合いをつけるのか。いろいろ考えさせられました。

     直木賞候補となった一連の柚木作品とは傾向を異にする味わい深い作品だったと思います。

  • 阿佐ヶ谷のコンコ堂で買いました。
    表紙の絵がたまらなくかわいいし、柚木麻子さんはずっと気になっていたけどまだ読んだことがなかったから。
    表紙の絵の印象を、ぐらりと裏切るストーリーでした。おもしろかったです。

    あえて穿った感想を言うならば、登場人物は皆大変嫌な思いをした。そして、それを乗り越えた(乗り越えつつある)。素晴らしい。

    ただ、どれも20代の話なんだよな。と思ってしまいました。
    当方現在37歳。
    私はこの物語の登場人物ほどの苦労はしていないけど、彼らよりもう10年近く長く生きているので、30代というかアラフォーを襲う苦難はもう少し埃っぽいものだと思うんです。

    写真を撮らせたからこうなったとか、生まれ育った家庭のせいとか、そんな原因と結果が明確な線で結ばれるということが、年を重ねれば重ねるほど少なくなってくるのだと思います。年を重ねると、物事がどうしても複合的になるというか。
    だから何だと言われれば、それまでの話だけど。

  • この前に読んだ推理小説で疲れていたので、ものすごく読みたい小説の小説だった。
    人間ってなんて強いんだろう。見えない川、登場人物たちの暗部、隠れているのか、隠しているのか。誤解されながら生きていく、いい風に理解しながら見てしまう。皆んなご都合主義の中で逞しく生きている。

  • あの人の中には、淀んだ流れがあった――。28歳の井出菫は、かつて恋人に撮影を許した裸の写真が、ネットにアップされていることを偶然発見する。恋人の名は光晴といった。光晴はおどけたりして仲間内では明るく振る舞うものの、どこかそれに無理を感じさせる、ミステリアスな危うさを持っていた。しかし、なぜ6年も経って、この写真が出回るのか。菫は友人の協力も借りて調べながら、光晴との付き合いを思い起こす。
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    リベンジポルノという言葉を初めて知ったけど、柚木麻子作品はもっと「くせがすごい」人々が登場すると期待していたが、あんまりそんなこともなかったような。感動の長編ってことはなかったけど、ネットに顔写真でも知らない所でアップされていたら驚くのに、まして裸だと・・・菫がどう克服してゆくかが気になって読了。

  • 明るい太陽の下、
    愛情いっぱいに育ってきたような女性と
    母に愛されず屈折した子供時代を送ってきた男性。
    恋人どうしだった二人が別れた後
    リベンジポルノが起きる。

    その仕打ちがどれだけ卑怯で残忍なことか、
    どれだけ女性の尊厳を踏みにじる行為か
    今まで気がつかずに過ごしてきたかもしれない。
    『写真を撮らせるなんて、愚かなことをするから・・・』くらいのことを言っていた自分が恥ずかしい。
    この本を読んだ人は、もう
    リベンジポルノ=他人事だと二度と思わないだろう。
    女性だけでなく男性にも読んで欲しい一冊でした。

  • 「本屋さんのダイアナ」を読み、柚木さんの紡ぐ物語に引き込まれ、「Butter」、「さらさら流る」を続けて読んだ。
    女性の生き方、生き辛さがテーマの根底にあるのかなと思う。
    どの物語も中心となる登場人物は、中高時代を一貫教育の女子校で過ごしており、そこで築いた価値観や人生観が、それ以降を過ごす大学や社会の価値観、こうあるべきと漠然と押し付けられる目線とズレていることへの気付きと戸惑いが描かれている。柚木さんも一貫女子校をご卒業なので、ご自身の経験を投影されている面もあるのではないかと思う。
    このさらさら流るも、初々しい幸せ初恋物語?と思わせる書き出しから、家庭環境やそれだけではないそもそもの人間性の違いから、2人は別れることになり、被害者と加害者という立場に大きく変わってしまう。
    菫のように、打ちひしがれても友情や家族に支えられて立ち向かう勇気を持てたらいいけれど、現実はそうはいかないのだろう。だからこそ、柚木さんはこの本を書かれたのだと思う。前二作も含め、#Me tooにも通じる内容で、フェミニズムの波を感じる。

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著者プロフィール

1981年生まれ。大学を卒業したあと、お菓子をつくる会社で働きながら、小説を書きはじめる。2008年に「フォーゲットミー、ノットブルー」でオール讀物新人賞を受賞してデビュー。以後、女性同士の友情や関係性をテーマにした作品を書きつづける。2015年『ナイルパーチの女子会』で山本周五郎賞と、高校生が選ぶ高校生直木賞を受賞。ほかの小説に、「ランチのアッコちゃん」シリーズ(双葉文庫)、『本屋さんのダイアナ』『BUTTER』(どちらも新潮文庫)、『らんたん』(小学館)など。エッセイに『とりあえずお湯わかせ』(NHK出版)など。本書がはじめての児童小説。

「2023年 『マリはすてきじゃない魔女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

柚木麻子の作品

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